LGBTQ+が「子どもを持ちたい」を諦めなくていい社会へ。「ふたりパパ」として暮らすみっつんさんが語る、制度と家族の未来
スウェーデンで夫と息子さんと暮らし、「ふたりパパ」として子育てをするみっつんさん。 後編では、「子どもを持ちたい」と願ったときに直面した制度の壁や、スウェーデンで暮らす中で実感した“平等と公平”の考え方について伺います。家族の形にかかわらず、誰もが自分らしく生きられる社会とは──。みっつんさんの言葉から、そのヒントを探ります。
「子どもを持ちたい」と思ったときに立ちはだかった壁
───子どもを持ちたいと思ったとき、最初にぶつかった壁は何でしたか?
一番大変だったのは、日本語で得られる情報がほとんどなかったことです。
同性カップルが子どもを持つ方法には、養子縁組や里親、代理母出産(サロガシー)などがあります。それぞれ制度や手続きが異なり、必要な書類も膨大で、決して簡単な道のりではありません。
僕たちは代理母出産を選びましたが、どの国で行うのか、親権や国籍はどうなるのか、代理母出産のエージェンシーやIVFクリニック、卵子提供者、代理母とのマッチング、医療保険、法的手続きまで、本当に調べることばかりでした。
言葉の壁もある中で、一つひとつの書類に目を通し、実際に現地へ足を運んで話を聞き、夫と何度も話し合いながら、自分たちが進みたい方向を決めていきました。
僕がブログで発信を始めたのも、その経験があったからです。
「LGBTQ+の人が親になる」というテーマについて、当時の僕自身が「日本語でこんな情報があったら助かったのに」と何度も思ったので、同じように悩む誰かの道しるべになればと発信を始めたんです。
「子どもがかわいそう」という声に思うこと
───制度だけでなく、社会や人々の偏見による障壁もまだまだあるように感じます。「子どもがかわいそう」という声に対して、みっつんさんはどう受け止めていますか?
同性カップルだから子どもに悪い影響がある、という科学的な根拠はありません。もちろん、同性カップルにもさまざまな親がいますし、異性カップルにも子どもを傷つけてしまう親はいます。
大切なのは、親の性的指向や性自認(SOGI)ではなく「子どもをどう育てるか」だと思っています。
むしろ今は同性カップルが子どもを持つまでのハードルが高い分、僕の知る限りでは、みんな本当にたくさん悩み、準備を重ね、覚悟を持って親になっています。僕たち自身もそうでした。
子どもを迎え入れるにあたっていくつもの決断を迫られるたびに「こんなにも考えなければいけないことがあるんだ......」と心が折れそうになることもありました。でも一つひとつの困難を乗り越えるたびに、親としての責任や覚悟が備わっていったように感じます。
もちろん、僕も周囲の目は気になります。でも気になってしまう自分を否定するのではなく、認めた上で「自分の軸」を大切にするようにしています。
僕にとっての軸は、「子どもが健やかに育つこと」です。
その軸があるからこそ、誰に何を言われても、自分たち家族が大切にしたいことを見失わずにいられる。100人いれば、100通りの考え方があるので、自分たち家族が納得できる選択を大切にしたいですよね。
そして、それを支える法律や制度も、一日も早く整ってほしいと思っています。

家族の幸せは、それぞれが選ぶもの
───その考え方は、同性カップルだけでなく、多くの家族のあり方に共通することかもしれませんね。
本当にそう思います。例えば、「外で稼ぐのは男性」「家庭を守るのは女性」という役割分担が、その家庭にとって心地よいのであれば、それも一つの幸せの形です。一方で、共働きを選ぶ家庭もあれば、夫婦別姓を望む人もいます。
誰とどんな家庭を築き、どんな役割で生きていくのかは、本人たちが話し合って決めることです。それを社会が「こうあるべき」と法律や制度で縛ることには違和感があります。
誰もが、自分の人生を自分で選べること───。
それが豊かな社会につながるのではないでしょうか。そしてそのためには、制度の面でも「家族の形によって扱いが変わらないこと」が大前提だと思っています。
僕たちが求めているのは特別な権利ではありません。誰もが同じように家族を築ける権利です。結婚もそうですし、子どもを持つことを含めて「この家族は認めるけれど、この家族は認めない」という線引きがあるのはおかしなことです。
家族には、シングルマザー・シングルファザー、ステップファミリー、養子、里親、パパふたり、ママふたり、障がいを持つ家族、祖父母が親代わりの家族など、本当にさまざまな形があります。
その中で、一番大切にされるべきは「子どもの権利」ですよね。
どんな家族であっても平等に制度やサポートを受けられること。そして、子どもが安心して暮らし、教育を受け、帰る場所があること。その環境が保障されることが、結果として子どもの幸せにつながると思っています。
スウェーデンが大切にする「平等」と「公平」
───日本で、同性カップルが「子どもを持ちたい」と思ったときに、諦めなくていい社会にするためには何が必要だと思いますか?
「平等」と「公平」の両方があること。スウェーデンではこの考え方が社会全体の土台になっています。
例えば、男性同士は子どもを産むことができません。だから全員にまったく同じ制度を与えるだけでは、本当の意味で平等とは言えないんです。
同じ制度を利用できるようにすることが「平等」。一方で、一人ひとりの状況や違いに合わせて必要な支援を整えることが「公平」です。この二つが両輪として機能しているからこそ、多様な人が安心して暮らせる社会になるのだと思います。
───スウェーデンでは2009年に同性婚が認められました。そこから人々の価値観や「当たり前」も少しずつ変わってきたのでしょうか?
スウェーデンでは1970年代頃から、LGBTQ+に関する制度や社会のあり方が少しずつ変わってきました。その積み重ねの先に、2009年の同性婚がある、というイメージです。
その背景には、フェミニズムの存在がとても大きかったと言われています。
当時のスウェーデンでは、「男女平等」を目指すフェミニズムと、「ジェンダーやセクシュアリティによる生きづらさをなくしたい」というクィアコミュニティが、お互いを支え合う関係でした。
女性だけの問題でも、LGBTQ+だけの問題でもなく「すべての人が平等に生きられる社会をつくる」という目標を共有していたんです。
だから、同性婚だけを切り離して考えるのではなく、男女の賃金格差をなくすことや、父親も同じように育児休暇を取得できることなど、一つひとつが全部つながっています。
───「社会全体をより平等で公平にしていこう」という大きな流れの中に、同性婚も位置づけられているんですね。
そうですね。なので前編でも触れましたが、息子の小学校でも「レインボーウィーク」があるように、LGBTQ+だけでなく、国籍や文化、障害なども含めて、「さまざまな背景を持つ人がいて、一人ひとりに価値がある」ということを子どもの頃から学んでいます。
「誰か特定の人を理解しよう」という教育ではありません。「みんな違う。でも、一人ひとりに価値がある」という考え方。それがスウェーデンで大切にされている社会のあり方なのだと思います。

必要なのは「自分の人生を、自分で選べる」社会づくり
───いま「自分も親になりたい。でも無理かもしれない」と思っている日本人、日本に住んでいるLGBTQ+の人に向けて、メッセージをお願いします。
僕が大切にしているのは、「自分の人生は、自分で決める」ということです。
同性カップルが子どもを持つまでには、今も多くのハードルがあります。実際に動き始めても、経済的なことや制度の壁など、さまざまな理由から断念せざるを得ない人もいると思います。でも、どの決断も、自分で調べて、考えて、トライしたのなら、後悔も少ないはずです。
もちろん、個人の努力だけではどうにもならない問題はたくさんあります。だからこそ、誰もが「平等」で「公平」に生きられる法律や制度を整えていく。その上で初めて、一人ひとりの「こんなふうに生きたい」「こんな家族を築きたい」という願いが実現していくのだと思います。
ただ、社会を変えると言っても、いきなり大きなことをする必要はなくて。自分にできることを、できる範囲で続けていけばいいと思っています。
例えば、LGBTQ+に関する制度について自治体へ意見を届けてみること。あるいは、幼稚園で「うちはふたりパパなんです」と伝えてみるところから、地域も変わっていくかもしれません。小さな積み重ねが、社会の当たり前を少しずつ変えていくこともあると思うんです。
まずは自分自身をいたわること。心と体を大切にすること。その愛情が、家族へ、身近な人へ、そして少しずつ社会へと広がっていけばいいなと思っています。
Profile:ふたりぱぱ みっつんさん

スウェーデン人と日本人の同性婚ファミリーYouTuber。同性パートナーと結婚し、スウェーデンで子育てに奮闘する様子をYouTubeチャンネル「ふたりぱぱ」で発信している。代理母出産により男児を授かり、夫の故郷スウェーデンへ移住。ゲイが子どもを持ちたい時、ゲイが子どもを授かる方法、サロガシー(代理母出産)のプロセスなど、ゲイカップルが子どもを授かるまでの“旅”をリアルに語るエッセイ『ふたりぱぱ: ゲイカップル、代理母出産(サロガシー)の旅に出る』(現代書館・刊)」が書籍化。2026年7月には、うずめ劇場『平和』広島公演に息子のLokiと出演。7月24日(金)〜26日(日)は広島城北堀公園、7月28日(火)〜29日(水)は道の駅世羅にて上演予定。
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