米国で実証済!子どもたちのトラウマを改善するヨガ・プログラムとは
ジョージタウン貧困・不平等法律センター(the Georgetown Law Center on Poverty and Inequality)が新たに大規模調査を発表した。この調査によって、トラウマおよびジェンダーへの配慮にもとづいたヨガ・プログラムの実施が、少年法制下におかれた少女たちに変革をもたらす効果があることが示された。
ヨガの技法プロジェクト
ジョージタウン貧困・不平等法律センターから届いた新しい報告書によれば、あるヨガ・プログラムが少年法制下にある少女たちの心の傷を癒す手助けとなっているという。効果が報告されたのは、少女たちのために特別にデザインされたヨガ・プログラムだ。このプログラムはトラウマおよびジェンダーへの配慮にもとづいて作成された。
この報告書のタイトルは「ジェンダーおよびトラウマ――少年法制下における少女たちへの身体的介入:方針と実践にたいする意義( “Gender & Trauma — Somatic Interventions for Girls in Juvenile Justice: Implications for Policy and Practice”)」。報告によれば、トラウマ・インフォームド・ヨガは少年法制下にある少女たちに数々の利点をもたらすという。なかでも自尊感情と自律性を高める点できわめて有用であることが実証的に論じられている。
「トラウマ・インフォームド・ヨガにアクセスする少女たちは増えています。このことでトラウマ体験のある少女たちに手をさしのべる方法がまたひとつ増えたわけです。つまり今までとはちがう“治し方”、癒し方が見出されたということでもあります」。本研究の筆頭著者であるレベッカ・エプシュタインはそう語る。彼女は当センターの常任理事を務めており、同時にワシントンDCにあるアシュタンガヨガスタジオの講師でもある。「少女たちのなかには自分の身に起きたことを語ったり考えたりするには準備がととのっていない子たちもいます。傷を癒すために、まずは体を使う方法をとります。これは症状を表に出すときの選択肢のひとつなのです」
トラウマ・インフォームド・ヨガとは何か?
トラウマ・インフォームド・ヨガの柱は3本ある。1.呼吸(集中して規則的に) 2.マインドフルネス/瞑想 3.アーサナの3つだ。このほかにも大事にしていることがある。それはトラウマ・サバイバーが自分自身で選択することができるような話し方をこころがけることだ。たとえば「もしそうしたければ、首を横に傾けてください」というように語りかける。
「ふつうのヨガのクラスでは、講師と生徒は典型的な上下関係にあります。ですがトラウマ・インフォームド・ヨガでは生徒たちが自分自身の意思で参加をしていると感じられるようにします。自分自身が何を感じているか、それをヨガ・プラクティスを通じて自分で感じ取ることができるようになることに重きを置いています」。自分自身への気づきを増やすことで、トラウマ・インフォームド・ヨガはトラウマ体験によって損なわれた心身のつながりの再構築を手助けできる。エプシュタインはそう説明する。「少女たちはトラウマを生き抜くために(心を体から引き離す)解離の状態になってしまっていることがよくあります。この方法はトラウマに対応するという点では効果的なのですが、このモードにはまりこんでしまうとさまざまな困難が生じてきます。体と心の間の統合の欠如はセルフケア能力にも影響しますし、他者と親密に結びつく能力にも影響が出ることがあります」
トラウマ・インフォームド・ヨガでは通常よりも緩やかなレッスンペースや、安心できる環境作りも重要視している。居住施設の中で行われた試験的研究によれば、ヨガのクラスへの参加後、性的暴行の体験を開示する割合が高くなったという。「体験を開示する少女たちが増えた理由としては、クラスへの参加後に彼女たちがより安心感を得たこと、そして行為主体としての感覚が増したことがあるのではないでしょうか」
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