妊娠中から2歳までの「砂糖の摂取量」が60年後の脳の健康を左右する? 最新研究が示した「人生最初の1000日」の重要性

妊娠中から2歳までの「砂糖の摂取量」が60年後の脳の健康を左右する? 最新研究が示した「人生最初の1000日」の重要性
山口華恵
山口華恵
2026-08-17

「人生最初の1000日」という考え方が、近年、栄養学や発達医学の分野で注目されている。受胎から2歳頃までの約1000日間は、脳や体が急速に発達する重要な時期。この時期の栄養状態は、その後の健康にも長く影響すると考えられている。 そんな「人生最初の1000日」の重要性を示唆する研究結果が発表された。

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人生最初の1000日の砂糖摂取量が将来の脳の健康に関係?

中国・香港科技大学(広州)を中心とする研究者らは、英国の大規模データベース「UK Biobank」に登録された約6万5000人のデータを解析し、胎児期から幼少期にかけての砂糖摂取環境と、その後の脳の健康との関連を調べた。研究の手がかりとなったのは、第二次世界大戦中から戦後にかけてイギリスで実施されていた砂糖の配給制度だ。当時、成人の砂糖摂取量は1日約41グラムに制限され、2歳未満の子どもには砂糖や菓子の配給はほとんどなかった。しかし1953年に配給制度が終了すると、成人の平均砂糖摂取量は約80グラムへとほぼ倍増。子どもたちが甘いものを口にする機会も増えていった。この急激な変化によって、研究者らは「胎児期から幼少期を砂糖の少ない環境で過ごした世代」と「砂糖を自由に摂取できる環境で育った世代」を比較する、貴重な分析を行うことができた。

解析の結果、妊娠中から2歳頃まで砂糖の摂取量が少なかった人は、60年以上後の認知症やアルツハイマー病の発症リスクが低い傾向にあることが分かった。

妊娠中から生後1年間まで砂糖制限の影響を受けた人は、認知症全体を発症するリスクが21%低かった。さらに、妊娠中から2歳頃まで砂糖制限の影響を受けた人では、認知症のリスクが27%、アルツハイマー病のリスクが46%低かった。うつ病のリスクも11%、不安症のリスクも20%低かった。また、将来認知症を発症した人についても、幼少期に砂糖摂取量が少なかった人ほど、診断を受ける時期が遅かった。認知症全体では平均約2.6年、アルツハイマー病では約2.9年、診断時期が遅れる傾向がみられた。

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幼少期の砂糖摂取量が少ないと将来の脳の健康に良い影響がみられた

一部の参加者のMRI画像を調べたところ、幼少期に砂糖の摂取量が少なかった人は、実年齢より平均0.39歳若い脳を持つと推定された。さらに、記憶をつかさどる海馬や、情報処理に関わる視床の体積も比較的大きい傾向がみられた。こうした脳の特徴は、年齢を重ねても記憶や思考力を保つための「脳の余力」につながっている可能性がある。つまり、幼少期の砂糖摂取量が少なかった人では、将来の脳の健康を支える土台ができていた可能性が考えられる。

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脳の健康を育む「人生最初の1000日」

なぜ幼少期の砂糖摂取が、何十年も先の脳の健康に関係するのか。研究者らは、この時期の栄養状態が、将来の体の働きを左右する「代謝プログラミング」に影響する可能性を指摘している。砂糖を過剰に摂取すると、インスリン抵抗性や慢性的な炎症につながり、将来的な認知症リスクにも影響する可能性があるという。

ただし、認知症のリスクが幼少期の食生活だけで決まるわけではない。適度な運動を続け、野菜や果物、豆類、全粒穀物、魚などを取り入れたバランスの良い食事を心がけること、高血圧や糖尿病などを適切に管理すること、十分な睡眠をとること、人との交流や知的な活動を楽しむことも、脳の健康を守るうえで大切だ。子どもの頃の食生活を変えることはできない。でも、これからの生活習慣は今日からでも見直せる。人生最初の1000日が未来の脳の健康の土台をつくる時期だとすれば、その後の毎日の積み重ねも、その土台を支える大切な時間だ。今回の分析結果は、脳の健康づくりは高齢になってから始めるものではなく、人生のごく早い時期から始まっている可能性を改めて示している。

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出典:

Limiting Sugar Early in Life May Have Lasting Brain Benefits

Limiting Sugar Before Age 2 Reduces Risk of Dementia, Anxiety: Study

Cutting sugar up to age two associated with lower dementia risk ‘decades later,’ study finds

Low-Sugar Diet Early in Life Linked to 46% Lower Alzheimer's Risk

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