「最近、食べるのが遅くなった」「よくむせる」は老化だけじゃない。“飲み込む力”の低下は何が怖いのか|医師解説

「最近、食べるのが遅くなった」「よくむせる」は老化だけじゃない。“飲み込む力”の低下は何が怖いのか|医師解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2026-09-16

年齢を重ねると、「食事に時間がかかるようになった」「以前よりゆっくり食べるようになった」と感じることがあります。歯が弱くなった、体力が落ちたなど、加齢による変化として考えることも多いでしょう。しかし、もう一つ見逃してはいけないのが、「飲み込む力」の低下です。医師が解説します。

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「食べるのが遅くなった」は、年齢のせいだけとは限りません

食べ物を口に入れたあと、舌でまとめ、喉の奥へ送り、気管に入らないように食道へ運ぶ。この一連の動作を「嚥下(えんげ)」といいます。

この働きが弱くなると、食事に時間がかかるだけでなく、「むせる」「咳が増える」「食べ物が喉に残る」といった変化が出てきます。

そして、その状態が続くと、誤嚥性肺炎につながることがあります。

「むせる」のは、体からの大切なサインです

特に注意したいのが、食事中のむせです。

例えば、水やお茶を飲んだときに「ゴホゴホ」とむせる。味噌汁やスープでむせる。食事の途中で何度も咳をする。

こうした症状が頻繁にある場合、「年を取ったから仕方がない」と片付けないことが大切です。

むせるというのは、飲み物や食べ物が気管の方向へ入りかけたときに、それを外へ出そうとする防御反応の一つです。

つまり、むせること自体が必ずしも悪いわけではありません。

食事
photo/Adobe Stock

むしろ問題なのは、飲み込む機能が低下しているために、気管へ入りやすくなっている可能性があることです。

さらに怖いのは、「むせなくなったから大丈夫」とも限らないことです。

嚥下機能がかなり低下すると、気管に入っても強く咳き込めないことがあります。これを「不顕性誤嚥」といい、本人も家族も誤嚥に気づかないまま、肺炎を繰り返すことがあります。

こんな変化があれば「飲み込む力」をチェック

日常生活では、次のような変化がヒントになります。

□食事に以前より時間がかかる
□食事中によくむせる
□水やお茶でむせることが増えた
□食後に声が濁ったようになる
□食べ物が口の中に残る
□飲み込んだあとも喉に何か残っている感じがする
□食事中に咳が増えた
□硬いものを避けるようになった
□食べる量が減ってきた
□体重が少しずつ減っている
□肺炎を繰り返している

一つだけで嚥下障害と決めつけることはできませんが、複数当てはまる場合は、一度評価を受けたほうがよいでしょう。

なぜ「飲み込む力」は低下するのでしょうか

嚥下には、舌、喉、首周りの筋肉など、多くの筋肉が関わっています。

加齢によって筋力が低下したり、食事量が減ったりすると、これらの機能も少しずつ衰えることがあります。

また、脳卒中、パーキンソン病などの神経疾患、認知機能の低下、口腔内の問題などが嚥下機能に影響することもあります。

さらに、食欲が落ちて食べる量が減ると、栄養状態が悪くなり、筋力がさらに低下するという悪循環に陥ることがあります。

「むせるから食べない」「食べないから筋力が落ちる」「さらに飲み込みにくくなる」という流れです。

だからこそ、早い段階で気づくことが重要なのです。

誤嚥性肺炎は「食事中のむせ」だけが原因ではありません

誤嚥性肺炎というと、「食べ物が肺に入って肺炎になる」と考える方が多いと思います。

実際には、口の中の細菌を含んだ唾液や胃内容物などが気管に入り、それをきっかけに肺炎を起こすこともあります。

そのため、食事中にむせる人だけでなく、「夜間に咳をするようになった」「痰が増えた」「食後に声が変わる」といった変化にも注意が必要です。

特に高齢者では、肺炎になっても高熱が出ず、「なんとなく元気がない」「食欲がない」「眠っている時間が増えた」といった症状だけで始まることもあります。

「食べ方」を少し変えるだけでもできることがあります

嚥下機能が低下している人に対しては、単純に「もっとゆっくり食べて」と言うだけでは十分ではありません。

食事の姿勢を整え、椅子に深く座って体を安定させること。食べ物を一口ずつ適切な量にすること。急いで飲み込まず、口の中を確認してから次の一口を入れること。

食事スタイル
photo/Adobe Stock

また、むせやすい人の場合、飲み物の種類や食事の硬さ、とろみなどを調整することで、飲み込みやすくなる場合があります。

ただし、どの食形態が適切なのかは人によって違います。自己判断で極端に食事を柔らかくしたり、水分を制限したりするのは避けたほうがよいでしょう。

必要に応じて、医師や歯科医師、看護師、言語聴覚士、管理栄養士などが連携して評価します。

「年だから仕方ない」で終わらせない

私たちの体は、年齢とともに少しずつ変化していきます。

しかし、「食べるのが遅くなった」「よくむせる」「食べられるものが減った」という変化を、すべて老化として片付けてしまうのは危険です。

嚥下機能の低下は、低栄養や体力低下につながり、さらに誤嚥性肺炎のリスクを高める可能性があります。

特に、「最近急に食事が遅くなった」「むせる回数が増えた」「体重が減ってきた」「肺炎を繰り返している」という場合には、一度、飲み込む力を評価してもらうことをおすすめします。

食事は単に栄養を取るためだけのものではありません。家族と一緒に食卓を囲み、おいしいものを食べることは、生活の楽しみそのものです。

「むせるようになったから、もう普通の食事は無理」と諦めるのではなく、早めに原因を確認して、その人に合った食べ方を見つけること。

それが、食べる楽しみを守りながら、誤嚥性肺炎を防ぐための第一歩になります。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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