3人に1人が花粉症…花粉を回避する方法と市販薬の上手な選び方・使い方|薬剤師が解説

 3人に1人が花粉症…花粉を回避する方法と市販薬の上手な選び方・使い方|薬剤師が解説
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花粉症はアレルギー性鼻炎の一種で、花粉の飛散時期に合わせて症状が起こります。患者数は年々増加傾向にあり、3人に1人はスギ花粉症に罹患しています。とくに今年は、例年より早い花粉飛散が予測されており、早めの対策が肝心です。この記事では、花粉症のセルフケアと市販薬の選び方・使い方などを解説します。

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花粉症のメカニズム

花粉症はスギやヒノキなど、植物の花粉に対して体が引き起こすアレルギー反応です。アレルギーとは、特定の物質に過剰に反応する現象です。花粉症の人は、花粉が体内に入ると、花粉を異物(抗原)とみなし、対抗するための「抗体」をつくります。この抗体を「IgE抗体」といいます。

IgE抗体は、鼻や目の粘膜にある肥満細胞と結合し、花粉が入ってくるたびに増え続け、ある一定の量に達すると、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質が放出されます。

ヒスタミンが神経を刺激すると、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどが起こり、ロイコトリエンが鼻や目の血管を拡張させると、鼻づまりや目の充血などが起こります。ヒスタミンやロイコトリエンの量や出方により、症状が起こる場所や強さが違ってきます。

花粉症対策はいつから始めれば良い?

花粉症は、一度症状が出てしまうと目や鼻の粘膜がどんどん敏感になり、症状が強く出やすくなります。そのため、症状が出る前から治療薬を使用するなどの対策をとり、粘膜を過敏にさせないようにすることが大事です。

基本的に、薬は症状が出たときに使うもので予防としては使いません。しかし、花粉症については他の病気と異なり、毎年同じシーズンに症状が現れることが分かっていて、原因もはっきりしています。そのため、薬による「初期予防治療」が認められています。花粉症のシーズン前に薬をのみ始めれば、発症を遅らせたり、軽い症状で抑えたりすることができるのです。

花粉が飛び始める時期は、地域によって異なりますので、目安としては住んでいる地域で花粉のシーズンが始まる2週間ほど前から、花粉症治療薬の使用を始めると良いでしょう。例えば、関東地方の場合、例年2月上旬から4月下旬くらいまでスギ花粉が飛散するため、1月下旬頃からの予防治療をおすすめします。

市販薬を選ぶポイントは?

花粉症の市販薬には、「内服薬」「点鼻薬」「点眼薬」の3つがあります。さらに内服薬は、従来からある成分を配合した「第1世代抗ヒスタミン薬」と、医療用医薬品の成分を一般用医薬品として使用できるようにした「第2世代抗ヒスタミン薬」(アレルギー専用鼻炎薬)に分けられます。

第1世代の製品は、効き目が良く、即効性がある一方、眠気やのどの渇きなどの副作用が出やすい傾向があります。第2世代の製品は、アレルギーの原因となるヒスタミンなどの産生を抑える“抗アレルギー作用”により症状を緩和し、眠気などの副作用が少ないメリットがあります。

剤形(薬のタイプ)は、その人のライフスタイルなどにより、使いやすいものを選ぶと良いでしょう。一般的に内服薬はくしゃみ、鼻水、目のかゆみなど、幅広い症状に有効で、効果の持続時間が長いのが特徴です。製品によって1日1回もしくは2回服用するタイプがあります。

また、鼻水、鼻づまりの症状が強い場合は「点鼻薬」、目のかゆみや充血が強い場合は「点眼薬」を個別に使用すると良いでしょう。内服薬と併用しても構いません。ただし、内服薬は眠気が強く出る場合もあるため、車の運転をする人などは局所に作用する点鼻薬や点眼薬の使用をおすめします。

<主な花粉症治療薬と特徴>

・「抗アレルギー薬」(アレルギー専用鼻炎薬)
花粉症の原因となるヒスタミンなどの産生を抑える。鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの症状が出始めたら、症状がつらくなる前に服用すると良い。眠気などの副作用が起こりにくい「第2世代抗ヒスタミン薬」と呼ばれる新しいタイプの内服薬。

・「抗ヒスタミン薬」
従来からある抗ヒスタミン成分「第1世代抗ヒスタミン薬」を配合。即効性があり、鼻水、鼻づまり、くしゃみなどのつらい症状を今すぐに止めたいときに服用。複数の成分を配合した製品が多く、幅広い症状に効く。眠気などの副作用が出ることがあるので注意。

・「非ステロイド点鼻薬」
鼻水、鼻づまりなどの局所的な症状を止めたいときに使用。鼻の粘膜でヒスタミンの働きをブロックする抗ヒスタミン薬、ヒスタミンなどの化学物質が出てくるのを抑える抗アレルギー薬、腫れた粘膜を収縮させて、鼻づまりを改善させる血管収縮薬などがある。

・「ステロイド点鼻薬」
鼻水、鼻づまりなどの症状が比較的重いときに使用。優れた抗炎症作用と抗アレルギー作用で鼻の中の炎症を抑える。

・「点眼薬」
目のかゆみを抑える抗ヒスタミン薬や充血を抑える血管収縮薬を配合。目のかゆみや充血が強いときに使用。コンタクトレンズを装着しているいるときは、防腐剤が含まれていないものを使用する。

そのほかにも、鼻や目の「洗浄液」があります。鼻や目を洗うと、粘膜に付着している花粉を洗い流すことができるので花粉症の症状が抑えられます。ただし、カップ式の眼洗浄液は、目の周りについている花粉を目の表面につけてしまう場合があるので、目の周りを洗ってから使用することが大事です。

花粉症を予防するセルフケア

花粉症治療の基本は、できる限り花粉を体内に入れないように工夫する“セルフケア”にあります。薬だけに頼らず、少しでも花粉から身を守ることが大事です。

最も有効なのは、マスクやメガネを用いて物理的に花粉が体内に入り込むのを防ぐ方法です。顔にフィットしてすき間がないマスクを着用すれば、それだけで花粉を吸い込む量を6分の1まで減らすことができます。また、目のかゆみが強いときは、花粉症用のメガネを使うのもおすすめです。基本的な対策は次の通りです。

・マスクの着用

・メガネ(または、花粉症用ゴーグル型メガネ)の使用

・うがい、手洗い

・帽子をかぶる

・スカーフを使用する

・髪をまとめる

・花粉が付着しにくいレザーやポリエステルなどのつるつるした素材の衣類を着用

そのほかにも、次のようなライフスタイルを心がけましょう。

・花粉の飛散量の多いときは外出を控える。(晴れて気温の高い日、雨上がりの翌日、空気の乾燥した強風の日など)

・花粉を落としてから家の中へ入る。

・帰宅後は洗顔、うがいをして、鼻をかむ。

・窓をできるだけ空けないようにし、室内への花粉の侵入を防ぐ。

・花粉の飛散時期は洗濯物や布団を屋外に干さない。

・加湿器を使い適度な湿度を保ち、粘膜の保護や花粉の舞い上がりを防ぐ。

・空気清浄機を使用する。

・規則正しい食事や睡眠、ストレスの解消を心がけ、免疫力の低下を防ぐ など。

まとめ

花粉症対策には、何より花粉が体内に侵入しないようにすることが大切です。花粉は目に見えないため、ついつい対策を怠りがちですが、日ごろから花粉を寄せつけないように予防を徹底することが大事です。また、花粉症の症状が少しでも現れたら、できるだけ早く薬を使用することで症状を軽く抑えることができます。流行前から治療薬を準備しておくと安心です。

また、自分の症状に合った薬を使用することも大事です。薬剤師などに相談して自分の症状に合った薬を選び、用法・用量を守って使用しましょう。ただし、1週間ほど使い続けても症状が改善されない場合は、使用を中止し医療機関を受診してください。

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AUTHOR

小笠原まさひろ 薬剤師

小笠原まさひろ

東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。



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