月のほとんどが不調という日々を超えて…ヨガ講師のホルモン補充療法(HRT)体験談#40代のリアル

 月のほとんどが不調という日々を超えて…ヨガ講師のホルモン補充療法(HRT)体験談#40代のリアル
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井上敦子
井上敦子
2023-10-19

更年期症状の改善に行われる、ホルモン補充療法(HRT)をご存知ですか?自然に沿ったライフスタイルを好むヨガ講師の私は、女性ホルモンを人工的に補充するこの治療に最初は懐疑的でした。「更年期症状は病気じゃないのに」という思い込みもありました。しかしながら実際行ってみると、更年期症状が改善されて生活の質が格段に上がり、今ではHRTと共に更年期を乗り切ろうという前向きな気持ちでいます。これをオススメしたい!というより、どなたかのヒントや助けになれたらと思い、今回はHRT体験記をシェアすることにしました。

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更年期症状で塞ぎ込んでしまった

「更年期」は、一般的には45歳~55歳あたりと考えられています。私は現在47歳ですが、40歳を過ぎたあたりから更年期の症状を感じるようになりました。最初の症状はめまいと生理不順。体調が良好な日でもヨガクラスの時にめまいでフラフラしてしまうことが増え、仕事に差し障るためとても困っていました。

生理不順に関しては、それに伴う月経前症候群(英語略称:PMS)に似た症状に悩まされました。もともと若い頃からPMSがひどい体質ではあったのですが、それが40代に入り1ヶ月のうち3週間ほど続くように・・。生理がきたらそれはそれでしんどいので、1ヶ月のほとんどが不調という日々。のちに受診した婦人科の先生の話だと、更年期症状はPMSと仕組みが似ているとので、PMSがひどい人は更年期症状も強く出る傾向があるとのことでした。

その頃の私は常に不調を抱えているせいで気持ちが塞ぎ込み、仕事をこなすことで精一杯という生活を送っていました。ご飯を食べることも、人と会うことも面倒に感じていました。そんな日々をなんとか抜け出したくて、その後婦人科を受診し、ホルモン補充療法(HRT)を受けることになるのです。

ヨガ講師だけれど・・自然派の考え方に限界を感じた

私たちヨガ講師は一般的に「自然に沿ったライフスタイル」を選び、不調があっても病気ではない限り薬に頼らない場合が多いものです。私もかつてはそのような考えをベースに生活をしていました。しかしながら更年期症状に悩まされてからは、正直に言うと、そこに限界のようなものを感じるようになったのです。

ホルモンバランスを整えるのに良いとされるハーブを飲んだり、ツボ押しを試してみたり、エッセンシャルオイルやクレイ、食事療法などを試してみましたが、残念ながら症状はあまり改善がみられず、絶望的な気持ちになりました。最初は前向きに取り組んでいたものの、徐々に気持ちも後ろ向きに。今考えると「更年期症状は病気ではないから」という私の頑なな思い込みが、自分自身の首を絞めていたのだと思います。自然派の考え方を否定しているのではなく、それだけに頼ろうとしていた私の視野の狭さが問題だったのです。

限界に達して婦人科を受診し、クリニックで女医さんに話を聞いていただいた時はホッとして、涙が止まらなかったのを今でも覚えています。もっと早く婦人科の門を叩けば良かったな、と心底思いました。それからは更年期に対して、自分で出来る努力はするけれど、自分でもどうにも出来ないことは医療や他の人の助けを借りるように考えを改めました。

更年期
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ホルモン補充療法を受けてみて

医療に頼るようになってからというもの、私の更年期症状は劇的に改善しました。特に有効だったのが先述したホルモン補充療法(HRT)です。HRTは不足している女性ホルモンを薬で補う治療です。卵巣機能の低下などからエストロゲンの分泌が低下し欠乏することで引き起こされる様々な症状や障害を、エストロゲンを必要最低量補うことで治療していきます。エストロゲンを補うことが大きな目的ですが、エストロゲンだけでは子宮の内膜が増殖してしまい子宮内膜癌のリスクが高まってしまうことから、子宮のある人にはもう一つの女性ホルモンである黄体ホルモンを一緒に補う方法がとられます。

HRTには、経口剤と経皮吸収型製剤(貼付剤、塗布剤)の2種類があります。私が使用しているのは「メノエイドコンビパッチ」という貼り薬です。この貼り薬を、血中ホルモンの値を検査してから処方されました。3日ほどで貼り替えるだけなので、何の手間も要りません。人によってはかゆみが出る方もいるそうですが、私の場合は今のところ問題はありません。

その後私の場合は、半年ほどで症状がほとんど解消しました。今では日々ポジティブに、ときにエネルギッシュに生活をしていくのに、HRTはなくてはならぬ存在になっています。HRTを行っている間は乳がんや子宮体がんの検診も必須なので、自然と自分の体への関心が高まるのも、HRTのメリットのひとつかも知れないと思います。

しんどさは、あなたのせいではない

HRTを行ってみて私が一番助かったことは、メンタルが安定したことです。私たち女性のメンタル状態は、ホルモンに強く左右されるのだと身をもって知りました。更年期症状に悩まされていた時は症状が辛くて仕事がうまくいかず、そんな自分を責めて・・・なんていう負のスパイラルに陥ることもありましたが、今となってはその頃の自分に「それはあなたのせいではない」と言ってあげたいです。

また全部を自分で引き受けようとしてしまう性格が、自分の首を絞めていたのだと言うことにも気がつきました。辛い時は頼る。しんどい時は休む。そんな当たり前のように思えることがなかなか出来ないのが、私に限らず現代の女性たちの特徴ではないかと思っています。

更年期は一般的に10年続くと言われています。長いですよね。この10年間を、少しでも自分に優しく、生活がより良くなる選択をしていきたいものです。有難いことに今は、更年期症状を緩和するための選択肢がたくさんあります。私はHRTに出会えて本当に良かったですし、もし更年期の症状で悩まれている方がいらっしゃるのなら、ご自分に合った治療法やライフスタイルを選んでいかれるよう、陰ながら応援しています。

 

監修医師/甲斐沼孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より主にTOTO関西支社健康管理室産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。

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井上敦子

井上敦子

15年間の会社員生活を経てヨガ講師に転身。不眠症をヨガで克服した経験を持つ。リラックスが苦手だった経験から、ヨガニードラを通じてリラックスの本質を伝えるクラスを展開。週に8本のヨガニードラのレギュラークラスを持つ他、指導者養成講座やコラム執筆等ヨガニードラの普及に努めている。



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