あなたの発熱や咳、もしかして加湿器が原因かも?呼吸器内科医が教える、加湿器肺炎の症状と対策
湿度が低いと感染症にかかりやすくなるので、乾燥する季節には加湿器の使用がマストです。でもお手入れを怠ると、アレルギー症状を発症してしまうことも。加湿器の必要性とお手入れの重要性を紹介します。
インフルエンザや風邪のウイルスは湿度が低いほど活性化する!
体中がカサカサ&バサバサになる、冬の乾燥した空気はつらいもの。加えてエアコンなどを使うと、乾燥度合いに拍車をかけてしまいます。
毎年この時期は感染症の流行が心配ですが、例えばインフルエンザウイルスは、湿度が低くなるほど活性化します。湿度5~20%でインフルエンザウイルスは非常に活性化し、30%程度だとやや活性が下がり、40~70%になると急速に活発さが低下。一般的に「風邪」と呼ばれる鼻、喉などにくる感染症のウイルスはみな似たような性質があるため、感染症を予防するには適度な湿度が大切なのです。
湿度が低いと鼻や喉からウイルスが入ってきやすくなる
湿度が低くなると、ウイルスが活性化するのに加えて、鼻や喉といった空気の通り道からウイルスが体内に侵入しやすくなります。
鼻や喉の細胞の表面には「繊毛」という細かな毛がびっしりと生えています。私たちが息を吸うと喉や鼻から空気と一緒にウイルスや細菌も入ってきますが、適度な湿度が保たれていると繊毛が滑らかに動き、ウイルスや細菌を洗い流してくれます。ところが湿度が低くなると繊毛の働きが低下し、ウイルスや細菌がそのまま通過して体内に入ってしいます。つまり繊毛は、ウイルスや細菌から体を守るゲートキーパーなのです。
エアコンを使うとあっという間に湿度は40%を切ってしまいます。繊毛の働きを保つためにも、加湿器などを上手に使って適度な湿度を保つことを心掛けたいですね。
加湿器の水は大丈夫?「加湿器肺炎」を引き起こすことも
冬場に頼りになる加湿器ですが、「加湿器肺炎」という病気をご存じでしょうか?
正確には「過敏性肺臓炎」といい、カビによるアレルギー性の肺炎です。
加湿器には水を入れておくタンクがありますが、水を入れっぱなしにしておいて「いつの間にかカビが…」という経験はありませんか? このカビこそが「加湿器肺炎」の正体。カビの胞子を含んだ水が加湿器によって部屋中に巻き散らかされ、それを吸ってしまうことでアレルギー症状を引き起こしてしまうのです。
加湿器から出たカビを吸うと、4~6時間で発熱や咳、息切れなどの症状が出始めます。一見して風邪症状をよく似ているため、この段階で病院を受診しても加湿器肺炎であるとわかることはまれです。
咳などの症状が長引いて胸部CT検査を実施してみると、肺が白く薄い影で覆われていることが一目瞭然。そこからさらに「気管支鏡検査」などをして、入院して原因の加湿器から離れることによる症状の改善と合わせて、ようやく「加湿器肺炎」という診断に至ります。
タンクの水はこまめに全交換!週に1度はタンクを洗って
加湿器肺炎の原因として、カビの細胞壁に含まれる「エンドトキシン」という物質が関係しているのではないかという報告があります。
加湿器タンクの水と保存水、それぞれのエンドトキシン濃度を比べた実験では、加湿器タンクの水のエンドトキシン濃度は5日めあたりで急上昇することがわかりました。対して保存水の方の濃度は7日たってもあまり変わりませんでした。
このことからも分かるように、加湿器の水は2日に1回は変えるのがベター。継ぎ足しではなく入れ替えにしましょう。さらに1週間に1度はタンク内を洗剤できれいに洗うのがベストです。
ちなみにカビなどの雑菌が最も繁殖しづらいのは、水をヒーターで加熱して蒸発させる「スチーム式」。加湿器を選ぶ際は、そのあたりも考慮するとよさそうです。
教えてくれたのは…草ヶ谷英樹先生
草ヶ谷医院院長。医学博士、日本内科学会認定内科医、日本内科学会総合内科専門医。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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