世界的に有名なヨガ指導者に聞く心の整え方|思考に秘められたパワー
やがて、思考の流れが混乱や否定の渦を巻いていても、自分の中の何かがいつもその渦から抜け出して傍観していることに気づき、本当の自分は思考そのものではなく、むしろそれを見つめる観察者のほうだとわかり始める。そして、自分自身の気づきともっと親密になっていく。
「私は観察者であり、思考ではない」と認識することをゴールとみなす教えもある。内なる観察者への気づきは、人間的、霊的な成長のカギとなる。感情イコール自分ではなく、感情の観察者こそが本当の自分だとわかっていれば、人生に行き詰まってもより自由でいられるだろう。マインドフルネスの実践では、ラマナ・マハルシのような賢者や現代の禅の指導者たちが伝える瞑想を行いながら観察者としての気づきを培う。事実、これらの教えでは、自分自身を体や個性や心ではなく、観察者とみなすことが解放につながるとしている。
しかし、観察者としての気づきはほんの始まりにすぎないという教えもある。タントラ哲学は特に実用的で(私にとっては)わくわくする視点からマインドを考察している。タントラでは、マインドを宇宙意識による完全な創造物とみなしている。宇宙意識はすべての生命に宿る繊細で知的なエネルギーであり、それを神と呼ぶ人々もいる。
タントラの賢者たちは、私たちのマインドは、宇宙に存在すると思われる広大で創造的な知性、つまり宇宙マインドの小宇宙バージョンであると主張する。教本『リコグニション・スートラ』では、宇宙の英知は凝縮のプロセスによって私たちのマインドになると述べられている。つまり、蒸気が凝縮されると水になり、冷えると氷になるのと同じ原理だ。思考は圧縮された状態では固体のように思えるが、融けたり、消えたり、分解されたり、また違う形になったりする。
この観点から言えば、私たちの思考は、意識から飛び散る火花のようなものだ。ある意味、雲のようにつかみどころがない。だが雲が水分を含むのと同じように、思考にはエネルギーがある。そのエネルギーは利用したり、具現化したり、仲良く遊ぶことが可能だ。ネガティブな思考を前向きにしたり、気分や体調をも変えることができる。想像力を使って計画がうまくいくように思い描き、その結果も左右することができる。
思考は想像力そのものだ。意識しようとしまいと、思考が私たちの経験を形づくっている。散在する思考の一つひとつのパワーはわずかでも、それらの思考をとりまとめる方法を知っていれば、そのエネルギーを利用してさらに愛と力に満ちた現実を創り出すことができる。まずは、思考の満ち引きを観察することから始めよう。思考から距離を置く方法がわからなければ、マインドの創造的な潜在能力を利用することはできないからだ。
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