【皮膚病薬】夏は皮膚病が起こりやすい?皮膚病薬の正しい選び方と使い方|薬剤師が解説

 【皮膚病薬】夏は皮膚病が起こりやすい?皮膚病薬の正しい選び方と使い方|薬剤師が解説
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夏は高温多湿なうえ、紫外線の影響や多量の汗が原因となり、皮膚トラブルが起こりやすいといえます。この記事では、夏の皮膚トラブルと皮膚病薬の選び方などについて解説します。

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夏に皮膚病が起こりやすい理由

夏場は多量の汗をかくことで、汗に含まれるナトリウムや尿素が乾燥して結晶となり、皮膚を刺激します。また、強い紫外線の影響で皮膚の免疫力が低下。高温多湿の環境で菌が繁殖しやすくなるため、皮膚炎(湿疹)、あせも、かぶれなどの皮膚疾患が起こりやすくなります。

皮膚炎の症状

夏に起こりやすい皮膚トラブルの中でもっとも多いのは皮膚炎(湿疹)です。実は、皮膚炎も湿疹も呼び方が異なるだけで同じ病気です。皮膚炎の症状は、次のようなものがあげられます。

・皮膚の赤み
・ブツブツとした隆起
・強いかゆみ
・水ぶくれ
・皮膚のカサカサ、ザラザラ
・ただれ
・ジュクジュクする

汗疹

皮膚病薬の選び方

皮膚炎は発赤(皮膚の赤み)と強いかゆみの症状が起こることが多いので、かゆみを抑える「ステロイド剤」(副腎皮質ホルモン剤)という薬を使用して症状を和らげます。

ステロイド剤は、作用の強い順に、
「strongest」(もっとも強い)
「very strong」(とても強い)
「strong」(強い)
「medium」(普通)
「weak」(弱い)

の5段階に分けられます。

このうち、「strongest」(もっとも強い)「very strong」(とても強い)は、医師の処方箋が必要な医療用医薬品のため、市中で購入することはできません。薬局やドラッグストアなどで購入できるのは、「strong」(強い)「medium」(普通)「weak」(弱い)の3つのステロイド剤ということになります。

そうすると、市中で購入できるステロイド薬の中で、どれを選べば良いか、選択する必要が生じます。症状の程度にもよるのですが、スタンダードな使い方としては、まず、もっとも作用の強い、「strong」(強い)の薬を使用することをおすすめします。

皮膚炎の症状は、強いかゆみを伴うことが多いので、とにかくかゆみの症状を抑えることを最優先にします。「strong」(強い)の薬を使えば、2~3日、長くても1週間程度で症状は治まるはずです。それでも治らなければ、よほど症状が悪化しているか、別の皮膚病の疑いもあるため、皮膚科を受診してください。

まず始めに「strong」(強い)のステロイド薬を使い、症状が治まってきたら、「medium」(普通)や「weak」(弱い)のステロイド剤を使えば良いのです。これを、ステロイド薬の「ステップダウン療法」といいます。

「weak」(弱い)や「medium」(普通)の薬を使って、症状が改善しなければ、結局「strong」(強い)のステロイド薬を使うことになり二度手間になってしまいます。

また、その間に症状が悪化することも考えられます。ですから、最初から、「strong」(強い)のステロイド薬を使って、それでも治らなければ皮膚科を受診する、という対処法がもっとも合理的といえるのです。

【ステロイド薬(strong)の製品例】 

「フルコートf」(田辺三菱製薬)「リンデロンVs」(シオノギヘルスケア)「ベトネベートN」(第一三共)

皮膚病薬の使い分け

皮膚病薬には、油性成分の「軟膏」、水と油が混ざった「クリーム」、「液剤」の3種類があり、次のように使い分けます。

・「軟膏」……かき壊しのある場合に使用します。軟膏の油分が患部を保護します。
・「クリーム」……皮膚に傷がない場合に使います。塗りやすく使用感が良いのが特徴です。
・「液体」……患部の範囲が広いときや有毛部(毛が生えている部位)に使用します。

塗り薬の適量の目安と正しい塗り方

塗り薬は、大人の手のひら2枚分の広さに対して、軟膏、クリームで0.5g(チューブから押し出して、大人の人差し指の第一関節分の量)が目安です。液剤の場合は、1円玉大の量に相当します。

塗り薬は、量が少ないと効果がありませんが、多く塗っても効果が高まるわけではありません。また、ごしごしとすり込むと皮膚を傷つけてしまうので、患部に適量を均一に優しく塗り伸ばしてください。

塗る範囲が広い場合は、薬を人差し指につけ、ある程度の間隔を空けて数カ所、チョンチョンと置き、手のひらで広げるとまだらにならず均等に塗ることができます。

かけばかくほどかゆくなる!かゆみを止める方法

皮膚炎のかゆみを早く止めるには、とにかく“かかないこと”が大事です。皮膚をかくとかゆみは一時的に和らぎますが、刺激を与えることで炎症が悪化し、皮膚炎はさらに悪化します。すると、さらにかゆみが増す、かゆみが増すからさらにかく……という悪循環に陥ってしまいます。

もし、どうしてもかゆみが強く、薬がない場合は、氷嚢やビニール袋に氷を入れて患部を冷やすとかゆみが和らぎます。

皮膚病を防ぐ日常での予防法

夏の皮膚病を防ぐには、汗や汚れをこまめに洗い流すことが第一です。ただし、強く洗い過ぎると、肌を保護する角質まで傷つけてしまうので、優しく洗いましょう。また、肌の性質に近い弱酸性の石鹸やボディーソープは肌への刺激が少ないのでおすすめです。

そして、紫外線対策も重要です。強い紫外線は肌の免疫力を低下させ、肌の老化の原因にもなります。日焼け止めのクリームや日傘、帽子を使用し、日中は長時間の外出を避けましょう。

まとめ

夏は多量の汗や紫外線の影響で皮膚病が起こりやすいといえます。皮膚に皮膚炎(湿疹)が起きた場合は、もっとも効き目の強いステロイド薬(strong)を使用してください。それでも症状が改善しない場合は、別の皮膚病の疑いもあるため、皮膚科を受診してください。

どの薬を選べば良いか、分からない場合は薬剤師に相談して、適切な薬を正しく使いましょう。

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AUTHOR

小笠原まさひろ 薬剤師

小笠原まさひろ

東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。



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