【更年期セルフケア】40代からの“冬のお風呂革命”|温泉療法専門医・早坂先生に聞く、体が整う正しいお風呂の入り方
冬になると悪化しやすい「冷え」「眠れない」「なんとなく気分が落ちる」——。それは、更年期世代に多い“自律神経のゆらぎ”かもしれません。実は、そのモヤモヤをまとめて整えるシンプルなセルフケアが**「湯船に浸かること」**。温度やタイミングを少し工夫するだけで、睡眠の質、気分、めぐりが変わります。今回は温泉療法専門医・早坂信哉先生に、40代からの体に合う“正しいお風呂の入り方”を伺いました。今日からできる、冬の更年期ケアのスイッチ、入れてみませんか?
目次
- 冬の更年期は“冷え”と“ほてり”が同時に起こる
- 自律神経を整える、“正しいお風呂”の入り方
- 入浴前
- 入浴の基本
- 入浴後
- NG行動
- 冬の更年期、 “症状別” お風呂ケア
- 冷え・ほてり :ポイントは「温めて、巡りをつくる」
- 寝つきが悪い:“就寝 90分前”が、良質睡眠のゴールデンタイム
- イライラ:静かな “ひとり時間” が脳を鎮める
- 朝の落ち込み:朝が整うと、その1日は整いやすい
- 慢性的な痛み:温めて、筋肉と神経をゆるめて
- その他、“お風呂の力”
- 更年期の今、私が助けられていること
- ① 香りとお風呂で、呼吸をゆるめる
- ② お風呂 × ヨガで、今日の緊張をほどく
- ③ お風呂 × 食事で、副交感神経ONの土台をつくる
- まとめ
- お話を伺ったのは…早坂 信哉(はやさか・しんや)先生
冬の更年期は“冷え”と“ほてり”が同時に起こる

40代以降の女性はホルモン変化で心と体のゆらぎを感じやすくなります。特に冬は体温調節が乱れ、こんな不調を感じやすい季節です。
- 手足は冷えるのに、顔だけ急に熱くなる
- 寝つきが悪い/眠りが浅い
- イライラ・落ち込み・やる気が出ない
- 肩こり・なんとなくの痛み
背景にあるのは、自律神経の乱れ。放っておくと、不安感や疲れが積み重なり、前向きな気持ちが保ちにくくなります。
そんな冬の更年期をやわらげてくれるのが——お風呂です。
自律神経を整える、“正しいお風呂”の入り方

入浴研究の第一人者・早坂信哉先生 が教える効果的な方法はとてもシンプル。
「40℃前後のぬるめ湯に、全身浴で10分。それを安全に、毎日続けることが一番です」
シャワーだけでは、体温・血流の上がり方が足りず 睡眠や自律神経の改善は難しいそう。 また 42℃以上の熱いお湯は逆効果。交感神経(興奮モード)が高まり、眠りにくくなります。
ポイントは、ぬるめのお湯で副交感神経(リラックスモード)をONにすること。
入浴前
- 水分(麦茶など)をコップ 1〜2杯
- アルコール後の入浴は避ける
入浴の基本
- 温度:38 〜 40℃のぬるめ湯
- かけ湯:10回(シャワーでもOK)
- 肩までつかる“全身浴”
- 時間:10 〜 15分
- 軽いストレッチや“お風呂ヨガ”も◎
入浴後
- 体を冷やさない
- 水分補給を忘れずに(麦茶などをコップ 1〜2杯)
- アルコールは水分補給になりません
NG行動
- 熱湯 × 長風呂 → 不眠・自律神経過敏
- 就寝直前の入浴 → 入眠タイミングを逃す
- スマホ 持ち込み → 脳が覚醒モードに
- アルコール後の入浴 → 脱水リスク
冬の更年期、 “症状別” お風呂ケア

正しい入浴は、自律神経を整え、冷え・睡眠・メンタル不調・痛み・むくみなど、幅広い不調をやわらげます。
早坂先生はこう話します。
「入浴には、もっと“奥の力”があるんですよ」
今回は先生に、症状別の整え方を伺いました。
冷え・ほてり :ポイントは「温めて、巡りをつくる」
冬に起きる “手足は冷たいのに顔が熱い” あの感覚は、更年期特有のもの。
「更年期の冷えは“表面”ではなく“内側”の冷え。40℃のぬるめ湯にゆっくり浸かり、“血流を動かすこと”が大切です。」(早坂先生)
実際に、巡りがよくなると 冷えとほてりの差がゆるやかに落ち着く のを感じました。
*強い冷えには…
- 40℃で3分
- → 25〜30℃のやや冷たいシャワーを1分
- これを2回
- 最後は必ず “温” で終える
※キンキンの水風呂では逆効果。“少し冷たい” 程度でOK。血管の収縮で巡りが整います。
寝つきが悪い:“就寝 90分前”が、良質睡眠のゴールデンタイム
更年期は、寝つきの悪さ・途中覚醒が増える時期。
「睡眠の質を上げるには、“就寝1〜2時間前の入浴”が最適です。」(早坂先生)
ポイントは、入浴 → 深部体温がいったん上がる → 下がるタイミングで眠気がくる、という生理的メカニズム。
私は入浴時間を 22時に固定 してみたところ、自然に「あ、眠いかも」と感じる日が増えました。
イライラ:静かな “ひとり時間” が脳を鎮める
感情のコントロールが難しくなる更年期。冬の寒さが交感神経を刺激し、さらにイライラしやすい状態に。
「温熱・静けさ・香り。入浴は、脳と神経の緊張を鎮める要素が揃っています。」(早坂先生)
40℃、10分の入浴は 副交感神経を高める 基本のケア。自然由来の漢方系入浴剤もおすすめ。スマホを持ち込まず、“何もしない時間に身をゆだねる” のが、いちばんのご褒美です。
朝の落ち込み:朝が整うと、その1日は整いやすい
冬は日照不足の影響でメンタルが落ちやすく、「朝から動けない」状態が起きがち。
「気分がのらず動けない朝は、42℃で5分。活動モードのスイッチが入ります。」(早坂先生)
ただし夜はNG。夜は40℃で10分、リラックスモードへ。“時間帯でお湯の役割を変える” のがポイントです。
慢性的な痛み:温めて、筋肉と神経をゆるめて
更年期では、検査では異常がなくても「痛い」がよく起こります。
「多くは、血流低下と神経の過敏化。温めることで痛みの回路が落ち着きます。」(早坂先生)
湯船につかると浮力で余計な力が抜け、こわばりがゆるむ瞬間があります。痛みが“ゼロ”になるわけではなくても、対策があるだけで気持ちがラクになります。
その他、“お風呂の力”
- 汗・におい → 洗浄作用で 皮膚環境を整える
- むくみ → 肩まで浸かり、水圧で 全身マッサージ効果
- 運動不足 →湯中ストレッチは 陸の3〜4倍の刺激
- 疲労感 →温熱で血流UP、浮力で 筋肉も神経もゆるむ
更年期の今、私が助けられていること

──トップアスリート専属管理栄養士・そして更年期当事者としての【取材メモ】
取材を通して、自分の暮らしをあらためて振り返ったとき、「これ、実はすごく助けられているな」と感じた習慣がいくつかありました。
ここからは、専門家としての視点と、更年期を生きるひとりとしての実感をまぜながら、本文に書ききれなかった“私なりの整えメモ”を静かに共有したいと思います。
① 香りとお風呂で、呼吸をゆるめる
取材後にまず見直したのは“お湯の温度”。42℃から40℃に下げ、忙しい日でもシャワーで済ませず、できるだけ湯船につかること。それだけで、眠りの質が上がり、手足の冷えがスッと軽くなりました。
最近のお気に入りは、干したみかんの皮を“だしパック”に入れて湯船に浮かべること。湯気とともにやわらかな柑橘の香りが広がり、呼吸が自然と深くなっていきます。
「香りは脳にダイレクトに届く“最短のリラックススイッチ”。自分が落ち着ける香りを選んでください」(早坂先生)
柑橘の香り成分リモネンには、気分をやわらげ前向きに整える作用も知られています。冬至のゆず湯など、季節湯として受け継がれてきた知恵にも、あらためて深い意味を感じます。
② お風呂 × ヨガで、今日の緊張をほどく
「副交感神経を高めるヨガとの相性はとても良いです」(早坂先生)
湯船での軽いストレッチや、お風呂上がりのゆったりとしたヨガは、
日中にたまった緊張をやさしく手放す“今日を終える動作”になります。
③ お風呂 × 食事で、副交感神経ONの土台をつくる
食事をすると胃腸が自然に動き始め、それ自体が“副交感神経ON”のサインになります。
毎日のベースとして“副交感神経が働きやすい食べ方”を持っておくことが、体調の土台づくりにつながります。
これは、トップアスリートのコンディショニングでも、更年期ケアでも共通しています。
意識したい4つの習慣
- 温かい料理をプラスする
- よく噛む
- 発酵食品をとる
- 血糖値のアップダウンをゆるやかに保つ
これは「お風呂の前後に必ずこう食べてください」というメソッドではなく、お風呂と同じように、“日々の土台として見直しておきたい習慣”です。
まとめ
更年期は、これまで頑張ってきた体と、もう一度やさしく向き合う時間。 焦らず、比べず、「お風呂・ヨガ・食事」という小さなスイッチを、自分のペースで増やしていければ十分です。
最後に、先生の言葉を借りるなら——
「お風呂は、家にある“健康維持装置”。自分に合う方法を試しながら、毎日をうまく乗り越えてほしい」(早坂先生)
今日も私は、お風呂を“回復の時間”としてゆったり過ごし、 その延長線上にあるヨガと食事で、静かに自分を整えていこうと思います。
お話を伺ったのは…早坂 信哉(はやさか・しんや)先生

温泉療法専門医/東京都市大学教授。これまで7万人以上の入浴習慣を調査し、「入浴の医学的効果」を研究する第一人者。テレビ・新聞・雑誌など多数メディアで、“正しいお風呂習慣”を発信している。
最新著書
『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』
『医師が教える温泉の教科書 日帰りでも「湯治」はできる! 疲労回復の極意18』
『毎日のなんとなくダルいをほどく かんたんお風呂ヨガ』
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