【運動は心理療法や抗うつ薬と同程度の効果?!】 研究結果が示唆
新たな研究では、運動はうつ病の治療において、心理療法や抗うつ薬と同程度の効果が期待できる可能性が示された。
うつ病治療における運動の効果
イギリスのランカシャー大学の研究者らは、うつ病を抱える約5000人を対象とした73件の研究を分析し、運動が治療を行わない場合や心理療法、抗うつ薬と比べて、うつ病治療にどの程度効果があるかを評価した。その結果、運動は治療を行わない場合やプラセボと比べて、うつ病の症状を中程度に軽減する効果が確認された。また、10件の臨床試験の結果からは、運動が心理療法と同程度に有益であることも示された。さらに、抗うつ薬と比べても同程度の効果が認められた。また、抗うつ薬とは異なり、運動には不快な副作用がほとんど見られなかったという。
研究規模や方法に課題
分析対象となった多くの研究は、運動の効果を短期間しか調べておらず、うつ病の症状に対する長期的な影響は明らかになっていないと研究者らは指摘している。また、参加者が少ない研究が多く、研究方法に不確実な点が残ることや、運動と抗うつ薬を直接比較した研究が限られていることも課題として挙げられた。このため、定期的な運動がうつ病の予防にどのように役立つのかについては、さらなる研究が必要だとしている。
運動が脳にもたらす変化
医療ネットワークInspira Healthの精神科医スティーブン・マテカ氏は、今回の結果は、運動が気分を改善する効果に科学的根拠があることを裏付けるものだと述べた。また、運動には薬と似た作用もあると指摘する。運動はセロトニンやドーパミン、エンドルフィンといった神経伝達物質の働きを高めるため、抗うつ薬が症状を和らげる仕組みと重なる部分があるという。つまり運動には、気分を高める化学物質の分泌を促す働きがあるのだ。
もう一つ、運動には重要な作用がある。オタワ大学の精神科医ニコラス・ファビアノ氏によると、うつ病では神経の可塑性が低下し、脳が変化や適応をするのが難しくなると説明する。こうした状態にある脳では、神経栄養因子と呼ばれる物質の中でも、特にBDNFが減少している考えられている。ファビアノ氏はBDNFを「脳の肥料のようなもの」と例え、運動によってその量を増やすことができることから、運動はうつ病の患者に勧めるべき基本的な柱の一つだと強調している。
どんな運動が効果的?
今回の分析では、高強度の運動よりも軽度から中強度の運動の方が、うつ病への対処に適している可能性が示された。中強度の運動の例としては、時速約6.5キロ以上の速歩き、窓拭きや床拭きなどの負荷の高い掃除、時速約16~19キロでの自転車走行などが挙げられる。高強度の運動には、時速約9.5キロ以上でのジョギング、速いペースでの自転車走行、バスケットボールやテニスなどが含まれる。ウエイトや筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせた人は、ランニングや自転車などの有酸素運動のみを行った人よりも、効果が高い傾向がみられた。
筆頭著者であるランカシャー大学医療サービス研究の教授アンドリュー・クレッグ博士は、今回の結果について、運動はうつ病の症状を改善するうえで安全で取り入れやすい方法になり得ると述べた。その上で、運動は一部の人には効果が高いものの、全ての人に当てはまるわけではなく、個々が無理なく続けられる方法を見つけ、自分が楽しめる運動を選ぶことが重要だと話している。
出典
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