18歳から25歳若者の幸福感が、過去と比べて急激に低下している?!SNSが悪影響を与える理由
現代の若者は、これまでにないほどの幸福感の低下を経験していることが最新の調査で明らかになった。
ソーシャルメディアの急速な普及が若者のメンタルヘルスに悪影響
米ダートマス大学の経済学教授デビッド・ブランチフラワー教授が提唱した「U字型幸福曲線」によれば、通常、人の幸福感は30歳前後でピークに達し、その後中年期にかけて低下し、70歳以降再び上昇するというパターンが見られていた。しかし、最近の調査では、このパターンが若者の間で大きく崩れ、18歳から25歳の若者が最も幸福度の低い層として浮き彫りになっている。特に18歳から25歳の若者の幸福感が過去と比べて急激に低下しており、その傾向は世界的に広がっている。さらに衝撃的なことに、この世代では特に女性において深刻なメンタルヘルスの問題が浮上しており、若い女性の約11%が「絶望的な状態」にあると報告されている。こうした変化は、ソーシャルメディアの急速な普及が一因である可能性が高いとブランチフラワー教授は指摘している。
自己比較を助長し、不安や抑うつ感を悪化させる
ソーシャルメディアの影響については多くの研究が行われており、若者に対する精神的な悪影響が特に注目されている。特に、ソーシャルメディアを頻繁に使用する若者は、不安感や抑うつ症状を経験する可能性が高いことが明らかになっている。2021年の統計によると、カナダの若者の36%が臨床的に問題のある抑うつ症状を示しており、23%が高いレベルの不安を感じていると報告されている。また、81.3%が1日2時間以上ソーシャルメディアを使用しており、この傾向はアメリカの若者にも当てはまる。
研究では、ソーシャルメディアが自己比較を助長し、それが不安や抑うつ感を悪化させると指摘されている。SNS上では、多くの人が自分の人生の「ハイライト」を共有し、困難や低調な時期についてはほとんど触れない。その結果、若者たちは完璧に見える他人の生活と自分を比較し、自己肯定感の低下や孤独感を強く感じるようになる。また、「他者と比べることで自分が不足していると感じる」という現象は、特に若者の精神的健康に深刻な影響を与える。
ソーシャルメディアの使用を減らすとメンタルヘルスが改善
ソーシャルメディアは、単なる比較にとどまらず、「代替理論」に関連している。長時間のスクリーンタイムは、睡眠、運動、友人との交流など、心身の健康を促進する活動に使う時間を奪い、若者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす。ある調査では、220名の不安や抑うつ症状を抱える若者を対象に、ソーシャルメディアの使用を1日1時間に制限した結果、参加者は不安感や抑うつ感が減少し、睡眠時間が増加した。このグループではFOMO(取り残されることへの恐怖)も減少し、より健康的な生活習慣を取り戻すことができた。この結果は、ソーシャルメディアの使用を減らすことがメンタルヘルスを改善する有効な手段であることを示唆している。さらに、SNSがもたらすFOMOは、友人たちが楽しんでいる様子を目にすることで孤立感を強めるが、SNS使用を減らしたグループでは最初の数日間にFOMOが増加したものの、その後減少し、社会的に充実した活動に取り組むようになった。これにより、SNSの制限が若者のメンタルヘルス改善につながる可能性が示されている。
ソーシャルメディアは、私たちの生活に便利さとつながりをもたらす一方で、特に若者のメンタルヘルスに深刻な影響を与える可能性がある。幸福感の低下が見られる現代の若者にとって、SNSの使用を見直し、健全な生活習慣を取り戻すことが、幸福感を再び高める鍵となるだろう。
AUTHOR
山口華恵
翻訳者・ライター。大学卒業後、製薬会社やPR代理店勤務を経て10年間海外(ベルギー・ドイツ・アメリカ)で暮らす。現在は翻訳(仏英日)、ライフスタイルや海外セレブリティに関する記事を執筆するなど、フリーランスとして活動。趣味はヨガとインテリア。
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