ツムラが生理の辛さやPMSを“見える化”する理由|「我慢する」以外の選択肢を提示することの重要性
生理やPMSにまつわる不調は、人によって感じ方、つらさもさまざま。それでも「大したことじゃない」「言い出しにくい」と、つい我慢してしまうことはありませんか。ツムラが2021年から発信を続ける「#OneMoreChoice プロジェクト」は、そうした“隠れ我慢”に目を向け、生理やPMSといった女性特有の課題を“見える化”することで、我慢以外の選択肢を考えられる社会を目指してきました。
今回は、そのプロジェクトの中心にいるツムラの宮城英子さん、大山尚美さん、松井優子さんにインタビュー。前編では、「#OneMoreChoice プロジェクト」が生まれた背景や、このメッセージを届け続ける理由についてお話を聞きました。
我慢が当たり前になっていることに着目
――まずは、「#OneMoreChoice プロジェクト」を立ち上げた経緯から、改めて教えてください。
宮城さん:もともと私たちは女性の健康問題、特に生理関連の課題に関する広報活動を展開していました。そのなかで症状を抱えながら一人で悩んでいる人が多いという感覚があり、実際に「なんとなく不調に関する実態調査」を行ったところ、男性よりも女性の方が不調を抱えている割合がかなり高かったんですね。
それを受け、改めて女性1万人を対象に調査を実施。女性の約8割が、心身の不調を我慢していつも通りに仕事や家事をしていることが明らかになりました。この「心身の不調を我慢して、いつも通りに仕事や家事を行うこと」を“隠れ我慢”という言葉で定義したことから、「隠れ我慢をしない社会を目指す」活動が始まりました。
大山さん:プロジェクトの始動前には、社内でヒアリングも実施しました。営業だけでなく、研究やヘルスケア部門など、一般社員から役員まで「ツムラってどんな会社?」「今、世のなかに広まってもらいたいことは何か」「この会社に足りないものは?」といったことを聞いていったところ、「不調症状を必要に応じて漢方で治していきたい」という想いはもちろん、それを超えて「不調を我慢している世の中に対して何かしたい」という熱いものを皆さんそれぞれに持っていたんですね。
漢方は、一人ひとりにあう薬を処方するもの。それと同じように不調を感じたときに“我慢する”という一つの選択肢ではなく、その人に合った選択肢を自分で選べたり、それを受け止められる環境が当たり前になったりする社会になったらいいなと。そんな想いを込めて「#OneMoreChoice」という言葉が生まれました。
――ツムラがどうしてこういったプロジェクトを?と思う方も多そうですが、漢方薬の会社であると考えると腑に落ちるところがありますね。
宮城さん:そうですね。プロジェクトの根底には、漢方医学の考え方やツムラならではの想いが息づいています。弊社のパーパスである『一人ひとりの、生きるに、活きる。』に基づいたコミュニケーションであることも、このプロジェクトの大きな軸の一つです。
ツムラは、「中将湯」という婦人薬で創業した会社。明治時代の当時は女性が家庭の中心だったという背景があり、そこから約130年以上、家庭の中心の女性が健康であることが、社会の活力となり、心豊かな社会が創られるという思いで歩んできました。そういったものをベースにしながら、現代における課題を解決するための活動が「#OneMoreChoice プロジェクト」。その一方で、このプロジェクトは製品のプロモーションではないということも、大切にしています。
――社内での反響はいかがでしたか。
宮城さん:従業員の数としては男性のほうが多いのですが、漢方という事業柄、女性の不調や健康課題についてもともと社内に一定の理解がありました。そのため、このプロジェクトのコンセプトが理解されないことはほとんどなく、むしろ共感してくれる人のほうが多かったですね。
松井さん:私は、プロジェクトの立ち上げを見ていた側でした。別の部署にいたときに、このような取り組みが行われることを知り、参加したいと志望して異動してきました。「#OneMoreChoice プロジェクト」の広がりで、社内でも新たな考え方が浸透しているように感じています。
大山さん:「#OneMoreChoice プロジェクト」の一環として、生理休暇の名称を「Female ケア」に変更し、生理に伴う症状に加えて、女性ホルモンの影響によるさまざまな症状(更年期症状等)に使えるようしたり、希望する全社員が費用負担なしで婦人科検診を受けられるようにしたりと、社内ではさまざまな変化も生まれました。
女性社員からの「女性ばかり制度が優遇されるのは平等じゃない」という意見から、性別にかかわらず社員が、診断書のない不調でも「隠れ我慢」せずに働ける環境づくりとして、有休の少ない新入社員に、入社時に失効年休積立有給休暇を6日新たに付与したり、従来、診断書とともに申請が必要であった通院休暇は、 申請不要で年間12日まで取得可能(場合によっては診断書を求める場合あり)にしたり。性別問わず、さまざまな年代の社員と話すなかで試行錯誤しながら少しずつ形にしてきましたが、そういった取り組みについて他の企業の方から「どういうことをやってきたのか聞きたい」という声もここ数年で増えてきたように思います。
一人ひとり違うからこそ、選択肢は一つじゃない
――生理痛やPMSの辛さは、人それぞれ。だからこそ、周りに言い出せず一人で我慢を続けている人がいる……という点から、2022年には「違いを知ることからはじめよう。#わたしの生理のかたち」というメッセージを発信。生理やPMSによる目に見えない不調の可視化を、新聞や交通広告、Webサイトなどで展開し、話題となりました。
宮城さん:2020年ごろから生理に関する話題が多く出てくるようになりましたが、生理痛の症状だけにフォーカスが当たっているなと思うことが多かったんですね。生理痛だけでなく、PMSの症状として頭痛や腹痛がある人もいるし、症状によるつらさや日常生活への影響も、その人や置かれている環境によって大きく異なります。女性同士であっても、自分の生理痛が大したことがないからと相手も「もっと頑張れるはず」と思ってしまう人も少なくありません。
自分が経験したことのない症状を理解するのって、すごく難しい。だからこそ、まずは一人ひとり違うことを知るのが、最初の一歩として重要なのかなと。いろいろと調査をするなかで、我慢をしてしまう背景には「痛みがどうつらいのか。それを周囲に表現するのが難しい」という声が多かったのもありました。そういった人それぞれの痛みのつらさを可視化したものが、2022年の「違いを知ることからはじめよう。#わたしの生理のかたち」でした。
大山さん:例えば、眠気があると言ってもイメージするものが全然違うんですよね。私たちは製薬企業なので、男性社員とも仕事として生理のことを話題にすることがありますが、実際には女性同士でも話す機会があまりないのかなと。症状の違いを可視化することで自分のことはもちろん、周りの人のことも知ることができる。話題にするきっかけにもなるのでは?というのが「違いを知ることからはじめよう。#わたしの生理のかたち」が生まれた経緯でもありました。
――プロジェクト開始からもうすぐ5年。活動の手ごたえをどう感じていらっしゃいますか。
宮城さん:「#OneMoreChoice プロジェクト」について、企業や自治体から声をかけていただく機会が非常に増えました。講習会や研修など、積極的な募集活動をしていないにも関わらずコンスタントにご連絡をいただいていて、多くの企業が同じような課題感を持っているのかなと感じます。
先日も横浜市の小学校の校長先生方が集まる研修会でお話をさせていただきましたが“隠れ我慢”という概念や考え方は、本当に性別関係なく皆さんが自分のこととしてとらえてくださいました。みんなが我慢しない職場づくりをするためには、まず自分たちが健康でなければならないと、考えるきっかけになったという声も。実際の調査データをお見せすると「初めて知った」という方も少なくないので、今後もいろいろなところでお伝えできたらと考えています。
大山さん:「#OneMoreChoice プロジェクト」は、生理やPMSに焦点を当てていますが、それを通じて多くの人が自分のことに置き換えて考えてくださっているのは、非常にありがたいことだなと感じます。この活動をしていると「我慢に代わる選択肢って、例えば何ですか」と聞かれることも多いんですけど、やっぱりそれも人それぞれ違うんですよね。例えば、我慢しなくちゃいけない状態になるより前にケアする大切さも伝えていかなければいけない。それも一つの選択肢なのかなと感じています。
宮城さん:我慢に代わる選択肢というと「休む」が最初に挙がってきたりしますが、その手前から自分で自分の健康を管理できるといいのかなと。自分のこれからの将来を見据えたときに、自分の健康をどういうふうに考えていくのか。周りの環境作りも含めて、自分ができることは何かを突き詰めていくと、自分がどういう人生を送りたいのかというところにもつながっていくんですよね。自分にとって意味のある選択肢は、きっと人の数だけあるはず。「#OneMoreChoice プロジェクト」が、その一歩を考えるきっかけになれたらうれしいです。
公式サイト:#OneMoreChoice プロジェクト
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