「家族とはこうあるべき」を手放してみる。スウェーデンで「ふたりパパ」として暮らすみっつんさんが見つけた、新しい当たり前
結婚や出産、子育て。「家族はこうあるべき」という思い込みを、私たちは知らず知らずのうちに抱えてしまっているのかもしれません。スウェーデンで夫と息子さんと暮らし、「ふたりパパ」として子育てをするみっつんさんに、家族の形をもっと自由に考えるヒントを伺いました。
ゲイの自分には「結婚も子どもも無理」と思っていた
───ご自身は、いつ頃から結婚や子どもを持つ人生を想像していましたか?
正直、若い頃は「家族を持つこと」を諦めていました。日本ではまだ同性婚は認められていないですし、同性カップルが子どもを持つハードルもすごく高い。でもそんな考え方が大きく変わったのは、現在の夫であるスウェーデン出身のリカと交際を始めてからです。
僕たちは東京で出会ったんですが、交際をする中で彼のロンドン転勤が決まって、僕も一緒についていくことにしたんです。結婚を決めたのは、そのときでした。
スウェーデンでは2009年に同性婚が認められていたので、「一緒に人生を歩みたい」という気持ちを、制度が後押ししてくれた。その安心感は、やっぱり大きかったですね。
───結婚後、子どもが欲しいと思ったのには、どんなきっかけがあったのでしょう?
ロンドンで友人の家を訪れたとき、「ふたりママ」の家族に出会ったんです。同性カップルが子どもを持つことは知識としては知っていましたが、実際に目の前で子育てをしている姿を見るのは初めてで、自分たちにもそんな未来があるのかもしれない、と希望が湧いたことを覚えています。
さらに、夫の妹に子どもが生まれたことも重なりました。「もし自分たちにも子どもがいたら、どんな毎日になるだろう」そんな話を、ふたりの間で自然とするようになっていきました。
日本にいた頃は、「結婚も子どもも、自分には関係のない話だ」と諦めていたんです。でも、いろいろな出会いや出来事が重なる中で、しぼんでいた気持ちが、希望で膨らんでいくような感覚がありましたね。

「ふたりパパ」が特別ではないスウェーデンでの子育て
───その後、アメリカでの代理母出産(サロガシー)を通じて授かった息子さんと3人での暮らしが始まります。スウェーデンでは、「ふたりパパ」の家族はどのように受け止められていますか?
正直に言うと、壁はほとんど感じません。だから「受け入れられている」という感覚すらないんです。特別扱いされることもなく、気負う必要もなく暮らしています。
例えば病院では「お母さんは?」と聞かれることもあります。でも「うちはパパが二人なんです」と伝えると、「そうなんですね」で終わります。社会全体としてはパパとママの家庭が多いので、その質問自体は自然なことです。でも、そこで説明を求められたり、驚かれたりすることはないですね。
婚姻制度をはじめ、性別を前提にしない表現や仕組みが取り入れられている場面も多く、「同性カップル」や「ふたりパパ」であることを、日常の中で意識する場面はほとんどありません。
婚姻の書類は「妻・夫」ではなく、「パーソン1・パーソン2」。学校の書類も「父・母」ではなく「保護者1・保護者2」となっています。最初からさまざまな家族のあり方が前提になっているので、「自分たちもそのままでいい」と思える安心感があります。
───制度そのものが、多様な家族を前提につくられているんですね。
学校でも、息子が特別扱いされることもありません。
幼稚園の頃は、お友達から「本当にママいないの?」と無邪気に聞かれることがありました。でも息子が「パパが二人いるよ」と答えると、先生が「そうだね、いろんな家族がいるね」と声をかけ、子どもたちも「そうなんだ!」と自然に受け止めて終わる。人と違うことがネガティブな意味で捉えられることがないんです。
息子が通う小学校では、LGBTQ+だけでなく、国籍や文化、障害なども含め「さまざまな背景を持つ人がいて、一人ひとりに価値がある」ということを学ぶ「レインボーウィーク」が設けられています。
この1週間は、さまざまな授業で多様性について取り上げられ、最終日には学校のみんなでレインボーパレードも行われます。子どもたちは、多様な社会を自然に学んでいくんです。
僕自身、スウェーデンでの暮らしの中で「新しい当たり前」に触れるたびに、人として、親として、自分の中の思い込みも少しずつほどけていったような気がしますね。

「あなたは愛されて生まれてきた」と伝えること
───素敵ですね!ご家庭では、息子さんに家族の成り立ちをどのように伝えてきたのでしょうか?
一番大切にしてきたのは、正直に話すことです。
子どもを迎える準備をしていた頃、IVF(体外受精)クリニックで心理士によるカウンセリングを受けた際、「お子さんには出自について伝える予定ですか?」と聞かれました。男二人では自然に子どもが生まれるわけではありませんし、隠し続けられることでもない。だから最初から、きちんと伝えようと決めていました。
そこで教えてもらったのが、「子どもの年齢や理解力に合わせて伝える」という考え方です。「3歳になったらこれ、5歳になったらこれ」と区切るのではなく、子どもの成長に寄り添いながら、少しずつ正直に話していく。
実はこれは、スウェーデンの包括的性教育にも通じる考え方なんです。だから僕たちも、出自を特別なこととして隠すのではなく、息子の成長に合わせて自然に伝えていこうと思いました。
───実際に息子さんには、どのように伝えたのですか?
息子の場合は、代理出産でお世話になった女性が、妊娠中から出産までの記録を一冊のアルバムに残してくれています。
そこには写真だけでなく、「なぜあなたを産もうと思ったのか」「なぜ僕たちが親になるお手伝いをしたかったのか」という想いを綴った手紙も入っています。大人になってから読んでもいいようにと書いてくれた、とても大切な宝物です。そのアルバムは、いつでも息子が手に取れる場所に置いてあるんですよ。
初めて一緒にそのアルバムを開いたのは、息子が4歳のときでした。
幼稚園で「赤ちゃんはお母さんのお腹の中で育って生まれてくる」と学んだ日の帰り、「じゃあ、僕はどうやって生まれてきたの?」と聞いてきたんです。
今が伝えるタイミングなんだな、と感じてアルバムを開きながら「あなたはこうやって生まれてきたんだよ」と話しました。翌年、5歳になったときには、アメリカに代理母の方にも会いに行きました。今でも連絡を取り合う関係で、親戚のようでもあり、家族のようでもある、僕たちにとって大切な存在です。
彼女がいなければ息子は生まれてきませんでしたし、卵子提供をしてくださった方も含め、本当にたくさんの人の愛とサポートがあって、息子は生まれてきたんだと感じています。10年経った今でも、その思いは変わりません。
だから息子にも、「あなたはたくさんの人の愛情を受けて、この世界に迎えられたんだよ」ということを、これからも正直に伝え続けていきたいと思っています。
家族の形に、たった一つの正解はない
───「家族とはこうあるべき」という固定観念に縛られ苦しくなっている方に向けて、メッセージはありますか?
僕たちのYouTubeをご覧になった方から、「家族はこうあるべきだと思っていたけれど、そうじゃなくてもいいんですね」という声をいただくことがあります。僕自身も、長い間「当たり前」に縛られていたので、その気持ちはよくわかります。
だからこそ、僕たちの日常を通して「自分は本当はどう生きたいんだろう」「どんな家族を築きたいんだろう」と、一度立ち止まって考えるきっかけにしてもらえたら嬉しいですね。
家族の形に、たった一つの正解はありません。
大切なのは、「普通」に合わせることではなく、自分たちが選び、育んできた関係を信じること。その積み重ねこそが、それぞれにとっての「家族」をつくっていくのだと思います。
Profile:ふたりぱぱ みっつんさん

スウェーデン人と日本人の同性婚ファミリーYouTuber。同性パートナーと結婚し、スウェーデンで子育てに奮闘する様子をYouTubeチャンネル「ふたりぱぱ」で発信している。代理母出産により男児を授かり、夫の故郷スウェーデンへ移住。ゲイが子どもを持ちたい時、ゲイが子どもを授かる方法、サロガシー(代理母出産)のプロセスなど、ゲイカップルが子どもを授かるまでの“旅”をリアルに語るエッセイ『ふたりぱぱ: ゲイカップル、代理母出産(サロガシー)の旅に出る』(現代書館・刊)」が書籍化。2026年7月には、うずめ劇場『平和』広島公演に息子のLokiと出演。7月24日(金)〜26日(日)は広島城北堀公園、7月28日(火)〜29日(水)は道の駅世羅にて上演予定。
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