〈鎌倉↔︎八ヶ岳〉年を重ねるごとに鎌倉での生活がしんどくて...50代後半で選択した二拠点生活 #暮らしの選択肢
近年、テレワークの普及やライフスタイルの多様化により、都市と地方の二拠点で生活する人々が増加傾向にあるということをご存知でしょうか。国土交通省の調査によれば、二地域居住等を実践する人は約6.7%に達し、約701万人と推計されているんだとか。また、複数拠点生活を行っている人は全体の5.1%に上るとの報告も。自らの価値観に基づき「暮らしを選ぶ」二拠点生活者たちから、その魅力や課題、リアルな日常を深掘り。理想と現実の狭間で見えてくる「暮らしの選択肢」の今を伝えます。
今回お話を伺ったのは、鎌倉と八ヶ岳で二拠点生活を送るmikaさん。10年前に「第二の人生を過ごす場所を見つけたい」と鎌倉へ移住してきた彼女が、60歳を目の前に、二拠点生活という形で、八ヶ岳に住居を構えた理由は?mikaさんの #暮らしの選択肢 に迫ります。
〈移住者プロフィール〉mika
Instagram: _komorebi_no / __m_m_mika
YouTube: @komorebino
10年暮らしている鎌倉で、年々辛くなってきたもの
本州のほぼ中央、長野県と山梨県に位置する「八ヶ岳連峰」。豊富な峰で形成された個性的な連峰で、国定公園にも指定されている。また、豊かな自然環境と気候、都心からのアクセスの良さ、加えて比較的手頃な住環境のため、二拠点生活者や移住者も多い。
10年前に関西から鎌倉に移住した、mikaさんもその一人。今年で57歳になるmikaさんは、生まれも育ちも関西。10年前に鎌倉で暮らしはじめるまで、関西の外に出たことはなかったそう。けれど「60歳からの第二の人生を過ごす、新しい住まいがほしい」と思い立ったのだという。その時、mikaさんは47歳だった。
「最初は、60歳までに落ち着く場所を見つけるために、3年ごとにいろいろな土地に住んでみようと思っていたんです。でも、鎌倉は想像以上に居心地がよくて。気づけば、そのまま10年が経っていました」
武家文化が息づく歴史ある街並み、海と山に囲まれた豊かな自然。レトロな街歩きや個性豊かなグルメも楽しめる鎌倉には、国内外から多くの人々が訪れる。都心へのアクセスのよさも魅力のひとつで、鎌倉に暮らしながら東京へ通勤する人も少なくない。
歴史と自然、そして都市の利便性が心地よく調和する街、鎌倉。人々を惹きつけてやまないこの街に、mikaさんが居心地のよさを感じ、いつしか10年もの歳月を重ねていたのも、ごく自然なことだったのかもしれない。
また、鎌倉での暮らしは、mikaさんの仕事にも新たな広がりをもたらした。フラワーアレンジメントの講師として活動する傍ら、自宅の庭で草花を育てるようになったのだ。自ら育てた花々をアレンジメントに取り入れるなど、植物との暮らしを通して、仕事の可能性も少しずつ広がっていった。こうしてmikaさんは、鎌倉での10年間、公私ともに充実した日々を育んできた。
このように、心満たされる暮らしを送っていたmikaさんが、なぜ八ヶ岳との二拠点生活をはじめようと思ったのだろう。
その理由を尋ねると、彼女は目を細め、少し意外な答えを口にした。「年々鎌倉の暑さがしんどくなって」と。
日本の夏、特に都心の熱は尋常ではない。毎年夏が近づいてくると、憂鬱になってしまう人も決して少なくないはずだ。もちろん、鎌倉も例外ではない。気温の高さに加えて、mikaさんの頭を悩ませたのが、湿気だったという。これは、海辺の街ならでは。
「色々なものがカビてしまうんですよね。カビくらいなら手入れしてどうにかなりますが、それ以上にきついのは、年を重ねるごとに身体がしんどいと感じるようになったことです。夏はもう少し涼しい場所で過ごしたい、と考えるようになりました」
そして思い立ったのが、二拠点生活だった。6年前に再婚した夫に心の内を伝えると、最初はかなり驚いたという。移動するというのは、体力的、また精神的にも決して簡単なことではない。特にmikaさんの夫は、鎌倉に住むまで、40年おなじ場所に住んでいたそう。そんな彼も、mikaさんと共に様々な場所を巡っているうちに、山登りが好きなことも功を奏し、徐々に気持ちを固めることができたそう。
最初に二拠点先として、二人の間で候補に上がったのは、蓼科高原だった。実は、蓼科高原はmikaさんが関西から出ると決めた時の候補地だったそう。しかし、当時大学生だった次男に「鎌倉だったら遊びに行くけど、蓼科高原は遠いかも」と言われたため断念。
時が経ち、子供たちも大人になった。今度こそ、自分たちが本当に住みたい場所を選びたい。そんな思いが強くなっていた。しかし、二拠点生活を続けるうえで、現実的な問題もあった。それは移動時間だ。「片道3時間以上かかるのは厳しい」。そこで、蓼科高原に限らず、都心からのアクセスも考慮しながら八ヶ岳エリアで土地を探すことにした。
土地探しでこだわったのは、庭の広さだったという。草花はもちろん、果実も育てられるくらいの広さがいい。そして見つけたのが、別荘地のすぐ外にある土地だった。2年の歳月をかけて建てた家は、別荘地エリアからは外れているため、森の中にポツンと佇んだ一軒家。また、庭は鎌倉のものより10倍の広さを有しているため、思う存分、草花、果実を育てる余裕がある。
こうしてmikaさんの、鎌倉と八ヶ岳の二拠点生活がはじまった。
最初は移住を考えていたけれど...
現在、mikaさんは用事があるときには鎌倉に戻り、それ以外の日々は八ヶ岳の自宅で過ごしている。来春の種まきに向けて、今は庭の土づくりに取り組む毎日。朝から晩まで庭仕事に追われているという。
「時間がいくらあっても足りないんです」そう語る彼女の表情には、日々を楽しむ喜びがにじんでいた。
植物の生育を大きく左右するのは、土の状態だとmikaさんは話す。しかし、土の中で何が起きているのかは、未知の世界。実際に植物を育ててみなければ、わからないことも多いという。
しかも、高地での種まきに適した時期は、年に一度の春。自身の年齢や、いつまで元気に庭仕事を続けられるかを考えると、挑戦できる機会は限られている。
だからこそ、一年に一度のチャンスを逃さず、思い描く庭を実現したい。その思いが、八ヶ岳で過ごす時間を増やすことにつながっている。
一方で、mikaさんの夫は平日は鎌倉で過ごし、会社へ出勤。休みを利用して八ヶ岳を訪れ、庭仕事の手伝いをしてくれる。
「もともと庭仕事には興味のなかった人なんです。だけど、特にやりたいこともないから手伝うよと言ってはじめたら、今は夫の方が進んでやってくれて。楽しくなってきたみたいです」
いずれは八ヶ岳への移住を考えているのだろうか。そう尋ねると、返ってきたのは意外な答えだった。
「最初は、夫が定年退職したら八ヶ岳に移住しようと考えていました。でも、今は二拠点生活を続けるのもいいかもしれない、と思うようになったんです」
その理由を詳しく聞いてみると、どうやら庭が2つになったことが大きく影響しているようだ。育てられる植物が増え、その楽しみも2倍になったという。
もちろん、庭が2つあれば手入れの手間も倍になる。鎌倉の庭は、普段は夫が手入れをしてくれているそうだが、久しぶりに戻ってみると、草が伸び放題になっていたこともあるのだとか。水やりや苗を植える作業は好きなご主人も、どうやら草むしりは苦手らしい。
それでも、2つの庭を持つことには、それ以上の魅力がある。それぞれの土地で気候や環境が異なるからこそ、育つ植物にも違いが生まれる。その土地に合った植物を選び、それぞれの環境を生かしながら庭づくりを楽しめることが、二拠点生活の醍醐味なのだという。
「例えば、ライラックは暑さに弱いので、鎌倉ではうまく育たなかったのですが、八ヶ岳で再挑戦したいと思っているところです。一方で、私はミモザの花が大好きなのですが、温暖な気候を好む植物なので、八ヶ岳では育てるのが難しいんです。だから、ミモザは鎌倉で引き続き育てたいと思っています」
どちらか一方を選ぶのではなく、それぞれの土地の魅力を生かしながら、植物との暮らしを楽しむ。2つの庭があるからこそ広がる可能性が、mikaさんにとって、二拠点生活を続ける大きな理由になっているようだ。
このように、二拠点生活ならではの楽しみを見出しているmikaさん。植物が育ってきたら、鎌倉と八ヶ岳、それぞれの場所でフラワーアレンジメントの教室を再開したいと考えている。
「やりたいことがどんどん増えてきています」そう笑顔で語る彼女だが、八ヶ岳で過ごすようになって、実際に暮らしてみなければ気づかなかったこともあるという。
やりたいことが広がる一方で、新たに見えてきた二拠点生活の現実とは。後半では、mikaさんの暮らしをさらに深掘りしていく。
>> 後編へつづく
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