獣医師から薬草ハーバリストへ|加藤美帆さんの転身ストーリー
―――移住後、薬草と出会うきっかけは?
移住したばかりの頃は、薬草の魅力を知りませんでした。ある日、飼い犬と家の周りを散歩していると、ふと足元に広がる植物たちが目についたんです。次第に、毎日くるくると表情を変える植物に愛着が湧き、足元に広がる美しいものの魅力に引き込まれていきました。
そういえば、子どもの頃は渓谷や多摩川が近い地域に住んでいたんです。その時に自然と触れた経験や、獣医師のころに学んだ自然科学や薬学の知識をもとに、直感的に「目の前にある植物で何かをしてみたい」と思うようになったんです。
―――なぜ、薬草ハーバリストをになったのですか?
植物と向き合い始めて間もない頃、当時の自分でも判別できる「よもぎ」をお茶にしてみたら、びっくりするほど美味しかったんです。その発見をきっかけに、植物に対する探求心が開花しました。
その後は、朝から晩まで、植物を見つけては成分や効果を調べていました。例えば百人一首に登場する植物や、一般的な薬の原材料になる植物、有名メーカーのコスメに使用されていたエキスの正体…調べれば調べるほどたくさんの発見がありました。また、自分で七草を摘んでみたり、体調に合わせて薬を調合してみたり、コスメや食事を作ってみたり…好きなことに没頭する毎日が、楽しくて楽しくて仕方ありませんでした。
―――「好きなこと」がビジネスに変わるきっかけは何だったのでしょうか?
自分で作ったものを、周囲におすそ分けしていたんです。すると「これを作ってほしい」という要望を受けるようになり、自然と薬草ハーバリストとしての活動を始めるようになりました。特に評判を呼んだのは、よもぎと西洋ハーブをブレンドしたお茶。これを販売してほしいという声を受けて、「 - suu -」を立ち上げることに決めました。
―――自分らしさを追い求めた結果、今があるのですね。最後に、加藤さんにとって「生きる」とは?
自分らしくあること、自分が何に感動するかを知ることだと思います。私は自然との出逢いを通じて、自分が何に感動するのかを知りました。新月から満月へ移り変わっていく様子や、植物が芽吹いては花が咲き、枯れてゆく…そんな移ろいや営みに心が動くのです。
何に感動するかは人それぞれですが、大切なのは、自分の心が何に動くかに気づくことです。そして、ありのままの自分自身でいること。そうでなければ自分の心の動きをすくい上げることはできません。日常にちりばめられたさまざまな変化を楽しむ。そんな感動がある日々をこれからも過ごしていきたいです。
加藤美帆さん
薬草ハーバリスト/獣医師 - suu -代表 1986年東京生まれ、ニューヨークの田舎育ち。都内で獣医師として勤務後、東京・カリフォルニアのITベンチャーを経て、糸島へ移住。動物たちとともに、山に囲まれた海辺で暮らす。2017年、[月の巡りと薬草暮らし]をテーマに、薬草と暮らしのブランド - suu -を設立。無農薬のよもぎ茶をひとつひとつ手づくりする傍ら、糸島での薬草リトリートや、薬草暮らしのワークショップ、コラム執筆、よもぎのボトルドティーの開発などを行っている。
HP:tea-suu.com instagram:instagram.com/tea.suu/
ライター/君嶋瑠里
2017年、会社員の仕事で心身共に疲弊していた頃、インストラクターの友人の紹介がきっかけで知った綿本彰氏のスタジオを訪れ、師事する。パワーヨガ、ラージャヨガ、その他様々な瞑想法を学び、2018年、指導者養成講座を修了しヨガインストラクターに。日常に活かせるヨガをテーマに実践中。2018年日本ヨーガ瞑想協会講師登録。2019年全米ヨガアライアンスRYT200取得。ヨガスタジオ、ホットヨガスタジオ、スポーツクラブ、公共施設にて指導。
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