更年期:年末年始に「寝込む人」が多い理由|更年期の緊張が切れた反動と、今から気を付けること
更年期の方に向けたサービス「よりそる」を運営する高本玲代さんが綴るコラム連載。高本さんご自身もまさに更年期世代。わかりやすい不調だけではない更年期の影響について、体験を交えてお話しいただきます。
年末年始は、多くの人にとって「楽しみな時期」。ところが毎年必ずと言っていいほど、休みに入った瞬間に寝込んでしまう、更年期女性が続出します。
「やっと休めると思ったのに、体が動かない」
「年末年始になると毎年熱を出す」
「気が抜けた途端に一気に疲れが押し寄せる」
「家族が元気にしているのを横目に、私だけ寝込んでしまう」
こんな経験を持つ女性は、決して少なくありません。
実はこれ、更年期の心身の仕組みと、年末という特殊な環境が重なって起きる自然な反応なのです。決してあなたが弱いのではなく、決して体力がないわけでもなく、ましてや「怠けている」わけでもありません。
本コラムでは、 なぜ更年期の女性は年末年始に寝込みやすくなるのか? そして 今から気をつけることで、寝込まずに年明けを迎える方法 を深く、やさしく、わかりやすく解説していきます。
なぜ年末年始に寝込む人が多いのか?
緊張が切れたときに出る「リバウンド現象」
更年期の体と脳は、普段よりもストレスに敏感です。日常では気づかないほど小さなストレスでも、体は常に微細な緊張状態を保っています。
しかし、年末年始という「非日常の休息期間」に入った瞬間、その緊張が一気にほどけます。このとき起こるのがリバウンド疲労(オフセット疲労)です。
緊張が抜ける → 自律神経が急降下 → 免疫力が一時的に低下
その結果、風邪をひく、高熱を出す、めまい、極度の倦怠感、動けないほどの疲労、何もしたくないといった症状として表れます。
これは、休んだ途端に倒れる典型的なパターンです。
更年期女性にこの現象が特に出やすい理由
① ホルモン変動で自律神経が不安定になる
更年期は女性ホルモンの変動により、自律神経が乱れやすい状態になります。
自律神経は、体温調整、心拍、血圧、免疫、消化、集中力、感情などをコントロールする司令塔。その司令塔が不安定な状態で、年末特有の忙しさが重なると、ギリギリのところで耐えていた緊張が年末年始に爆発するのです。
② 「頑張り癖」がリスクを上げる
更年期の女性は責任感が強く、家庭でも職場でも「自分が頑張らなければ」と力を入れがちです。年内の仕事締め切り、家事の増加、年末イベント、子どもの予定、帰省の準備、家族のスケジュール調整。このすべてを背負い込み、それでも倒れずに走り続けてしまう。
その結果、休みに入った瞬間、緊張が折れてしまうのです。
③ 脳疲労が限界に達している
更年期は、身体よりも脳の疲れが蓄積しやすい時期。12月はタスクも予定も増え、マルチタスク量は年間で最大です。判断、決断、段取り。脳が休む間もなく動かされ続けた後、ふっと緊張が切れた瞬間に、脳が「もう無理」とストップをかけます。
つまり、脳があなたを守るために強制的に休ませている状態。寝込むのは怠けではありません。体があなたの命を守ろうとしているサインです。
年末年始に寝込むのは身体の「強制ストップ」
寝込むという現象は、「元気がない」というより「限界まで頑張り続けた証拠」。むしろ身体はこれ以上消耗させまいとして休ませているのです。
だからこそ、寝込まないためには倒れる前に休む準備が必要です。
でも...「家族のために元気でいたいのに」「寝込むと迷惑をかける」「寝正月なんて嫌だ」そんな気持ちを抱えたまま、またムリを重ねてしまう女性が多い。
だからこそ、寝込まない年末年始のために、今できる準備があるというのがこのテーマの核心です。
ここからは、年末年始に向けて今からできる具体的な対策をまとめます。
今からできる「寝込まないための対策」
① 年末まで「頑張り切ろう」としない
更年期女性が倒れやすいのは、ギリギリまで頑張ろうとするからです。
12月のタスクは70%で終える
完璧を目指さず、「残してOKリスト」をつくると脳がラクになります。
② 「やらないことリスト」を作る
体力ではなく、容量が限られている時期です。
例:完璧な大掃除はしない、帰省は短縮する、不要な年賀状はやめる、夜の予定は減らす、家族行事は優先度で選ぶ、新年の抱負は書かなくていい。
タスクを減らすことは、あなたを守る最大の予防策です。
③ 年末直前に「減速期間」をつくる
休みに入った瞬間寝込むのは、スケジュールが急停止するから。
年末最後の2日は「ゆるタスクの日」に
軽い片付けだけ、判断しない日、人に会わない、予定を詰めない、スマホを減らす。急ブレーキではなく、「ゆっくり止まる」ことで倒れにくくなります。
④ 夜に大事な判断をしない
更年期の脳は夕方以降、処理能力が急落します。
避けるべき夜のタスク:来年の計画、大掃除の段取り、帰省の調整、家族との話し合い、仕事の判断。
これを夜にやると脳が暴走し、疲れが蓄積します。「夜は判断しない」と決めるだけで、寝込むリスクは大幅に下がります。
⑤ 家族に事前に「年末モード」を共有する
更年期のつらさは、家族に説明しないと誤解されやすい。
家族へ伝えておくこと:「12月は疲れやすいから、年末はペースを落とすね」「夜は判断できないから朝に話して」「急な予定は入れないで」
先に伝えることで、摩擦と負担が減り、寝込みにくい環境が整います。
⑥ 「ひとり時間」を年末スケジュールに組み込む
人と一緒にいると、自律神経はずっと働き続けます。家族が原因ではなく、構造の問題です。
1日30分の「ただ何もしない時間」を確保
散歩、部屋でゆっくりする、ぼーっとする、深呼吸だけするなど、「意図的に何もしない時間」を作ると、緊張の反動が小さくなります。
⑦ 年末年始の「期待値」を下げる
更年期の回復は、ゆるさが何よりの薬。
自分への言葉がけ:「今年は無理しない」「完璧じゃなくていい」「できなくていいこともある」
期待値を下げると、心も体も軽くなり、寝込みにくくなります。家族で笑う時間が1つあれば十分です。
寝込まずに過ごす年末年始(まとめ)
12月前半:やらないことリスト、家族へ共有、夜の判断禁止。
12月後半:タスクは70%、予定を詰めない、ひとり時間の確保。
年末最後の2日:ゆるタスク、減速期間、スマホ時間を減らす。
年始:ゆっくりスタート、判断は翌日、期待値を下げる。
これで「寝込む年末年始」は避けられます。
最後に
年末に倒れるのは、弱さではありません。むしろ、一年間頑張り続けたあなたの体が、命を守っている証拠。
だからこそ、今からの準備で「倒れて休む」ではなく「元気を保ったまま休む」という方向へシフトしていきましょう。
あなたが穏やかに新しい年を迎えることが、あなた自身の幸せだけでなく、家族全体の幸せにもつながります。
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