科学的に考える「ジャンプバック」で安全にプランクポーズに移る方法
生体力学研究室を訪ねてみた
私たちはプランクポーズに移る動きとチャトランガダンダーサナに移る動きの生体力学的な違いを検討した科学的研究を見つけられなかったため、コロラド大学ボルダー校の応用生体力学研究室に出向いて、自ら検証することにした。この研究室には、10台のカメラを用いたモーションキャプチャシステムと特殊なプレートがあり、床反力(床に体重がかかるとき床に接している部分が床から受ける力)を録画することができた。
私たちはひとりのヨギの両手と腰にセンサーをつけ、そこを基準点として、ふたつの動きの最中に重心がどこに移るのか明らかにしようとした。その結果、垂直方向の床反力ピーク値(最大値)について、両方の動きの間に差が認められないことがわかかった(どちらも体重の約1.5倍)。この結果は、どちらのほうが衝撃が大きいとは言えないことを意味している。実際、どちらの垂直方向の床反力ピーク値も、走行時の値(体重の2.5倍)よりも歩行時の値(体重の1.3倍)に近いことがわかった。このことは、必要な力があって適切な形を保つことができれば、後方にジャンプしてプランクポーズに移っても、チャトランガダンダーサナに移っても、歩行時よりもやや高い衝撃が加わるにすぎないということを意味している。私たちは追跡試験を行って、両方の動きの最中に被験者の手と足に受ける床反力を別々に測定した。その結果、チャトランガダンダーサナで着地するときに上半身が受ける床反力のほうが、プランクポーズで着地するときよりも4.5kg(被験者の体重の7%)大きいことがわかった。しかし、プランクポーズで着地するときには逆のことが明らかになった。プランクポーズで着地する場合、肩と手首が受ける力はチャトランガダンダーサナよりも小さいが、足が受ける力は3.6kg(被験者の体重の5%)大きかったのだ。つまり、プランクポーズで着地するときには重心が腰の近くに留まるが、チャトランガダンダーサナで着地するときには頭のほうに10cm移動するということだろう。この結果が意味しているのは、チャトランガダンダーサナに着地する場合、床反力が加わって腕が支える体重がさらに大きくなるため、安全な関節の位置を保って着地するために、肩、肘、手首が生み出すトルク量が増大するということだ。筋肉に必要とされる力が大きくなるほど、けがをする可能性が高くなる。特に、関節のまわりの筋肉が、着地やチャトランガダンダーサナを支えるのに十分な力をつくり出せない場合には、関節を損傷する可能性が高くなる。
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