唇がヒリヒリ・チクチクするときどう対処すれば良い?【口唇ヘルペス】治療薬の選び方|薬剤師が解説
いつの間にか、口角や唇にできたヒリヒリ、チクチクする症状。その原因は「口唇ヘルペス」かもしれません。この記事では、口唇ヘルペスについて解説します。
そもそもヘルペスとは?
ヘルペスとは皮膚や粘膜に小さな水ぶくれが集まった状態のことで、ヘルペスウイルスによる感染症のことを指します。一度ヘルペスウィルスに感染すると、症状が治まった後もウイルスが神経節(神経の繊維がたくさん集まっているところ)の中に潜伏し、免疫力が弱まったときに再発します。
なお、ヘルペスウィルスには、おもに1型と2型があり、1型は上半身に発症するタイプで、口唇ヘルペス、角膜ヘルペス、歯肉口内炎、咽頭炎、ヘルペス脳症などの原因となります。一方、2型ヘルペスは下半身に発症し、性器ヘルペス、臀部ヘルペスなどの原因となります。
口唇ヘルペスの症状
口唇ヘルペスは次のように症状が進行します。
①前兆……口角や唇にチクチク、ピリピリしたかゆみやほてりが出る。
②前兆から半日以内……患部が赤くはれる。
③1~3日後……腫れた場所に、水ぶくれができる。発熱など全身症状を伴うこともある。
④約1週間後……かさぶたになり、その後、数日で回復に向かう。
口唇ヘルペスを早く治すには、チクチク、ピリピリとした前兆を感じたときに、早めに治療を始めることです。なお、症状が長引くと痕(あと)が残りやすくなります。
一度感染すると一生のつき合いに
ウイルスは、自身で繁殖することができません。そこで人の体内に入り込み、細胞を利用して増殖していきます。口唇ヘルペスの場合、初感染後にウイルスが神経節に潜り込み、一生そこに住みつくという、他のウイルスにはない特性があります。
初感染時にウイルスに対する免疫がつくられるため、普段はウイルスの活動が抑制され症状は起こりません。しかし、ストレスや過労などにより、体の免疫力が低下すると、ウイルスが再び活性化し、痛みや水ぶくれなどの症状を引き起こします。
ただし、症状が出たときに適切な処置を行っていれば、再発の度に軽症化していきます。ヘルペスと上手につき合っていくことが大事です。
口唇ヘルペスの感染ルート
口唇ヘルペスは、人から人への感染力が非常に強く、全身のどこからでも感染します。口唇ヘルペスの発症時にできる水ぶくれの中には、膨大な量のヘルペスウイルスが増殖していて、患部に直接触れなくても、ウイルスが付着したものを触ることで感染します。
感染ルートは、
・患部を直接手で触ることから
・発症している人が使ったウイルスが付着したコップやスプーン、タオルなどから
・発症した人が触れたドアノブや取っ手などから
・幼少期の家族間感染により
・キスなどにより患部が触れたり、唾液から
などがあげられます。
ただし、感染するのは症状が出ているときだけで、ウイルスが潜伏しているときに感染者の皮膚に触れても感染することはありません。
口唇ヘルペスが再発する頻度
口唇ヘルペスの再発頻度は、平均で年に2回とされています。なかには、年に3回再発するという人も少なくありません。再発を引き起こす原因は、次のようなことがあげられます。
・ストレスや疲労が強いとき……免疫力が低下し、ウイルスへの抵抗力が落ちるため。
・強い紫外線を浴びたとき……強い紫外線は皮膚の免疫力を低下させるため。
・女性の場合、月経前……女性ホルモンの乱れにより、排卵後は、体調が崩れやすいため。
・薬剤の影響……抗がん剤、ステロイド剤、免疫抑制剤などにより抵抗力や免疫力が低下するため。
なお、口唇ヘルペスの再発率は、男性に比べ、女性は1.5倍ほど高いというデータがあります。
口唇ヘルペスを治療する市販薬
口唇ヘルペスの治療には、「アシクロビル」や「ビダラビン」という成分が含まれている市販の抗ウイルス薬を使用して治療できます。ただし、口唇ヘルペスの“再発時”に使用することと、購入時に薬剤師から使用法や副作用など注意事項の説明を受ける必要があります。
これは、口唇ヘルペスに似た症状が起こる別の病気の可能性があるためで、初診は皮膚科医などを受診し、口唇ヘルペスであることを確認する必要があります。
また、口唇ヘルペスの治療薬は「第1類医薬品」といって、購入時に“薬剤師”から使用上の説明を受けたうえで購入することが義務づけられています。これは、口唇ヘルペスの再発であることを確認したり、正しい使用法を指示したりするためです。
【口唇ヘルペス治療薬の製品例】
・「ヘルペシアクリーム」(大正製薬)
・「アクチビア軟膏」(グラクソ・スミスクライン)
・「アラセナS軟膏・クリーム」(佐藤製薬) など
まとめ
口唇ヘルペスは、ヘルペスウイルスによる感染症で、体の免疫力が低下したときに発症する病気です。唇がヒリヒリ、チクチクするといった兆候が現れたら、初診は皮膚科を受診、再発時には市販薬を使うこともできます。
また、口唇ヘルペスの兆候が現れたときは、免疫力の低下を知らせるサインだと考え、十分な休養や睡眠、バランスの良い食事を摂るなど日常生活でのケアをしっかり行うと良いでしょう。
AUTHOR
小笠原まさひろ
東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。
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