米国で実証済!子どもたちのトラウマを改善するヨガ・プログラムとは

 米国で実証済!子どもたちのトラウマを改善するヨガ・プログラムとは
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トラウマ・インフォームド・ヨガのもたらす利点とは?

トラウマ・インフォームド・ヨガは、ヨガのクラスを離れた日常生活の場面でも使える道具を少女たちに身に付けさせる。少年院の中でも、あるいは法廷に出たときにも使える道具だ。エプシュタインは語る。「専門家たちと話していたとき、ヨガのクラスで習った呼吸法を判事の前に出たときに使ったという少女たちの話をうかがいました。ヨガの呼吸法によって強いストレス状況下でも気持ちを落ち着かせることができます。当然、判事に対するプレゼンテーションにも影響を与えるでしょうし、引いては訴訟手続きの結果に影響を与えることもありえます」

少女たちは呼吸法とマインドフルネス(自律訓練)によって、何かに反応する前にいったん落ち着くことを学んだ。そのことが少年院の監房内での喧嘩や医療者に対する不満の減少(薬の要求が減った)というかたちで表れている、と報告書は書き添えている。

自尊感情が高まることはトラウマ・インフォームド・ヨガのもたらすもうひとつのとても大きな利点だ。「私たちは10代の母親たちを対象に試験的研究を行いました。その結果、この特別カリキュラムへの参加後に彼女たちの自尊感情が高まったということが分かりました」。エプシュタインは語る。「ある若い母親は娘が泣くとイライラしていたと述べました。彼女は娘にたいして辛く当たってしまっていたそうです。しかしトラウマ・インフォームド・ヨガへの参加後は、より落ち着いて、より共感をもって泣いている娘に応えることができたとのことでした。ヨガで行う動きの多くはストレス因にたいする反応を和らげます。少女たちはじっさいに自分たちの反応を和らげることができるようになったのです」。

ジェンダー・レスポンシブ・ヨガとは何か?

トラウマ・インフォームド・ヨガは同時にジェンダー・レスポンシブ(ジェンダーへの配慮があるということ)でもあるべきで、少女たちの一人ひとり異なるニーズに応えられるようにデザインされていなければならない、とエプシュタインは述べる。人種やエスニシティ、性的傾向についても同様にセンシティブである必要がある。

「ジェンダー・レスポンシブ・ヨガは少女たちの経験を大事にします。それぞれの発達段階に応じたニーズを考慮に入れるのです。少女たちに提供するにさいしてはプログラムはジェンダー・レスポンシブかつトラウマ・インフォームドであることが重要です。なぜなら少女たちはトラウマをそれぞれちがう仕方で経験しているからです」。エプシュタインはそう語る。

当報告書は、トラウマが女性の脳に対し独特の身体的影響を有している点にも触れている。トラウマ体験のある少女たちの脳では島皮質(大脳皮質の一領域で感情認識を司る)の表面積および体積の減少が観察される。この反応はトラウマ体験のある少年たちには見られない現象だ。トラウマ体験は結果として、少女たちが精神的健康を損なう危険性を高めている。

少年たちに比べ少女たちはつらい子供時代を経験している割合が高いという報告もある。特に少年法制下にある少女たちについてこのことが言える。これについては複数の研究が示すところである。こうした研究によれば、特に性的虐待のケースにおいて男女で大きく異なる結果が出やすく、少女の方が少年に比べ親密な関係性のなかでそうした暴力を経験しやすいということが報告されている。

「少年たちの経験する暴力は、公共空間で見知らぬ人間によってなされる傾向にあります。自分のことを愛する人が同時に自分を傷つける人間であるということは、内的な混乱をもたらします。少女たちの身にはこうしたことが頻繁に起こっているのです」。エプシュタインはこう語る。「一般的に人との間の関係性は少女たちにとってきわめて重要なものです。ですから彼女らにたいして介入していくときには、関係性に焦点をあてていくことがとても重要です」。

このことは少年たちがトラウマを体験していないということを意味しているのではない。それにトラウマ・インフォームド・ヨガはすべての人にとって役に立つものだ。エプシュタインはこう言い添えた。しかしながら歴史的に振り返るならば、さまざまなプログラムがまず少年向けに作られ、それが少女たちに対しても同様に効果を上げるだろうと期待されてきた(少年法制下には少女より多くの少年たちがいる。しかし彼女たちは急速に数を増やしている。特に非白人の少女たちの数は大きな比率を占めている)。エプシュタインはそう説明する。同時に、非白人の少女たちは伝統的な側面においてもトラウマを負わされている。彼女たちの歴史的/文化的な背景をもつトラウマもまたなんらかの仕方で癒されるべきだとエプシュタインは付け加えた。

「少女たちはそれぞれにちがったトラウマ体験を持っています。少女たちに合わせた、そして彼女たちの心的経験を考慮してデザインされたプログラムが必要なのです」。エプシュタインは語る。「少年たちに向けてデザインした介入プログラムをただピンク色に塗ればいいというものではありません」。

報告書は関連の深いプログラムをいくつかリストアップしている。このなかに「ヨガの技法プロジェクト(The Art of Yoga Project)」も含まれている。これは少年法制下にあり、かつ居住プログラムを受けている思春期の少女たちのために特別に作られたもので、彼女たちはトラウマセンターのトラウマ・センシティブ・ヨガのカリキュラムを受講している。報告書にはアメリカ国内でも有数の専門家によって提供された意見や情報も載っている。こうした組織や指導者たちは、興味をもった読者にたいしてトラウマ・インフォームド・ヨガおよびジェンダー・レスポンシブ・ヨガがどのようにして危険な状態にある若年者の助けとなることができるか、さらなる洞察を提供している。本研究の共著者であるタリア・ゴンザレス(Thalia González )はこう付け加えた。「少年法制下におかれた少女たちはさまざまな危険に直面しています。私たちはこの報告書で、ジェンダーとトラウマもそうした危険の一因となっていることを少しでも多くの人たちに知ってもらいたいと考えています。世の中に理解が広まることで彼女たちの将来のためにより大きなリソースが投じられるようになるでしょう。私たちは現在あるプラグラムをもっと改善していくことはもちろん、新たなプログラムも増やしていくつもりです。そうすることで少女たちが健康で実り多い未来を迎えるために一番大事な基礎となる部分を整えていくことができるのです」。

 

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Text by JENNIFER D'ANGELO FRIEDMAN
Translated by Miyuki Hosoya



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