「性はレインボー。最終的にはLGBTという言葉すらなくなってしまえばいい」IGが語る性と未来

 「性はレインボー。最終的にはLGBTという言葉すらなくなってしまえばいい」IGが語る性と未来
Azusa Hasegawa

有名アーティストのバックダンサーとして華やかな20代を過ごし、怪我をきっかけにヨガの指導者の資格を取得、その後渡米し現地で飛び込んだオーディションで、歌姫レディー・ガガのMV用バックダンサーに合格。コロナ禍で帰国中の今は、自身が考案した「セクササイズ」でテレビ出演も実現。順風満帆のように見えるダンサーIG(アイジ)さんの人生ですが、過去には、自身のセクシャリティに悩み、自分を否定し続けた時代も。初エッセイ「本気で生きるって気持ちよくな〜い?」を出版したIGさんに「本気で生きると決めた日のこと」を伺いました。

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自分は周りと違う。そう気づいた時に芽生えた最初の気持ちは「罪悪感」だった

――TBSの「Let’s!美バディ」でのキュートなレオタード姿や、エクササイズ中に次々と飛び出すポジティブワードで、とても明るい印象があります。子供の頃からポジティブな性格でしたか?

IG(アイジ)さん:全然〜! たしかに小学生の頃は、元気でひょうきんな子供だったの。変わったのは中学生に入って自分のセクシュアリティに気づいてから。「自分は周りと違う」と思い出してからは、とにかくそれがバレないように隠し続けてた。理由は、いじめられたくなかったから。周りにそういったことが理由でいじめられてる子もいたから、余計「隠さなきゃ」って思ってたよね。ずっと本音を隠して自分を偽り続けてた。

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あとは親に対する「罪悪感」だよね。「お父さんお母さん、こんな風になっちゃってごめんなさい」みたいな。本当は悪いことでもないし、誰のせいでもないのにね〜。それでも中学・高校はなんとか乗り切れたの。それは、怒りをぶつけるところがあったからかな。自分を責めながらも親にあたったり、学校のせいにしたりして吐け口を探しながら、なんとか毎日を過ごしてた。今思うとダサいなって思うし、甘えてたなって思う。

本当に壊れたのは大学に入ってから。大学生にもなると、誰のせいにもできないじゃない? 自分で楽しいことを見つけていかないといけない。なのに、自分を偽り続けてるから、合コンにもサークルにも恋愛にも何も興味が持てなくて。大好きだったダンスにさえときめかなくなっちゃった。すると、だんだん夜眠れなくなっちゃって、一睡もせず気づけば朝、みたいな日々が続いて、ついに鬱になっちゃったの。

――今のIGさんからは想像がつかない、壮絶な時代があったんですね。それはどうやって乗り越えたのですか?

IGさん:病院に行って薬をもらったりもしたんだけど、私にはあまり効かなくて、結局救ってくれたのはダンスだった。引きこもっていた分、エネルギーだけはすごく溜まっていたんだよね。それである時ダンスをしたら、そのエネルギーが爆発する感じですっきりして! ダンスしている間は何も考えなくてすむし、純粋に楽しい。それでダンスすると体が疲れるでしょ? 少しずつ夜も眠れるようになったの。「朝になると起きて夜になると寝る」という当たり前のことが、人間の基本で一番大事なことだと気付かされたんだよね。

IG

セクシャリティはひとりひとり違う「個性」。「何者でもない私」を愛してあげて

――今、日本でもセクシャリティに関する活動や議論が活発になっています。それに関してIGさんはどう思っていますか?

セクシャルマイノリティを総称する言葉として「LGBTQIA+」という言葉が浸透してきて、理解が深まってきていることは昔に比べるとすごくいいことだと思う。でもアタイが注目してもらいたいのは、LGBTQIA+の「+」部分。それは、LGBTQIAだけではカテゴライズできない性がまだまだあるってこと。マジでいろんな人がいるから! 例えば私はジェンダーでは女性寄りだけど少しは男性の部分もある。女性の格好も好きだけど、男性としての自分の体も嫌いじゃない。セクシャリティってマジで一人一人違ってて、グラデーションでレインボーだから! ジャンルなんてどんどん細分化できちゃうし、それでもどこにも属せないという人もいる。今「自分は男か女か。恋愛対象は誰なのか」って苦しんでいる人がいたら、「何者でもいい、何者でもない。無理に解決しようとしなくていいんだよ」って言ってあげたいな。

――そうですね。IGさんのお話を聞くと、「ストレート」もたくさんあるセクシャリティの中のひとつのジャンルにすぎないのかな、と思います。

そうそう! だから「カミングアウト」という言葉もおかしいよね。ストレートの人が「私は異性が好きです」とかわざわざ公言しないじゃない? あと友達と遊んでいる時に急に「実は私、異性が好きなんだよね」なんて言うこともないし。セクシャルマイノリティだからって、自分がしたくなければ、カミングアウトする必要はないと思う。カミングアウトしなくてもいい、さらにはカテゴリなんて存在しない時代がくればいいな、って本気で思ってるんだよね。

IG(アイジ)プロフィール

IG

日本とアメリカを拠点に活動するダンサー、振付師、セクササイズクリエイター、ヨガインストラクター(RYT500取得)。現在はTBS「 Let's!美バディ」美バメンとしてレギュラー出演中。自身が考案した「セクササイズ」がSNSから人気に火がつき、大ヒット。また2021年6月には初の著書『本気で生きるって気持ちよくな〜い?』(双葉社)が発売に。公式youtubeでセクササイズを配信中!instagram@ig_sexercise

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Text by Tomoko Minagawa
Photos by Azusa Hasegawa
Special thanks to Yuki Yamamoto

AUTHOR

ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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