更年期のせいじゃない?もしかして“甲状腺のトラブル”かも。医師が教える、見逃さないためのヒント
40代後半〜50代くらいになると、「なんか最近、疲れやすい」「やる気が出ない」「汗が多い」「動悸がする」「体重が増えたり減ったりする」といった不調を感じる女性が増えてきます。こうした症状が出ると、多くの人がまず頭に浮かべるのが「更年期」。確かに、女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって体や心が不安定になる時期ですし、当てはまる症状も多いですよね。「甲状腺」の異常が関係しているケースも少なくないんです。医師が解説します。
「最近なんだかしんどい…」それ、本当に更年期のせい?
甲状腺は首の前の方、のどぼとけのすぐ下にある小さな臓器で、体の代謝をコントロールする“エンジン”のような役割を担っています。ホルモンの量が多すぎても少なすぎても、体の調子がガクッと崩れるのが特徴です。
- 甲状腺ホルモンが過剰に出る(バセドウ病など)→汗が止まらない・動悸・体重減少・イライラなどが出やすい
- 甲状腺ホルモンが足りなくなる(橋本病など)→むくみ・だるさ・うつっぽさ・寒がり・体重増加などが起きる
これらの症状、よく見てみると更年期の不調とかなり似ていませんか?
そのため、病院でも「年齢的に、更年期ですね」と見過ごされることもあるのです。
「更年期」と「甲状腺トラブル」を見分けるヒント
更年期と甲状腺の不調は、症状がかぶりやすいとはいえ、いくつかの違いもあります。
- 手の震え・脈が速い・汗が多い・目がギョロッとする → 甲状腺機能亢進症の可能性
- 肌がカサカサ・声がかすれる・顔やまぶたがむくむ・便秘 → 甲状腺機能低下症を疑う
- 体温変化や気分の浮き沈みが中心 → 更年期によるホルモンバランスの乱れの可能性が高い
とはいえ、自己判断は難しいもの。
実際、50代女性のAさんは「最近すぐ汗をかいて動悸がする。更年期だと思って我慢していた」と話していました。ところが、検査を受けたところ甲状腺ホルモンが異常に高く、バセドウ病と診断。薬で治療を始めると数週間で症状が落ち着いたそうです。
逆に、別の50代の女性は「体が重くて気力が出ない。うつかな?」と思い、精神科を受診。でも、血液検査で甲状腺ホルモンが低いことが分かり、橋本病(慢性甲状腺炎)と判明しました。ホルモン補充を始めてから、まるで霧が晴れたように体が軽くなったと言います。
つまり、見た目の症状だけでは区別しにくく、血液検査で「甲状腺ホルモン(FT3・FT4)」「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」を調べることが一番確実です。
しかもこの検査、内科や婦人科でも簡単に受けられるので、「もしかして…?」と思ったら早めに相談してみるのがおすすめです。
「年齢のせい」で片づけないことが大事
年を重ねると、どうしても体の変化を「更年期だから仕方ない」と思いがちです。
でも実際には、その不調の裏に“甲状腺”という臓器のサインが隠れていることも多いんです。
甲状腺はとても繊細で、ストレスや睡眠不足、栄養の偏りなどでも調子を崩します。特に女性は、妊娠・出産・閉経とホルモン変動が大きいので、男性よりも甲状腺の病気にかかりやすいといわれています。
放っておくと、代謝の異常だけでなく、心の状態にも影響が出ます。気分の落ち込みや集中力の低下、イライラ感――それらも「性格の問題」ではなく、体のSOSかもしれません。
もし最近、以下のサインがあるなら、ぜひ一度「甲状腺チェック」を受けてみてください。
- よく疲れる
- 汗をかきやすい/寒がりになった
- 脈が速い、動悸がする
- むくみ、便秘、気分の落ち込み
- ダイエットしてないのに体重が増えた(または減った)
たった一度の血液検査で、自分の体の“本当の不調の原因”が見えてくることがあります。
そして、原因がわかれば対処もできる。更年期と甲状腺、どちらもホルモンに関係するデリケートな問題だからこそ、「年齢のせい」と片づけずに、体の声を丁寧に聞くことが大切です。
体と心のバランスを取り戻す第一歩は、「気づくこと」から始まります。もしかしたら、あなたの不調のカギを握っているのは、“甲状腺”なのかもしれません。
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