獄中200時間ヨガで受刑者を救う!米国刑務所が実践する新しい更生プログラムとは?

SUSANA RAAB

獄中200時間ヨガで受刑者を救う!米国刑務所が実践する新しい更生プログラムとは?

JESSICA DOWNEY
JESSICA DOWNEY
2017-10-18

「刑務所でヨガを教えることこそ、私がやりたかったこと」

解剖学レッスンでの積極的な姿勢や、サティヤについての活発でオープンな意見交換で見られたとおり、メドウズの情熱は、生徒たちの献身的で熱心な態度によっていっそう高められている。受刑者たちを助けることで、メドウズも夢を実現している。2009年にメドウズが初めて自分でYTTを実施した時、彼女を指導するキャシー・ドネリーは、MCIWでヨガを教えてみないかとすすめてくれた。「キャシーがそう言った瞬間、刑務所でヨガを教えることこそ、私がやりたかったことだ!と気づいたわ」とメドウズは言う。「受刑者の90%は釈放されるわけだから、刑務所にいる間に、受刑者たち本来の良い性質を伸ばして、さらに強く心地良く生きられる術を提供すれば、彼女たちのためになると思ったの」。


 MCIWで教え始めてから1年が過ぎたころ、メドウズははたと思いついた。ここでティーチャートレーニングができたら素晴らしいのに! クラスに参加する受刑者たちがヨガの効果で穏やかさを増していくのを目の当たりにしていた彼女は、生徒たちが200時間のYTTでヨガにどっぷり浸かれば、さらに効果が出るのではないかと思ったのだ。
 メドウズは、受刑者が出所すればYTTの認定証は役に立つだろうし、刑務所での生活の改善にも繋がるはずだ、と確かな自信を感じていた。「誰にでも、汚れのない良い部分がある」とメドウズは言う。「ヨガがもたらしてくれる最も素晴らしい恩恵は、その部分と繋がって、さらに高めてくれることよ」。


 はじめは、絵空事のように思えた。メドウズの資金は限られていたし、いかにも官僚主義な刑務所の組織をくぐりぬけて承認を得るなんて、地雷を抱えるようなものだとわかっていた。だが、看守のマーガレット・チッペンデールが刑務所でスタッフ向けのヨガクラスを受けたあと、事態は一変した。チッペンデールが、メドウズにYTTをやらないか、と打診してきたのだ。刑務所内からのサポートを受けて、メドウズの計画は一気に進んだ。

獄中初の200時間ヨガティーチャートレーニング
ヨガ講師のカース・メドウズ(Photo by SUSANA RAAB)

 チッペンデールは、1970年からメリーランド州の矯正施設部門に所属しており、看守職に就く前は、速記者からケース・マネージャーにいたるまであらゆる職を経験していた。いま彼女には、二つの大きな目標がある。一つは、彼女の担当する刑務所を円滑に運営すること。二つ目は、16歳から79歳のおよそ800名の受刑者たちが刑務所にいる間に自己改善し、出所後に社会貢献できるようになることだ。


 MCIWでは、できるだけ多くの認定証を提供する方針をとっているので、チッペンデールにとっては、YTTの追加はそれにならうだけのことだった。「受刑者たちが。何らかの認定証を持っていれば、出所後もどこかで職に就けると思うんです」とチッペンデールは言う。「さらにいいことに、受刑者たちが生産的で活動的だと刑務所をより効率的に運営できるのです」。

アメリカで急増する女性受刑者、ヨガは再犯率を下げる?

 チッペンデールのオフィスの掲示板には、大学レベルのクラスも含めて、刑務所で提供するプログラムや認定証のリストが貼られている。これらのプログラムが功を奏していることも証明されている。「(これらのプログラムが広く導入される前の)2007年には47.8%だったメリーランド州の再犯率は、2012年には40.5%に下がっています」と、メリーランド公安矯正局の広報担当であるレナータ・シーガーは言う。「ヨガティーチャートレーニングが再犯率にどう影響するかを決めるのはまだ早いですが、同様の良い結果が出ることを望んでいます」。

 アメリカで女性受刑者数が急増している状況で、再犯率を下げる効果的なツールが見つかれば大きな結果を生み出すだろう。この国の女性受刑者数はおよそ20万1000人にのぼり、全世界の3分の1を占める。また、収監されたアメリカ人の数は増加の一途をたどっているが、1985年以来、獄中で過ごす女性受刑者の数は、男性に比べておよそ2倍の増加となっている。判決を検証する団体のザ・センテンス・プロジェクトの調べによると、男性の209%に対し、女性は404%の増加となっているのだ。メドウズはこの統計を踏まえたうえで、いまMCIWで行っているYTTを全国的に実施したいと思うようになった。塀の中で互いにヨガを教え合い、さらに教え合うことで仲間の受刑者たちを気遣い、親切にしながらヨガを伝える能力を培うことができるというのは、刑務所YTTがもたらす最高の効果の一つだとメドウズは考えている。


 ギブ・バック・ヨガ・ファウンデーションの事務局長をつとめるロブ・シュウェアは、だからこそ、自分のファウンデーションとプリズン・ヨガ・プロジェクトは、刑務所へのヨガの導入を懸命におしすすめているんだ、と語る。「ヨガは、衝動を抑制する力を高めるし、不安や落ち込みを軽減する効果があるから、本当に大きな役割を果たすんだ」。

Translated by Sachiko Matsunami
Yoga Journal日本版 2016/12/11月号掲載

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