肩をもんでも治らない40代の"ガチ肩こり"。胸郭の硬さが関与している可能性とその解消方法

肩をもんでも治らない40代の"ガチ肩こり"。胸郭の硬さが関与している可能性とその解消方法
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何度もんでも、どれだけストレッチしても一向に良くならない肩こり。実は40代以降の慢性的な肩こりの原因の一つとして、肩そのものではなく「胸郭の硬さ」が関与している可能性があります。 長年のデスクワークやスマホ操作で前傾姿勢が続くと、胸郭が固まり、肋骨の動きが制限されます。すると呼吸が浅くなり、首や肩の筋肉で無理に呼吸を補おうとするため、肩周辺が過緊張状態に。この悪循環を断ち切るには、肩を直接ほぐすのではなく、胸郭の可動性を取り戻すことが効果的なアプローチの一つです。

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なぜ肩をもんでも治らないのか:慢性肩こりのメカニズム

40代以降の頑固な肩こりが肩へのアプローチだけでは解消しにくい理由として、「胸郭の硬さ」が関与していることがあります。胸郭とは肋骨、胸骨、胸椎で構成される籠状の構造で、本来は呼吸に合わせて柔軟に動くべき部位です。

長時間のデスクワークやスマートフォンの使用により、私たちは無意識に肩を前に巻き込み、背中を丸めた姿勢を取り続けています。この状態が何年も続くと、胸郭を取り囲む肋間筋や大胸筋、小胸筋が短縮し、胸郭全体の可動性が低下していきます。胸郭が固まると肋骨が十分に広がらなくなり、深い呼吸がしにくくなります。

呼吸が浅くなると、体は酸素を取り込むために首や肩の補助呼吸筋(斜角筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋上部繊維)を過剰に使い始めます。これらの筋肉は本来、呼吸のメイン筋肉ではないため、常に緊張状態になり、血流が悪化する傾向があります。この状態で肩をもんでも、一時的に筋肉がほぐれるだけで、呼吸パターンと胸郭の硬さは変わりません。だからこそ、すぐに元の肩こりに戻ってしまうのです。

さらに40代以降は、加齢による結合組織の柔軟性低下も重なり、一度固まった胸郭はますます動きにくくなります。つまり、慢性的な肩こりは「肩の問題」だけでなく、「胸郭の可動性低下」が引き起こす要因の一つと考えられます。

※ただし、肩こりの原因は多様です。頚椎症、腱板損傷、内臓疾患など他の原因の可能性もあります。症状が続く場合は医療機関での診断をおすすめします。

解決への方向性:胸郭の可動性回復へのアプローチ

頑固な肩こりから解放されるための一つのアプローチとして、肩という「結果」にアプローチするのではなく、胸郭という「原因の一つ」に働きかける方法があります。

具体的には、以下の3つの方向性で胸郭の機能を取り戻していきます。第一に、固まった胸郭周辺の筋肉(特に大胸筋、小胸筋、肋間筋)をリリースし、物理的な制限を緩和すること。第二に、胸郭の動きを伴う呼吸法を実践し、肋骨が正常に動く感覚を取り戻すこと。第三に、胸郭を開いた姿勢を体に再学習させることです。

この3つのアプローチを統合することで、補助呼吸筋に頼りすぎない呼吸パターンへの改善が期待でき、首や肩の過緊張が軽減される可能性があります。重要なのは、胸郭の可動性が戻れば、特別なことをしなくても肩こりが改善しやすくなるという点です。

また、このアプローチは肩こり解消だけでなく、自律神経の調整、睡眠の質の向上など、全身の健康状態の改善にもつながる可能性があります。深い呼吸ができるようになることは、健康の土台を築くことにもなります。

3実践方法:1日10分の胸郭リセットメソッド

ここでは、固まった胸郭を解放し、本来の呼吸機能を取り戻すための具体的なメソッドをご紹介します。朝起きた時、または就寝前に実践すると効果的です。全体で10分程度を目安に行います。

※各エクササイズで痛みを感じる場合は無理をせず中止してください。不安がある場合は理学療法士などの専門家に相談することをおすすめします。

ステップ1:胸郭周辺筋のリリース(3分程度)

まずは固まった胸の筋肉を緩めていきます。

大胸筋・小胸筋リリース:
テニスボールまたはマッサージボールを用意します。うつ伏せに寝て、ボールを鎖骨の下、肩の前側(小胸筋がある部分)に当てます。体重をかけてボールに圧をかけながら、腕を小さく円を描くように動かします。痛気持ちいい程度の圧で30秒キープ。左右両側行います。
次に、ボールを脇の下から胸の外側に移動させ、同様に圧をかけながら腕を動かします。これで小胸筋がリリースされます。左右各30秒。
※強い痛みや痺れを感じる場合はすぐに中止してください。

肩こり
photo by KogaNatsumi
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肋間筋ストレッチ:
椅子に座り、両手を頭の後ろで組みます。息を吸いながら上体を真横に倒し、肋骨と肋骨の間が伸びるのを感じます。この姿勢で3回深呼吸。息を吸うたびに肋骨が広がる感覚を意識しましょう。反対側も同様に。左右各1分程度。
※無理な角度で倒さず、心地よい範囲で行ってください。

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ステップ2:胸郭拡張呼吸法(4分程度)

胸郭が動く感覚を取り戻すための呼吸法です。

全方位呼吸法:
あぐらまたは椅子に座り、背筋を伸ばします。両手を肋骨の側面(脇腹あたり)に当てます。鼻から4秒かけてゆっくり息を吸いながら、肋骨を前後左右、そして背中側まで全方向に広げるイメージで呼吸します。手で肋骨が外側に広がるのを確認しましょう。
口から6秒かけて息を吐きながら、肋骨を中心に向かって閉じていきます。吐ききったら、自然に次の吸気が入ってくるのを待ちます。これを10回繰り返します(約3分)。
ポイント: 肩を上げずに、純粋に胸郭が広がる呼吸を心がけます。最初は難しく感じても、続けることで徐々に肋骨の動きが大きくなっていきます。

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仰向け胸郭呼吸:
仰向けに寝て、膝を立てます。両手を肋骨の側面に添えます。床に接している背中側の肋骨が、息を吸うと床に押し付けられるように広がる感覚を意識します。5回深呼吸(約1分)。

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ステップ3:胸郭開放ポーズ(3分程度)

最後に、開いた胸郭を体に記憶させます。

サポート付き魚のポーズ:
ヨガブロックまたは厚手のクッション2つを用意します。一つを肩甲骨の下に横向きに置き、もう一つを頭の下に置きます。この上に仰向けになり、両腕を楽に横に広げます(万歳の半分くらいの角度)。
この姿勢で自然に呼吸を続けます。重力によって胸が自然に開き、肩が床に落ちていく感覚を味わいましょう。3分間キープします。この間、息を吸うたびに肋骨が広がり、吐くたびに深くリラックスしていくのを感じてください。
※首や腰に違和感がある場合は、クッションの高さを調整するか中止してください。

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ポーズから出るとき:
ゆっくりと横向きになり、数呼吸してから起き上がります。急に起きると立ちくらみすることがあるので注意しましょう。

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継続のコツ

このメソッドは毎日続けることで、継続的に実践することで徐々に変化が期待できます(効果の実感には個人差があります)。肩をもむことよりも、胸郭を動かすことを日常の習慣にしましょう。デスクワークの合間に全方位呼吸法を取り入れるだけでも、肩こりの予防につながる可能性があります。

40代からの体は、適切なアプローチを継続することで、まだまだ変化が期待できます。原因の一つにアプローチすることで、長年の悩みの改善を目指しましょう。

※このメソッドを数週間続けても改善が見られない場合、または症状が悪化する場合は、胸郭以外の原因(頚椎症、神経の問題、内臓疾患など)の可能性もあります。整形外科などの専門医にご相談ください。

※特に以下の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください:

  • 腕や手に痺れがある
  • 痛みが日に日に強くなる
  • 呼吸困難を感じる
  • 夜間痛で眠れない
  • 頭痛やめまいを伴う

監修/古賀奈津美
商社のサラリーマンをしていた頃に運動不足解消のために始めたヨガと出会う。ヨガを始めて半年後にRYT200を取得。週末のみ活動するインストラクターから、フリーランスのヨガインストラクターへと転身。常温ヨガ、ホットヨガ、溶岩ヨガなど様々なスタジオで指導。パークヨガやビーチヨガのイベントも実施。現在はオンラインヨガ・児童館にてママ向けヨガを実施中。RYT200取得/ヨガ解剖学基礎講座修了

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