獄中200時間ヨガで受刑者を救う!米国刑務所が実践する新しい更生プログラムとは?

SUSANA RAAB

獄中200時間ヨガで受刑者を救う!米国刑務所が実践する新しい更生プログラムとは?

JESSICA DOWNEY
JESSICA DOWNEY
2017-10-18

ヨガの教え「サティヤ:正直であること」を考える

 メドウズは、平安のためのヒンズー教の祈り、シャンティマントラでクラスを始めた。その顔には、子どもを自慢する母親のような表情が浮かぶ。生徒たちは、この時間に映画を観たり、寝たり、同房者とおしゃべりもできるのに、それでもクラスに来て熱心に練習する。メドウズは、そんな生徒たちを誇りに思っていた。同時に、コロンビア・ヨガセンターから寄付されたブロックや、解剖学教本、受刑者たちがペンで印をつけたり、ページの端を折ったバガヴァッド・ギーターの本を見るのも嬉しかった。これらの物はギブ・バック・ヨガ・ファウンデーションのサポートによってメドウズが苦労して手に入れた宝物だった。さらにファンデーションは、YTTをサポートする費用として1万4000ドルを集めてくれた。


 この日の夜、メドウズは腰筋についての解剖学のレッスンを終えると、ヨガの八支則のヤマの一つ、サティヤ(正直であること)について考えるディスカッションを行った。話し合いは、すぐに現実に即したものとなった。女性たちは、真実を話せば自分が危うくなる刑務所で、正直さを貫くことへの懸念をあげながら活発に話し合った。
 43歳のロンダが手をあげ、自分や刑務所仲間たちの多くが直面している問題について話した。「やっぱり、この環境で真実を話すなんて賢いとは言えないわ。だって、看守に何か見たかと聞かれた時に、正直に言うのが安全とは思わないでしょ?」とロンダは言う。「まわりから、告げ口したと思われるのがオチよ。じゃあ、どうしたらいいのかしら?」。

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生徒たちの心身のバランスを整えるメドウズ(Photo by SUSANA RAAB)

 生徒たちは、さらに他の事例をあげて、正直さを貫く難しさについて話した。中には、誰かから新しい髪型が好きかどうか聞かれて、自分は好きじゃない場合は気まずい、とごく一般的な例をあげる者もいた。だが、彼女たちがサティヤをめぐって浮き彫りにした心配事の多くは、かなり複雑な状況に基づいていた。正直であれば危険にさらされる、という刑務所での常識にそむくことにもなるからだ。メドウズは、一瞬目を丸くした。が、共感するようにうなずいた。彼女は生徒たちの発言にじっと耳を傾けていたが、やがて刑務所での独特の文化や暗黙のルールを理解したうえで説明をした。「まず大事なのは、〝自分の真実〞と〝他の真実〞を区別すること。いい、みんな? この問題はかなり難しいわよ。いくつかのヨガポーズよりもね」メドウズが生徒たちに伝えようとしたのは、自分にとっての真実を理解しながら他の解釈との距離をおく、ということだった。


 受刑者たちは、意見を掘り下げながら、お互いをさらけ出した。刑務所内で既に8年過ごしているケリは、必ずしもそうではない、と発言し、刑務所では真実よりも信頼の方がもっと見つけにくくて貴重なものだ、と言った。「私は誰も信じない。それは、ここにいる誰もが知ってることだわ。でも自分に助けが必要になったら、このクラスの人たちのことは信じられる。この人たち一人一人は信頼できるの」。


 その信頼関係は、クラスの後半で生徒たちが小グループに分かれてポーズを教え合う時に、再び目にすることとなった。彼女たちは言葉につまったり、アラインメントを間違えたりと、自分の弱い部分をさらけ出しながら、また最初からやり直す。「最初にお互いに教え始めた時は、そりゃあひどいものだったわ」とケリは言う。「だんだんと教える練習が楽になってきてる。でも一番印象的だったのは、誰がつまずいても、必ずみんなで支えてくれるの。それも、刑務所でよ! これってすごいことだわ」。


 MCIWで10年ヨガを練習している52歳のコニーは、教える練習の時の27歳のケオニーの態度が特に協力的で素晴らしいと褒める。短いドレッドヘアで長いまつげのケオニーは、クラスの最年少の一人だ。外見は他のクラスメイトよりも強そうだし、めったに笑わない。「ケオニーは私たちにこう言うの。『あたしは、じゃまするためじゃなく、いつも支えるためにいるの』ってね」。コニーが言うと、ケオニーは恥ずかしそうにほほえんだ。こんな風に、このグループは新たに得た学びを喜びながら、互いに励まし、手をたたき合う。ここは彼女たちの誰にとっても安全な場所で、ヨガと同じくらい、かけがえのないものとなっている。

Translated by Sachiko Matsunami
Yoga Journal日本版 2016/12/11月号掲載

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