「生理痛も更年期障害も我慢する時代じゃない」産婦人科医・高尾美穂先生が語る、働く女性の健康課題とこれからの社会
マツキヨココカラ&カンパニーが主催する「女性の健康と働きやすさを支える新たな取り組み」の一環として、産婦人科医・医学博士の高尾美穂先生が「就労女性の健康支援で、企業はどういう支援をしていくか」と題した講演を行った。女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道の副院長でもある高尾先生が、女性の健康課題と社会のあり方について語った内容をレポートする。
「健康経営」の時代に、女性の健康課題が見過ごされてきた現実
人口減少が進む日本では、シニアや外国人に加え、女性の労働力がますます不可欠になっている。今や7〜8割の女性が妊娠・出産後も仕事を続ける時代だ。そんな中、高尾先生は「健康経営」の視点から問題を提起した。
「従業員の健康課題を上司に伝えにくいと感じている女性がいる一方で、周囲は何をしたらいいかわからないと感じている。この大きな乖離を、少しずつ縮めていく必要がある」
さらに高尾先生は、現在の健康診断の検査項目が「これまでの日本の社会を築き上げてきた多くの男性の健康課題に目を向けて準備された」可能性を指摘。20〜40代の女性ではほとんど異常値が出ないコレステロール関連の項目が多数含まれる一方、女性特有の健康リスクへの対応が手薄であるという構造的な課題を浮き彫りにした。
女性のキャリアにある「落とし穴」
高尾先生は、男性と女性では病気を経験する年代やパターンが大きく異なると説明する。男性がキャリアを積む年代で重い病気を経験する割合は比較的少ない一方、女性は20代から月経困難症やPMS、30〜40代で乳がんや不妊治療、そして40代後半からは更年期障害と、キャリア形成期に健康課題が集中する。
「月経困難症は"病気"です。かつて生理は病気じゃないから我慢しましょうという時代がありましたが、今は本人が困っていれば、そこにはすでに病名がつくのだということを知っていただきたい」と高尾先生は力強く語った。
生理前の不調であるPMSについても、検査では異常が出にくいため本人すら自覚しにくいという厄介な特徴がある。しかし低用量ピルなどの治療で約3カ月で改善するケースも多く、「正しく知って、正しくアクセスすることが大切」だと強調した。
人には優しく誠心誠意を尽くし、自分には決して妥協しない。産婦人科医として「臨床の場にいること」を最優先に、関わるすべての仕事にプロとしての誇りを持って向き合い、「すべての女性によりよい未来を」を何よりも大切に、学びを深めメッセージを発信し続けている。
更年期は「個人の問題」ではなく「社会の課題」
講演で特に時間を割いて語られたのが、更年期の問題だ。閉経前後の約10年間(おおむね45〜55歳)にあたる更年期は、女性が管理職など責任ある立場に就く時期とちょうど重なる。
「更年期で調子が悪くて仕事を休みたいなと思った、その時点ですでに生活に支障が出ているんです」と高尾先生。不調を抱えたままキャリアを断念する女性も少なくなく、その経済損失は社会全体にとって大きいと訴えた。
一方で「更年期の対策方法は確立している」とも明言。ホルモン補充療法(HRT)のほか、乳がん経験者でも選択できるエクオール(大豆由来の成分)や漢方薬、さらにカウンセリングでも高い改善率が報告されている。にもかかわらず、強い症状を抱える女性でさえ婦人科を受診しているのはわずか35%。この受診率の低さこそが、ドラッグストアが果たせる役割の大きさを示していると高尾先生は語った。
「両立支援」は女性だけのものじゃない
講演の締めくくりとして、高尾先生は「両立支援」の概念を広げて捉え直すことを提案した。
妊娠・出産は女性にしか担えないが、子育て、介護、そして治療と仕事の両立は性別を問わない課題だ。不妊治療をしながら働きたい男性もいれば、通院しながら働き続けたい人もいる。
「これからの両立支援とは、働くことで他の何かを諦めないでいい、そんな社会なんじゃないかなと考えています」
女性の健康課題を「女性だけの問題」として閉じるのではなく、誰もが自分らしく働き続けられる社会の土台として捉える——高尾先生の言葉は、ドラッグストア業界の関係者のみならず、すべての働く人に向けられたメッセージだった。
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