暑いのに汗をかけないのは危険?「汗が少ない人」が熱中症になりやすい理由〈医師が解説〉
真夏になると、「汗をたくさんかくから熱中症になりやすい」と思われがちです。しかし、実は注意が必要なのは、〈汗をあまりかけない人〉です。汗は体温を下げるために欠かせない働きをしています。そのため、暑い環境でも十分に汗をかけないと、体内に熱がこもり、熱中症のリスクが高くなります。今回は、なぜ「汗が少ない人」が熱中症になりやすいのか、その理由と対策について、医師がわかりやすく解説します。
汗は体を冷やすための「天然の冷却装置」
人は体温が上昇すると、汗腺から汗を分泌します。
汗が皮膚の表面で蒸発するときに熱を奪うため、体温を効率よく下げることができます。これを「気化熱」と呼びます。
つまり、汗をかくことは決して悪いことではなく、体温を一定に保つための重要な防御機能なのです。
反対に、汗が十分に出ないと体内に熱がこもり、体温がどんどん上昇してしまいます。
汗をかけない人ほど熱中症になりやすい
「汗をあまりかかない体質だから楽」と考える人もいますが、それは大きな誤解です。
暑い場所にいても汗がほとんど出ない場合、体温を下げる機能が十分に働いていない可能性があります。
その結果、以下のような症状が現れ、重症化すると意識障害を伴う熱中症になることもあります。
- 体温が上昇し続ける
- めまい
- 頭痛
- 吐き気
- 強い倦怠感
「暑いのに汗が出ない」という状態は、体からの危険信号と考えましょう。
加齢によって汗をかきにくくなる
高齢になると、汗腺の働きが徐々に低下します。
また、暑さを感じる感覚も鈍くなるため、
「まだ大丈夫」
「そんなに暑くない」
と思っているうちに体温が上昇してしまうことがあります。
そのため、高齢者は自覚症状が少ないまま熱中症になるケースが少なくありません。
室内でも安心せず、エアコンを適切に使用し、水分補給を心掛けることが大切です。
運動不足や冷房中心の生活も影響する
最近は一日中エアコンの効いた室内で過ごす人も増えています。
快適な環境で過ごすこと自体は悪いことではありませんが、暑さに触れる機会が少ない生活が続くと、汗をかく機能が十分に鍛えられません。
さらに運動不足が続くと汗腺の働きも低下し、暑い環境に適応しにくい体になります。
この状態では、急に炎天下へ出た際に体温調節が間に合わず、熱中症になりやすくなります。
日頃から適度な運動や軽い発汗習慣をつくることは、暑さに強い体づくりにつながります。
服用中の薬が原因になることも
汗が少なくなる原因として、薬の影響も見逃せません。
例えば、
- 抗コリン作用のある薬
- 一部の抗うつ薬
- 抗ヒスタミン薬
- 一部の精神科の薬
などは、副作用として発汗を抑えることがあります。
また、利尿薬を服用している人は脱水になりやすく、熱中症のリスクが高くなることがあります。
服薬中の方は、自己判断で薬を中止せず、夏場の体調変化について主治医や薬剤師へ相談することが大切です。
こんな症状は熱中症のサインかもしれない
暑い環境で、
⚫︎汗がほとんど出ない
⚫︎顔が赤く熱い
⚫︎めまいや頭痛がある
⚫︎吐き気や強いだるさがある
⚫︎意識がぼんやりする
このような症状があれば、熱中症を疑う必要があります。
特に汗が止まってしまった状態は、体温調節機能が限界に近づいている可能性があります。
涼しい場所へ移動し、水分・電解質を補給するとともに、症状が改善しない場合や意識障害がある場合は、すぐに医療機関を受診するか救急車を要請してください。
汗をかける体をつくるには
汗をかく力は、ある程度鍛えることができます。
日頃から、
ウォーキングなどの軽い有酸素運動を続ける
入浴で適度に汗をかく習慣をつける
暑さに少しずつ体を慣らす「暑熱順化」を意識する
十分な水分補給を行う
バランスのよい食事と十分な睡眠を心掛ける
ことが大切です。
特に梅雨明け直後や急に暑くなった時期は、体がまだ暑さに慣れていないため、無理をせず徐々に暑さに適応していきましょう。
まとめ
汗は体温を調節するために欠かせない「天然の冷却装置」です。そのため、「汗をかかない」「汗が少ない」ことは、必ずしも快適な体質ではなく、熱中症のリスクを高める要因になります。
加齢や運動不足、冷房中心の生活、服薬などによって汗をかく力は低下することがあります。暑いのに汗が出ない、めまいや強いだるさがあるといった症状は軽視せず、早めに涼しい場所で体を冷やし、水分・電解質を補給することが大切です。
今年の夏は、「汗をたくさんかく人」だけでなく、「汗をかけない人」こそ熱中症に注意が必要であることを覚えておきましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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