【便秘薬】間違った使い方をすると悪化することも…便秘薬の種類と正しい選び方とは|薬剤師が解説
健康のバロメーターでもある“お通じ”ですが、便秘で悩む女性は多いもの。便秘薬は上手に使えば便秘の改善につながりますが、間違った使い方をすると腹痛や嘔吐が起きたり、便秘が悪化したりすることもあります。この記事では、便秘薬の種類や選び方、正しい使い方などを解説します。
便秘とは?
便秘とは、数日間排便がない、排便があっても硬くて出にくい、残便感がある、お腹が張って苦しいといった排便に伴う不快感がある状態のことをいいます。1日1回の排便が理想的ですが、2~3日に1回の排便でも、それがスムーズで不快感がなければ便秘とはいえません。
便秘のタイプ
便秘には、腸などの病気が原因で起こる「器質性便秘」と、腸などに異常はなく、腸のぜん動運動(腸が波打つように動いて便を送り出す働き)が悪くなって起こる「機能性便秘」とがあります。便秘の多くは「機能性便秘」で以下の3つのタイプに分けられます。
①「弛緩性便秘」
大腸が便を押し出す力が弱く、便の通過が遅れ、その間に水分が吸収されて硬くなります。女性や高齢者など腹圧(お腹の筋力)が弱い方に多く見られます。小さく丸く、コロコロとした硬い便や、それらがつながった硬いソーセージ状の便が出るのが特徴です。
②「けいれん性便秘」
おもにストレスによって大腸の一部に強い収縮やけいれんが生じて、便の移動が妨げられることで起こります。便秘と下痢を交互に繰り返したり、便の出始めは硬く、途中から下痢に近い緩い便が出るといった症状がみられます。
③「直腸性便秘」
便意をもよおす排便反射(直腸に来た便を送り出す神経の働き)という神経の伝達が鈍くなることが原因です。便意を我慢する習慣が続くことで起こりやすくなります。「便が出かかっているのに出ない」、「出口で詰まっている感じがする」 などが特徴です。
便秘薬の種類
便秘薬は、大きく「刺激性」と「非刺激性」の2つに分けられます。刺激性の便秘薬は腸に直接刺激を与え便の排出を促します。一方、非刺激性の便秘薬は便に水分を含ませて、便のカサを増やしたり、柔らかくしたりして排便をスムーズにします。
便秘薬の選び方
便秘薬は便秘のタイプによって使用すべき薬が異なります。自分の症状に合った薬を選んで使うことが大切です。
①弛緩性便秘の場合
弛緩性便秘には、大腸内の水分を多くして便のカサを増やす便秘薬(非刺激性)が効果的です。市販薬では、「酸化マグネシウム」、「プランタゴ・オバタ種皮」、「カスカラサグラダ乾燥エキス」、「ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DDS)」などの成分を含む薬を選ぶと良いでしょう。
【製品例】
「酸化マグネシウムE便秘薬」(健栄製薬)、「スルーラックマグネシウム」(エスエス製薬)、「コーラックファイバー」(大正製薬)、「新ウィズワン」(ゼリア新薬)、「オイルデル」(小林製薬)など。
②けいれん性便秘の場合
けいれん性便秘は、ストレスによる自律神経の乱れによるため、腸内環境を整える乳酸菌などの整腸剤が入った便秘薬を選ぶと良いでしょう。また、便秘薬ではなく整腸剤(医薬部外品)で症状が改善する場合もあります。
なお、けいれん性便秘では腸が過敏になっているため、刺激性の便秘薬を使うと激しい腹痛や嘔吐などの副作用が起こる恐れもあるので使用は避けてください。
【製品例】 「ビオフェルミン酸化マグネシウム便秘薬」(大正製薬)、「ウィズワンエル」(ゼリア新薬)、「太田胃散整腸薬」(太田胃散)、「ビオスリー」(アリナミン製薬)など。
③直腸性便秘の場合
直腸性便秘には、腸に直接刺激を与える刺激性の便秘薬を使用します。「ビサコジル」「ピコスルファートナトリウム水和物」「センナ」「ダイオウ」などの成分が入っている便秘薬を選ぶと良いでしょう。
また、漢方製剤は効き目が穏やかというイメージがあるかもしれませんが、実際にはそうとは限りません。
【製品例】 「コーラック」(大正製薬)、「スルーラック」(エスエス製薬)、「サトラックス」(佐藤製薬)、「センナ錠I」(井藤漢方製薬)、「タケダ漢方便秘薬」(アリナミン製薬)など。
これらの刺激性便秘薬を使用して腹痛が起きた場合は、非刺激性の便秘薬や整腸剤に変えてください。また、坐剤(座薬)タイプの便秘薬は、肛門に近い直腸だけに刺激を与えるため、痛みも少なく即効性も期待できるため、試してみるのも良いでしょう。
便秘薬の正しい使い方
作用の穏やかなものから使う
便秘で悩む方は、できるだけ早く便秘を改善したいという気持ちから、作用の強い刺激性の便秘薬を使おうとする傾向が見られます。しかし、腹痛や悪心、嘔吐などの副作用が起こることも多いため、作用の穏やかな“非刺激性”のものから使用してください。
飲むタイミング
一般的な便秘薬は寝る前の空腹時に服用してください。便秘薬は6~8時間程度で効果が現れるように作られています。大腸は夜に働く臓器のため、寝る前に服用することで、朝起きるころにちょうどお通じがくるようになります。また、排便習慣が夜の方は、その時間から逆算して6~8時間前に服用してください。
柔らかすぎる便が出たとき
便秘薬を使用して柔らかすぎる便が出たときは、便秘薬の量や飲む回数を減らすなど調節して服用してください。減らすことに問題はありません。
水かぬるま湯で飲む
便秘薬は牛乳と一緒に飲んではいけません。便秘薬は腸に届けて効かせるため、胃酸の影響を受けないようにコーティングされています。牛乳と一緒に飲むと胃酸が中和されコーティングが溶け、薬の成分が溶出してしまいます。水かぬるま湯で飲むようにしてください。
便秘薬を長期間使用すると効き目が悪くなる!?
便秘薬は長期間飲んでいると習慣になって、薬を飲まなければ排便がスムーズにできなくなったり、薬が効きにくくなったりすることがあります。しかし、効き目が悪くなったからといって、自分勝手に飲む量や回数を増やしてはいけません。
それは激しい腹痛や吐き気、嘔吐などの副作用が起きたり、腸の粘膜や神経がダメージを受け、便秘が重症化したりする恐れがあるからです。便が出ない状態が1週間以上続いたら医療機関を受診してください。
また、便秘薬の効き目が悪くなってきた場合は、違う成分の便秘薬に変えたり、しばらく服用をやめて、食生活の改善や運動、ストレスの解消など、便秘の根本原因となる生活習慣を見直したりしてみましょう。
まとめ
便秘薬は、便秘のタイプに合わせて自分に合った薬を選ぶことが大切です。コマーシャルで宣伝されているからといった安易な理由で選ぶのは考えものです。また、最初は作用の穏やかなものから使うようにしてください。
どのタイプの便秘薬が自分に合っているのか、分からない場合は、薬剤師や登録販売者に相談して助言を受け、用法・用量を守って正しく使いましょう。
AUTHOR
小笠原まさひろ
東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。
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