ほんとに風邪?【意外と知らない風邪と肺炎の見分け方】肺炎に罹りやすい人の特徴は?薬剤師が解説
肺炎は罹患率も死亡率も高い疾患です。日本では、年間180万人が罹り、10万人以上が亡くなっています。かぜだと思って自分の判断で処置して、症状が重くなってしまうことも。肺炎とはどのような病気なのか、どのような症状が起こるのか、などいざというときのために学んでおきましょう。
肺炎ってどんな病気?
病原微生物が肺に入って起こる、肺の急性疾患
肺炎とは、病原微生物が肺に入って、急性の炎症が起こる疾患です。例えるなら、敵である病原微生物が攻め入ってきて、肺という戦場で、人の防御機能と戦いを起こすようなものといえます。
人の防御機能が勝っている場合には、病原微生物が入ってきても病気にはなりません。逆に、人の抵抗力より病原微生物が強いと、肺炎を発症するのです。
肺炎の原因菌である病原微生物は、
・ 肺炎球菌
・ 黄色ブドウ球菌
・ インフルエンザ菌 (※インフルエンザウイルスとは異なります)
・ 真菌
・ マイコプラズマ
・ クラミジア
・ その他の細菌やウイルス
などです。
市中で感染する肺炎のうち、60~70%は、肺炎球菌などの細菌が原因となる、「細菌性肺炎」といわれる肺炎です。残りの30~40%は、マイコプラズマなどの感染によるもので、「非定型肺炎」と呼ばれています。細菌性であるか、非定型であるかによって治療に用いる薬が異なります。
肺炎の症状とは?
感染症と肺の疾患、両方の症状が出る
肺炎は“肺”の“感染症”であるため、「感染症の症状」と「肺の疾患の症状」の両方の症状が見られます。
まず、感染症としての共通の症状では、最も多い、発熱をはじめ、悪寒、倦怠感、食欲不振、頭痛、関節痛、筋肉痛などがあげられます。
また、肺の疾患としての特徴的な症状として、せき、痰、膿性痰(黄色や緑がかったドロドロした痰)、胸痛、呼吸困難などがあげられます。
【感染症の症状】
・発熱 ・悪寒 ・倦怠感 ・食欲不振 ・頭痛 ・筋肉痛 ・関節痛 など
【肺の疾患の症状】
・せき ・痰 ・膿性痰 ・胸痛 ・呼吸困難 など
また、熱が高ければ、普通の風邪でも頻脈(脈が速くなること)や、頻呼吸(呼吸が速くなること)が見られますが、それが異常に速い場合は、肺が広範囲に冒され、重症になっている可能性があります。
よく、「かぜをこじらせて肺炎になった」と耳にします。実際にそういう例は多いのですが、肺炎は必ずしも風邪が悪化してなるケースばかりとは限りません。ダイレクトに肺に菌が入って、突然肺炎を発症することもあるので、注意が必要です。
肺炎と風邪との見分け方
強い全身症状と肺の疾患特有の局所症状
前述したように、肺炎は、「風邪をこじらせる」ケースもあれば、「肺に菌が入って突然発症する」ケースもあります。ただし、後者の場合でも、「多分、風邪だろう」と思って、生兵法で対処して治療を遅らせてしまうことがあります。
そこで、早く、正しいケアができるように、普通の風邪(普通感冒)と肺炎の違いを知っておくことが大事です。
まず、普通の風邪では、全身症状はそれほど強く出ません。熱もそれほど高くなく、倦怠感もそう強くはありません。局所的な症状は、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、などに限られます。
それに比べて肺炎の場合は、全身症状、つまり発熱や食欲不振、倦怠感などが大変強く出ます。肺炎というのは、死に至ることもある重篤な病気ですから、全身症状も強い傾向があるのです。
また、局所症状としては、肺の疾患特有である、せきや膿性痰(黄色や緑がかったドロドロした痰)が多いのが特徴です。高熱でひどくだるい、せきや痰が多い、などの症状に当てはまる場合には、早めに医療機関で診察を受けてください。
なお、インフルエンザでは、肺炎と同じように熱も高く全身症状が強く出ますが、肺炎とは違ってせきや痰などの局所症状はあまり見られません。インフルエンザでも、せきや痰が出てきたという場合には、肺炎を合併してきている可能性があります。
肺炎に罹りやすい人の特徴
高齢者や持病のある人など、免疫力の弱い人
肺炎は、病原微生物と人の抵抗力のとの勝負。ですから、肺炎になりやすいのは、体の抵抗力の弱い人といえます。まず挙げられるのは、
・体そのものが弱い人
・全体的に体が弱っている高齢者
・抵抗力ができる前の小さい子ども
・糖尿病や肝臓病、腎臓病などの持病を持っている人
・ひどい過労に陥っていたり、強いストレスを抱えている人
などです。
また、普段は健康な人でも、風邪やインフルエンザなどに罹ったときや、高齢者で微量の誤嚥(食べ物や唾液が気道に入ること)があるときなどは、肺炎の発症率が高まります。
肺炎を予防するには?
規則正しい生活と予防接種が大事
肺炎を予防するには、マスクやうがい、手洗いをまめに行い、細菌が体内に侵入する前にシャットアウトすること。さらに、免疫力が低下しないよう、規則正しい生活、過労やストレスの解消を日ごろから心がけておくことが大切です。
また、肺炎球菌性肺炎やインフルエンザの予防接種を受けて、感染しにくい体をつくっておくのも予防策の一つです。100%の予防はできませんが、万一罹ったとしても軽い症状で済みます。とくに免疫力の弱い人、高齢者などは予防接種を受けることをおすすめします。
まとめ
肺炎は罹患率や死亡率が高い病気です。風邪だと思って油断していると重症化して、命にかかわる恐れもあります。とくに高齢者や子ども、持病のある人などは、症状が出たら早めに医療機関を受診してください。また、事前に予防接種を受けておくことも予防につながります。
AUTHOR
小笠原まさひろ
東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。
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