2)潜在意識が、突然の父の死に辻褄を合わせようとしていた……?【認知症の父の死が教えてくれたこと】

2)潜在意識が、突然の父の死に辻褄を合わせようとしていた……?【認知症の父の死が教えてくれたこと】
Saya
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2026-10-30

認知症の父の突然の死から、約1年。 ようやく振り返れるようになったあの頃のこと。 父の死を挟んだ自分の気持ち。 生と死と向き合った日々と心境の変化を浄土宗の僧侶でイラストレーター、 中川学さんのイラストとともに振り返ります。

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認知症になった父は、探しものをすることも多くなっていました。それまできれいに整っていたリビングや父の部屋の棚も、何度も物を出し入れするうちに、どこに何があるのかわからなくなっていました。それで、父の部屋だけでなく、次に帰ってきたら、リビングの天井まである本棚も片付けようと思い、あらかじめ写真を撮っていたのです。葬儀の前後に、まず取りかかったのが、この本棚でした。

片付け始めたときには、そんなことは考えてもいなかったのですが、母の本や書類でいっぱいだった棚を整理したことで、四十九日まで父の位牌やお骨を置いておく場所も作ることができました。棚の前に小さなテーブルを置き、薄い紫色の布をかけて、遺影や仏具を並べると、即席の仏壇ができあがりました。

母は自然への崇敬心こそあるものの、信仰心や宗教心はなく、スピリチュアリティにもまったく興味のない人です。仏壇を買うつもりもなかったのですが、わたしとしては、父の居場所を作ってあげたかった。そういう意味でも、これはとてもよいアイデアでした。

細かいことですが、ロウソクやお線香の燃え残りが原因で火事になる話もよく聞きますから、電気ロウソクと電気線香にしたのもよかったと思います。信仰心のない母も、さすがに毎食、お米や水はお供えしてくれました。火や灰の始末をしなくてよいことには、母もほっとしたようでした。

父が亡くなって間もない頃、葬儀の前後や父の部屋を片付けているときには、父の気配を感じることがよくありました。わたし自身にも、まだ父がそこにいるような感じがありましたし、母は葬儀の朝に見た夢の話をしてくれました。

「何か派手なシャツを着て、これでいいかって聞くから、『あなたのお葬式じゃない』って言ったところで目が覚めたのよ」

下の妹は、電車に乗っていく父の夢を見たといいます。上の妹は、「見たことのない、きれいな白い鳥が止まっていたの」と、鳥の写真を撮ってきました。それぞれが見た夢や、ふと目にしたもの。そうした出来事が重なると、わたしたちの潜在意識が、突然の父の死をなんとか受け止めようと、必死に辻褄を合わせていたかのようにも思えました。

中川学

以前にも書いたことですが、わたし自身も、父が最後に入院する日の朝、不思議な夢を見ていました。わたしは、向かい合わせの座席が並ぶ、旅情あふれる特急列車のようなものに乗っていました。目的地ではない、ある停車駅で、なぜか白いリモワのスーツケースを置いたまま、ホームに降りてしまったのです。「あれ」と思って慌てて戻ると、人の形をしていない、藻のような薄緑色の、ぶよっとした魂のようなものが、そのリモワを引いて吊り革につかまっていました。

そこで目が覚めました。

父が亡くなるひと月ほど前のことです。あれは父の魂だったのだろうか。父はもう旅立ちたかったのだろうか。不自由になった身体を脱ぎ捨てて、この世を去りたかったのだろうか。そんなふうに思ったものでした。

→【記事の続き】3)一種の興奮状態のなかで、さまざまな感情がうねり、表面化したはこちらから。

イラスト/中川学
1966年生まれ。京都在住。浄土宗西山禅林寺派の僧侶にしてイラストレーター。Adobei llustaretorを使い幅広いスタンスでイラストレーションを描き、近年は絵本制作にも力を入れている。『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』(汐文社)、『絵本 化鳥)(国書刊行会)、『えほん遠野物語 やまびと』(汐文社)、『八雲えほん 因果ばなし』(岩崎書店)、『のこったのこった』(絵本 館)、『幸せに長生きするための今週のメニュー』(ミシマ社)、『おいなりさん』『そのとき門はひらかれた 法然上人ものがたり』「だいぶつさま」シリーズ(アリス館)など多数。この夏、絵と文で京都の聖地を紹介する本『京都いま浄土』(ミシマ社)を出版予定。TIS会員。

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