医師が解説!ツライ花粉…アレルギー症状を抑えるには茶色の穀物が有効?内側から免疫をケアする食べ方

 医師が解説!ツライ花粉…アレルギー症状を抑えるには茶色の穀物が有効?内側から免疫をケアする食べ方
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スギ花粉の飛散が開始しています。日本気象協会によれば、ピークは2月末~3月上旬。飛散量は全国的に例年の120~160%と、大量飛散が見込まれています。身体をウイルスなどの外敵から守るはずの免疫反応が花粉に対して過剰に反応した結果、かゆみやくしゃみなどが引き起こされます。そのため、免疫の働きが乱れていると症状がひどくなることも…。ピークの前に免疫もケアすることが大事です。内側から免疫をケアする方法を、伊藤明子先生に伺いました。

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腸内細菌の多様性とアレルギーとの関わり

「アレルギーの免疫の働きに大きく関わっているのは、腸内細菌だといわれています。腸管にある免疫細胞は全身のうちの約7割といわれています。腸内には多様な微生物が存在していますが、この多様性が低いほど免疫が低下するのでは、という報告が複数あります。」

腸
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アレルギーを抑制する制御性T細胞も腸内細菌と関係

「腸内には、乳酸菌、ビフィズス菌、その他酪酸を産生する酪酸菌など、その種類は1000種類の細菌が存在するといわれています。腸内細菌の多様性はアレルギー予防に重要な条件の一つですが、その中でも特に注目されているのが、酪酸菌など短鎖脂肪酸を産生する菌です。近年の研究で、Th1/Th2だけでなく制御性T細胞もアレルギーに関係があることがわかっています。制御性T細胞とは、過剰な免疫応答を抑制する働きがあります。酪酸菌は腸内で酪酸を作り出し、その結果過剰な免疫を抑制する制御性T細胞を増やすことを示唆する研究成果が報告※4されています」

※4) Nature 10.1038/nature12721. 2013.

発酵性食物繊維の摂取で短鎖脂肪酸を産生する菌を増やす

伊藤先生は、腸内細菌の多様性を獲得するためには発酵性食物繊維の摂取が重要だと話します。「食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維という分類が知られていますが、最近では腸内で発酵しやすいかどうかという機能としての分類が注目されています。腸内で発酵しやすい食物繊維を発酵性食物繊維といい、これを多く含む食品を摂取することで腸内細菌の多様性が増し、先ほどの酪酸菌を含む短鎖脂肪酸が増えることがわかっています」

発酵性食物繊維と発酵食品の違いとは?

キムチや納豆など発酵食品が体にいいことは知られていますが、発酵食品と発酵性食物繊維は、名前が似ていますが異なります。発酵とは微生物の酵素で有機物を分解変化させていくことです。発酵性食物繊維を食べることは、発酵性食物繊維を含む食品を食べて腸の中で発酵が起きることです。

発酵によって産生する短鎖脂肪酸が腸内環境を整える

発酵性食物繊維は、腸で善玉菌のエサとなり発酵して短鎖脂肪酸をつくりだします。先ほどの酪酸も短鎖脂肪酸の1つで、他にプロピオン酸、酢酸などがあります。短鎖脂肪酸は、以下のような働きがあることがわかっています。

短鎖脂肪酸の働き

1 腸内環境を整える
2 炎症を抑える
3 脂肪の合成を下げる
4 悪玉菌が増えるのを抑える
5 種々の体に良い働き

茶色の穀物に発酵性食物繊維が多く含まれる

「日本人の食物繊維の平均摂取量は1日15gですが、推奨されている摂取基準は年齢によりますが、18gです。足りない食物繊維を発酵性食物繊維で補うには穀類がおすすめです」

発酵性食物繊維には、β-グルカン、ペクチン、イヌリン、オリゴフルクトースなどがあります。代表的な存在は、小麦ブラン(小麦ふすま)や小麦全粒粉に含まれるアラビノキシランです。腸の奥で発酵し、短鎖脂肪酸の産生を行うことがわかっています。健康な成人を対象にした日本の研究では、アラビノキシランを含む小麦ブランを使った食品で酪酸菌が増え、便通がよくなったことがわかりました。※5この研究をもとにアラビノキシランが含まれる食品の中には「発酵性食物繊維が善玉菌を増やして腸内環境を改善する、お腹の調子を整え便通を改善する」機能性表示食品も登場しています。

※5) Seiichiro Aoe 「Effect of Wheat Bran on Fecal Butyrate-Producing Bacteria and Wheat Bran Combined with Barley on Bacteroides Abundance in Japanese Healthy Adults」

発酵性食物繊維が含まれる食品

腸の前部で発酵される食物繊維
・βグルカン…押麦(6.7g)、大麦(6.0g)
・ペクチン…ブロッコリー(0.7g)、ニンジン(0.7g)、キウイフルーツ(0.7g)
・オリゴフルクトース…ゆで大豆(2.2g)、蒸し大豆(2.3g)、きな粉(2.4g)、調整豆乳(0.2g)
・イヌリン…ごぼう(2.3g)、たまねぎ(0.6g)、チコリ(0.2g)

押麦
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腸の後部で発酵される食物繊維
・アラビノキシラン…小麦全粒粉(7.9g)、小麦ブランシリアル(小麦ふすま)(5.3g)、玄米ごはん(炊いたもの)(1.1g)、発芽玄米(1.4g)

玄米
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教えてくれたのは…伊藤明子先生

小児科医。赤坂ファミリークリニック院長。NPO法人 Healthy Children, Healthy Lives代表理事。東京大学医学部附属病院 小児科 医師。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策 客員研究員。

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text by Chiaki Okochi

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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