呼吸困難に陥る場合も…【薬の副作用】起こしやすい人の特徴は?薬剤師が教える、薬の副作用と対処法
薬に副作用があることは知っていても。具体的にどんな症状が副作用か知っていますか? 薬をのんだ後の体調の変化に注意し、副作用と見られる症状を感じたら、早めの対策で安全かつ上手に薬を活用できるようになりましょう。この記事では、薬の副作用について解説します。
副作用は初期の段階で見極めることが重用
薬は使い方を誤ると、副作用を引き起こすことを知っている人は多いでしょう。しかし副作用がどのようなものかよく分からない、また自分には起こらないだろうという思い込みから、副作用が現れているにも関わらず、見過ごしているケースも少なくありません。例えば、薬の作用に敏感な人は、効き目が強く出過ぎる場合がありますが、実はこれも副作用の一つです。また、普段は何も起こらない人でも、飲むタイミングや体調などによって、副作用が現れる場合があります。医療用医薬品(処方薬)でも一般用医薬品(市販薬)でも、薬をのみ始めて何か不調を感じたら、いったん服用をやめ、医師や薬剤師などに必ず相談することが大事です。
これだけは抑えておきたい副作用とその症状
抗ヒスタミン薬による副作用
風邪薬(総合感冒薬)や鼻炎薬のほとんどには鼻水を抑える「抗ヒスタミン薬」という成分が含まれています。抗ヒスタミン薬は唾液の分泌を抑える作用があり、「口渇」といって口やのどが渇くことがあります。これは、薬が持つ本来の作用に付随して起こる副作用です。また、抗ヒスタミンの副作用として、眠気や頭がぼーっとするといった感覚が現れることがあります。そのため、服用後は車の運転や機械類の操作はしないこと、と添付文書(説明書)に書かれています。
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)
風邪薬や解熱鎮痛剤の服用によって、ごくまれに「スティーブンス・ジョンソン症候群」という副作用が起こる場合があります。スティーブンス・ジョンソン症候群は、皮膚粘膜眼症候群とも呼ばれ38度以上の高熱、全身の皮膚・粘膜・目などに発疹や発赤、水疱(水ぶくれ)などの症状が比較的短期間に次々と現れるのが特徴です。重症化すると、呼吸器障害や肝障害などの合併症を起こし、死亡することもあります。 また、症状がよくなっても、目や呼吸器官などに障害が残ることもあります。
薬物性肝障害
解熱鎮痛剤や漢方薬などの服用によって「薬物性肝障害」という副作用が起こることがあります。薬物性肝障害の症状は、全身倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸などです。薬物性肝障害は、重症な肝障害である劇症肝炎を引き起こすこともあり、命に関わる場合もあります。お酒をたくさん飲む人や肝機能に問題がある人はとくに注意が必要です。
抗コリン作用による副作用
風邪薬や咳止め、鼻炎薬、胃腸薬、酔い止め薬などには「抗コリン薬」という成分が含まれています。コリンというのは自律神経のうち副交感神経から出る「アセチルコリン」という神経伝達物質で、この働きを阻害する作用を抗コリン作用といいます。抗コリン薬は、鼻水を止めたり、胃液の分泌を抑えたりする作用がある一方、のどの渇き、尿が出にくくなる、視力障害(眼圧上昇、緑内障等)、頻脈などの副作用があります。
アナフィラキシー
薬をのんだ後、アレルギー反応の一種である「アナフィラキシー」という副作用が起こることがあります。アナフィラキシーとは外部から入ってきた異物に対して、通常のアレルギーよりも過剰な反応を起こすことで、多くの場合服薬後30分以内に起こります。アナフィラキシーの症状は、皮膚のかゆみ、じんましん、紅斑(皮膚の一部が赤くなって斑点状や地図上に広がった状態)などで始まり、胃痛や吐き気、下痢などの症状が出ることもあります。やがて、のどのかゆみ、息苦しさ、呼吸困難などが現れ、意識がなくなったりショック状態に陥ったりすることもあります。
副作用を起こしやすい人は?
子どもや高齢者、慢性疾患を持っている人
体の機能が未熟な子どもや代謝機能が低下している高齢者、病院で処方された医療用医薬品(処方薬)をのんでいる人や持病の薬をのんでいる人は、市販薬との飲み合わせによる副作用が起こりやすいので注意してください。また、これらの人が市販薬を購入する際は、薬剤師に必ず相談するようにしましょう。
薬と相性の悪い食べ物は?
薬の代謝を妨げる物と代謝を促す物に注意
薬との相互作用で薬の効き目が悪くなったり、効き目が強くなったりことがあります。代表的な飲み合わせは次の通り。
●牛乳と便秘薬……薬の効き目が悪くなる。
●カフェイン入り飲み物と咳止め薬……薬の作用が強くなる。
●アルコールと解熱鎮痛剤……薬の作用が強くなり血圧低下などの副作用が起こる。
●グレープフルーツと降圧薬……薬の効き目が過剰に強くなる。
漢方薬にも副作用はあるの?
漢方薬でも副作用が現れることがある
漢方薬は、一般的に作用が穏やかですが副作用が起こることもあります。例えば、風邪や発熱に効く「小柴胡湯」という漢方薬は、「間質性肺炎」という病気を引き起こすことがあります。間質性肺炎とは、肺の中で酸素と二酸化炭素のガス交換を行っている「間質(肺胞を包む壁)」に炎症が起こり、酸素が十分に取り込めなくなり呼吸が苦しくなる病気です。
漢方薬は副作用が少ないというイメージがあるかもしれませんが、薬である以上、副作用が起こる可能性はあります。添付文書をしっかり読むことや、薬剤師から副作用の説明を受けることが大事です。
副作用を避けるための6カ条
市販薬による副作用を避けるためには次のことに注意しましょう。
① 添付文書に従い、用法・用量を守って服用する。
② むやみに他の薬と一緒に服用しない。常用している薬がある場合は、事前に医師や薬剤師に確認を。
③ 日頃から気軽に相談できる“かかりつけ薬局”を決めておく。
④ 服薬中に普段と違う体調の変化が現れたら、薬を購入した薬局にすぐに相談する。
⑤ 一度副作用を経験したら、薬の名前を確かめ、どんな症状が出たかを細かく記録しておく。
⑥ 薬に対する過敏症は遺伝的な要因もあるので、親や兄弟のアレルギー歴についても知っておく。
まとめ
薬には主作用と副作用があります。薬をのんで体調の変化や、副作用の兆候を感じたら服用を中止しすぐに購入した薬局もしくは医師に相談してください。また、薬を使用するときは、添付文書をしっかり読み、副作用について事前に薬剤師に確認しておくことをおすすめします。
AUTHOR
小笠原まさひろ
東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。
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