〈子供が高熱!〉どう対処すべき?薬剤師が伝えたい「子どもが発熱したときもっとも大切なこと」

 〈子供が高熱!〉どう対処すべき?薬剤師が伝えたい「子どもが発熱したときもっとも大切なこと」
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子どもの体調不良の中でも、とくに心配になるのが急な発熱。とくに38度以上の高熱が出た場合、どのような対処をすれば良いのか、分からないという人も多いのでは。この記事では、いざというときのために、子どもが熱を出したときの対処法を解説します。

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どうして熱が出るのか? 

体温は、普段は一定に保たれていますが、ウイルスや細菌などが体内に入ると、白血球が攻撃し、サイトカインという物質が産生されます。サイトカインは、脳の体温調節中枢に働きかけ、中枢から体温を上げるように各所に指令が出されます。ウイルスや細菌は、熱に弱く、体温を上げることで活動が弱まるからです。また、発熱によって異物から体を守る白血球の働きが活発になり、免疫機能が高まります。発熱はウイルスや細菌から体を守るために起こる生体防御反応であり、発熱自体は悪いものではありません。

子どもの発熱が高熱になりやすい理由

体温には、深部体温と皮膚体温があります。深部体温は大人も子どもも38度前後ですが、体温はさまざまな組織や皮膚の細胞を通り、皮膚の表面では低くなります。子どもは大人に比べ皮膚や組織が薄いため、皮膚体温は37度前後となり、大人の皮膚体温よりも高めになります。また、子どもは、汗腺が未発達で小さく、大人に比べ汗をかきにくいため、皮膚から熱を放散して体温調節を行っています。こうしたことから、子どもは熱を出すと皮膚体温が高くなりやすく、大人に比べ高熱が出ると感じやすいのです。

子どもの急な発熱時に慌てないために

子どもが発熱したときもっとも大切なことは、“熱の高さだけで重症と判断しない”ということです。熱があるから病気なのではなく、具合が悪そうだから熱を計ってみる、というのが正しい認識といえます。子どもは大人に比べ、熱を出すと体温が上がりやすいうえ、1日の中でも変動があります。まずは体温を正確に計測することが大事です。次のことを守って体温を計りましょう。

●脇の汗を拭き取る

汗をかいているときには、体が火照ったり、冷えたりして正確な体温が計れない場合があります。体温を計る前に、しっかりと汗を拭き取ってから計りましょう。

●状況を確認して計る

子どもは、食後、運動後、入浴後、興奮しているときなどは体温が高くなる傾向があります。こうした状況以外のときに体温を計りましょう。

●計り直す習慣をつける

体温が高いときは1回測るだけで異常と判断せず、30分ほど時間をおいて計り直してください。より正確に体温が把握できます。

発熱時に受診が必要な目安

発熱時に受診する目安は、熱の高さに加え、年齢、症状、元気があるか、機嫌がよいか、なども含めて判断します。つぎのことを目安にすると良いでしょう。

【38度以上の熱がある場合】

●生後3~4カ月児までの場合

生後3~4カ月までの赤ちゃんが急に38度以上発熱した場合は、重症の感染症である可能性が高いので、夜間や休日でもすぐに受診してください。移動手段がない場合などは、救急車の要請を。

●生後5カ月児以上の場合

38度以上の熱があり、嘔吐を繰り返す、ぐったりして元気がない、息苦しそうなどの症状がある場合は、夜間や休日でも急いで受診してください。

なお、5カ月児以上で、38度以上の熱があっても、せきや鼻水、嘔吐、発疹、下痢などの症状がない場合は、自宅で様子をみます。

【38度未満の熱がある場合】

●年齢に関わらず自宅で様子をみます

せきや鼻水、鼻づまりなどの症状があっても、熱が38度未満の場合は、しばらく自宅で様子をみます。ただし、熱が3日以上続く場合は、かぜ以外の病気も考えられるため、診療時間内に受診してください。

また、熱やかぜの症状がなくても、機嫌が悪い、一人で遊べずに泣く、何度もぐずって起きるなどの様子が見られる場合は、何らかの病気が考えられるので受診が必要です。

受診した方が良いか迷った場合は?

夜間や休日でもすぐに受診した方が良いか、あるいはお家で様子をみたほうが良いか、迷った場合は、総務庁消防庁が開設している「救急安心センター事業(♯7119)」に電話をして相談してください。「♯7119」では、電話口で医師、看護師、トレーニングを受けた相談員などが話を聞き、病気や症状を把握して、救急車を呼んだ方がいいか、急いで病院を受診した方がいいか、受診できる医療機関はどこかなど、的確なアドバイスが受けられます。迷ったら「#7119」に相談すると覚えておくと良いでしょう。

解熱剤を使ったほうが良いのか?

発熱は体を守るための生体防御反応であり、発熱そのものが悪いわけではありません。熱を出すことでウイルスなどと闘っている状態なので、早期の解熱剤の使用は控えるべきです。ただし、3日以上の長期にわたる発熱は体力を消耗させる原因となり、逆に免疫力が低下してしまう場合もあります。3日以上発熱が続く場合は、比較的副作用が少なく安全といわれる「アセトアミノフェン」という成分だけが入った解熱剤を使用すると良いでしょう。また、子ども用の解熱剤には、内服薬と坐剤(座薬)がありますので、対象年齢に合ったものを使用してください。嘔吐がある場合など、経口での服薬が難しい場合は座薬を使います。なお、大人用の解熱剤の多くは、15歳未満では服用してはいけないことになっているので、大人用の解熱剤の量を減らして飲ませるようなことは、絶対にしてはいけません。どの解熱剤がよいか分からない場合は、薬剤師や登録販売者などに相談してください。また、いざというときのために、あらかじめ子ども用の解熱剤を常備しておくと安心です。

まとめ

発熱は、体を守るための防御機能が正しく働いている証拠です。そのため、無理に熱を下げる必要はありません。受診する際は、熱の高さだけでなく、年齢、症状、元気があるか、機嫌がよいかなどの状況から判断することが大切です。受診するかどうか、迷った場合は「#7119」に相談してください。解熱剤は熱が3日以上続いた場合に使用しましょう。

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AUTHOR

小笠原まさひろ 薬剤師

小笠原まさひろ

東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。



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