むせる、食べこぼす、口が乾く、滑舌悪化は「お口の衰え」のサイン!【歯科医が教える】予防対策
40代から始まっているお口機能の低下「オーラルフレイル」。オーラルフレイルは健康トラブルの入り口とも言われています。宝田歯科医院院長の宝田恭子先生に、そのチェック方法と予防対策について教えていただきました。
オーラルフレイルとは?
・口まわりの筋力の衰える→固いものが噛みにくくなる、食べこぼす
・舌の動きが悪くなる→飲み込みにくい、滑舌がわるい
・唾液の分泌量が減少→むせる
むせる、食べこぼす、口が渇く、滑舌悪化など些細なお口の衰えを指す“オーラルフレイル”。加齢などによる口腔機能の低下は、栄養不足や活動量が不足し全身的な機能低下に進むことが指摘され、フレイルの前段階と位置づけられています。
たった5秒の発音チェックでできる「オーラルフレイル・チェック」
①「パ」「タ」「カ」をそれぞれ、連続で5秒発音
・「パ」「パ」「パ」「パ」「パ」「パ」…
・「タ」「タ」「タ」「タ」「タ」「タ」…
・「カ」「カ」「カ」「カ」「カ」「カ」…
②「パ」「タ」「カ」を1秒あたり6回未満だった場合はオーラルフレイルの疑い
これはオーラルフレイルの検査の一つ滑舌の検査です。「滑舌が悪い」の他にまたは“むせる「食べこぼす」「口が渇く」などの症状が増えていたら、お口の機能の低下「オーラルフレイル」の可能性があります。
お口は栄養摂取という重要な機能を持っています。このような“些細な口の衰え”のサインをほっておくと食べる機能が低下し健康トラブルにつながります。お口の機能低下による健康リスクとその予防について解説します。
ほうれい線、マリオネットラインは「お口の衰え」サイン!?
ほうれい線やマリオネットラインは、口回りの筋肉の衰えでも表れ始めます。ほうれい線や、マリオネットラインができていたらそれは、オーラルフレイルのはじまりかもしれません。
40代から始まる「お口の衰え」
年齢とともに「咀嚼力」「飲み込み力」「唾液分泌力」は低下することがわかっています。すると口腔機能の低下がみられるようになります。この機能低下で典型的なのは「硬いものが食べにくくなった」、「むせるようになった」「口の乾き」は、40代から自覚する方が増えていきます。
全身疾患のリスクを高める「オーラルフレイル
「オーラルフレイル」が肥満や糖尿病のリスクを高める
筋肉量の減少や栄養不足になる一方で、肥満のリスクもあります。肥満や糖尿病で通院している人を調べるとオーラルフレイルのリスクが高いことがわかりました。このような患者さんはうまく噛めていない可能性があります。やわらかい糖質中心の食事になりがちであること、うまく噛めていないことで急激に血糖値が上がるのではないかと考えられています。
「オーラルフレイル」が認知症のリスクを高める
咀嚼力の低下で噛む回数が減ると脳への刺激が少なくなり脳血流は減少すると言われています。また歯周病菌の毒が体内にまわることで認知症の危険因子にもなると言われています。
「オーラルフレイル」が誤嚥性肺炎のリスクを高める
唾液が少ないと食べたものを食塊にしにくい。食べたものは唾液がつなぎの役割を果たして塊にする。唾液が少ないとバラバラの状態で飲み込もうとするとむせてしまうのです。
オーラルフレイルで栄養失調!?
唾液には「口の中の食べかすや細菌を洗い流す」「食べたものを胃で消化しやすくする」「体の中に侵入しようとするウィルスや細菌を撃退する抗菌」と、3つの効果があります。オーラルフレイルの症状の1つ、唾液分泌量の減少が口内の虫歯菌や歯周病菌の増加や、食べたものの消化機能の低下、また味覚障害にもつながります。歯周病により歯の欠損がおこると咀嚼力はさらに衰えますし、消化機能や味覚障害がでると食べる量が減り栄養不足につながってしまいます。
オーラルフレイルが抗酸化物質力を低下させる
唾液には抗酸化物質が含まれています。抗酸化物質は体の組織にダメージを与え、老化を促進する活性酸素を打ち消してくれる物質です。歯周病による炎症がおきている歯肉には活性酸素が発生しています。すると、活性酸素が口の中の細胞や組織を傷つけ、病状を悪化させます。さらに「活性酸素は全身に回り、皮膚や内臓を老化させ、健康と美容の大敵です。唾液には、活性酸素から守る抗酸化物質が含まれています。唾液量が減り活性酸素の量が抑える力が低下することで様々なリスクにつながります。
オーラルフレイルを予防する対策
②食べ物を飲み込みやすくする【舌を動かす体操】
(1)舌を左のほほの内側に強く押しつける。
(2)自分の指で、口の中の舌の先を、ほほの上から押さえる。
(3)それに抵抗するように、舌をほほの内側に、ゆっくり10回押しつける。
(4)右のほほでも同じこと繰り返す。
③唾液を分泌を促す【唾液マッサージ】
(1)耳下腺マッサージ 指数本を耳の前(上の奥歯あたり)に当て、10回ほど円を描くよ うにマッサージしていく。
(2)顎下腺マッサージ 顎のラインの内側のくぼみ部分3~4か所を順に押していく。目安 は各ポイントを5回ほど。
(3)舌下腺マッサージ 顎の中心あたりの柔らかい部分に両手の親指を揃えて当て、10回ほど上方向にゆっくり押し当てる。
④咀嚼の回数を増やすために【正しい姿勢つくり】
猫背の状態でいると、ストレートネックと呼ばれる頚椎がまっすぐな状態となり、顎がリラックスできずに咀嚼がしにくくなります。
(1)背筋を鍛える
背筋のストレッチや筋トレを毎日の習慣にしていきましょう。
(2)ひと口30回噛む
背筋を伸ばし、右の歯と左の歯それぞれでよく噛んで食事をしましょう。歯が欠損しているは治療を、義歯で噛むことに不安がある人は、食事のときに安定剤を使用して、きちんと噛めるようにしましょう。この先の人生、健康で若々しく過ごすことができます。
オーラルフレイル予防のための「義歯」使用者注意点
義歯はメンテナンスを怠らず、歯科医院で調整
部分入れ歯が合わないと感じたら、入れ歯安定剤で安定させることが重要ですが、歯科医にも相談にいきましょう。「合わない入れ歯を使い続けると、噛む回数が減りやわらかいものばかり食べるようになります。オーラルフレイルや健康被害、そして栄養の偏りが生じてきます。入れ歯安定剤を使って安定させる他、歯科医院での調整も忘れないようにしてください。入れ歯を新しく作り替えることなく、現在使用中の慣れている入れ歯を調整することも可能です」
入れ歯安定剤はクリームタイプを
「入れ歯安定剤には、クリームタイプ、パウダータイプ、クッションタイプなどの種類があります。入れ歯の状況や使用シーンにあわせて選んでみてください。クリームタイプは厚みが出にくいこともあり歯科医が推奨しています。食べ物の挟まりなどが気になるときなどに使用するとよいでしょう。また、ノズルの細いタイプの製品は、量を調整しやすくはみ出しにくいので部分入れ歯の方におすすめです。本来入れ歯はピタッとフィットするように調整してつくられています。入れ歯安定剤はよくフィットした適合のよい入れ歯に使うことで、入れ歯を安定させ、よく噛んだり、食べもの挟まりの軽減などが期待できます。入れ歯がガタガタとガタつくような場合は、歯科医院で調整してもらいましょう。
教えてくれたのは…宝田恭子先生
宝田歯科医院院長。日本アンチエイジング歯科学会監事。歯周病治療・入れ歯治療などお口のアンチエイジング専門。 口元の筋肉を中心に表情筋を鍛えるエクササイズを考案。歯科医師の視点から「要支援」にならない体づくりを提唱す る。著書に『たるみが消える顔筋リフト宝田流表情筋トレーニング』(講談社刊)他
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ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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