【自営業の女性は心臓病のリスクが低い!?】研究から見えた傾向とその理由とは?
新たな研究によると、自営業の女性はそうでない女性と比べて心血管疾患のリスク要因が少ないことが判明し、仕事環境が心筋梗塞のリスク要因の発生に影響を及ぼす可能性が示唆されている。
自営業の女性と心血管疾患のリスク要因
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)によるこの研究では、米国国民健康栄養調査(NHANES)の19,400人の就労成人を対象としたデータを使用した。NHANESは対面検査、客観的な健康測定、詳細なアンケートを組み合わせた、全米規模のデータセットである。このデータから、研究者等は心血管疾患のリスク要因と、自営業であることとの関連性を分析を行った。結果、特に女性において、自営業であることは肥満、運動不足、睡眠不足の3つの主要な心血管疾患のリスク要因の著しい低下との有意な関連性が示された。自営業とは異なる勤務形態で働く女性と比べて、自営業の女性は、肥満のリスクが7.4%低く、運動不足のリスクが7%低く、睡眠不足を報告する割合が9.4%低かった。この傾向は、年齢、教育レベル、婚姻状況、収入、健康保険の加入状況を考慮しても変化しなかった。「自営業であることと心臓病のリスク要因との間には関連性があり、この関連性は男性に比べて女性でより強いようです。」と、UCLAデイビッド・ゲッフェン医学部医学助教のキムバリー・ナレイン博士は述べている。また、ハーバード大学をはじめとする複数の研究機関の調査結果でも、仕事の自律性(コントロール)が高いほど、特に女性において心血管疾患のリスクが低いことが一貫して示されている。女性においては、男性よりも、仕事と家庭のバランスを取る際にストレスや時間的制約を受けやすい傾向による影響も推測されている。
なぜ自営業であることが心臓の健康に良い影響を与えるのか?
研究の著者ら、及び外部専門家は、仕事の内容やスケジュールに対する自律性が、仕事のストレスとそれによる身体的な影響を緩和するという理論を挙げている。自営業者は企業の規則に縛られずにスケジュールを組み、散歩や病院の診察、家族の世話などをすること、柔軟な休憩を取り、テイクアウトではなく自宅で調理した昼食をとること、健康状態に応じて仕事の量を調整し、睡眠の質を向上させること、などが可能になる。一方、その他の雇用形態では、より厳格な勤務スケジュールがある等、個人の健康やワークライフバランスに合わせた働き方が制限されることが一般的となる。
自営業であること男性の心臓の健康
男性においては、自営業であることは心臓病のリスク要因の有意な減少との関連が認められなかった。黒人男性とヒスパニック系の自営業者は、雇用されている同年代の男性と比べて同様、またはさらに高いリスク要因を有していた。これらの人々は参入障壁が高く失敗率の高い事業に従事していることが多いことや、事業を維持するために必要な財務資本が不足し、キャリアの指導を受ける機会が限られているため、成功を維持するための準備が十分でない可能性があるためだと、研究者らは指摘している。
研究の今後
この研究はある一時点でのデータを比較する横断研究であるため因果関係の証明はできない。しかし、心臓病が世界中で主要な死亡原因の一つである中、変更可能な社会的・職業的要因の解明は、健康促進における有望な研究領域となる。この研究は科学的理解を深めるだけでなく、公平かつ健康をサポートする職場環境の整備の緊急性を浮き彫りにしている。その影響は個人の健康だけでなく経済や社会福祉にまで及ぶため、労働衛生は心臓病の健康格差を解消するための重要な軸として位置付けられている。「仕事環境が私たちの体にどのように影響を与えるかを理解することは不可欠です。そうすることで、誰もが健康な仕事環境を確保するための方法を考案できるからです。」UCLAのデイビッド・ゲッフェン医学部医学助教のキムバリー・ナレイン博士は述べている。
出典
https://www.uclahealth.org/news/release/self-employed-women-may-be-significantly-lower-heart-attack
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