獄中200時間ヨガで受刑者を救う!米国刑務所が実践する新しい更生プログラムとは?

 獄中200時間ヨガで受刑者を救う!米国刑務所が実践する新しい更生プログラムとは?
SUSANA RAAB
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人生で最も苦しい試練の時を救ってくれたヨガ

 多くの受刑者が、不安や落ち込みとの終わりなき戦いを経験する。症状を緩和するために様々な投薬治療に頼る者たちもいるが、獄中での生活や愛する者たちに会えないことによるストレスがなくなることはない。「最初に刑期をつとめた時は、恐怖とストレスで湿疹ができたわ」と27歳のホイットニー・イングラムは言う。彼女は麻薬取引に関わった罪で2007年から2009年まで収監された。刑務所にいる間、不安から逃れたい一心でヨガクラスを受けたイングラムは、それがきっかけで人生が変わったと言う。「ジャン=ジャック・ガブリエル先生のクラスの終わりに、横たわったねじりのポーズをやったとき、涙があふれてきて止まらなくなったの。監房に戻るなり、私は同じ部屋の人にこう言ったわ。『これよ! 私がやるべきことはヨガなんだわ』って」。ガブリエルのクラスでヨガを練習するうちに、彼女は収監されて以来、初めて穏やかな気持ちを味わえるようになった。そして、ヨガがあれば、刑期を乗り切れると感じた。「私が助けを必要としていて、進むべき方向を求めていた時、ヨガが来てくれたのよ」。

現在イングラムは、4歳の娘と婚約者とともに、ウェストバージニア州のシェパーズタウンに住みながら、地元のヨガスタジオやプライベートレッスンでヨガを教えている。また、人生で最も苦しい試練の時に自分を救ってくれたヨガへの恩返しがしたくて、プリズン・ヨガ・プロジェクトにも関わっている。「ヨガのおかげで自分の魂とまた繋がることができたの。外に助言を求める代わりに、自分の内面を見つめるようになったわ」とイングラムは言う。


 イングラムが経験した心身の一体化を、他の受刑者たちも得られるように、メドウズは、アーサナの練習と同じぐらい、ヨガでの精神修行にたっぷりと時間をかけている。セッションの間、『バガヴァッド・ギーター』を読んで話し合うことで、ヨガ哲学の教えも伝えている。今日のクラスでは、受刑者たちは最も心に響く一節を読み上げて、それについて話すように言われた。最初にケリが読んだ。

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バッグに入れられた、ヨガティーチャートレーニングのための読本一式(Photo by SUSANA RAAB)

「〝他人のすべきことで成功するよりも、自分に与えられたことを成し遂げるべきである。自分のすべきことに従えば失うものはないが、他者のすべきことと比べれば恐れや不安が生まれる〞」。ここでケリは一息ついてから、話し始めた。「刑務所では、私たちは自分の道を貫くべきだし、他の人にもそれを許すべきだと思うの。他の人の道にならおうとすれば、自分自身が苦しむことになるわ」。


 このように、クラスの全員が一人ずつ一節を読み上げて、自分の考えを述べた。中には自分の家族のことや信仰など、個人的な話をする受刑者もいた。33歳のブリタニーは、次の一節を読んだ。「"人々は、優れた人の行いに従う。そのような人々がつくる基準に、さらに世界中の人々が従う"。この節が好きなのは、私の両親がよくこう言うからなの。『目標を持つ人々に囲まれているようにしなさい』って。本当にそのとおりだと思うわ」とブリタニーは言う。「だって、停滞する人間にはなりたくないもの。すごくやる気がわいてくるわ」。

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Text by JESSICA DOWNEY
Translated by Sachiko Matsunami
Yoga Journal日本版 2016/12/11月号掲載

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