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研究で明らかに！「更年期症状の度合い」が認知機能に影響？認知症リスク軽減のために今できることは？

山口華恵 2025-04-26

「最近、物忘れが増えたかも」「夜なかなか眠れない」「些細なことでイライラする」——これらの変化は、年齢相応のものだと片付けてしまいがちだ。しかし、最新の国際研究によると、更年期に経験する症状の数が多い女性ほど、後年における認知機能の低下や心の健康の変化と関連している可能性があることがわかった。

更年期症状を多く経験した女性は「物忘れや気分の不安定さ」などのリスクが高まる傾向

今回の研究結果は、英エクセター大学とカナダのカルガリー大学が中心に行った「CAN-PROTECT（脳の加齢について調査するカナダの大規模な研究）」で、896人の閉経後の女性を対象に行われたものである。更年期症状としては、不眠、抑うつ気分、記憶力の低下などが挙げられ、これらの更年期症状を多く経験した女性は、後年の「物忘れ」「集中力の低下」「気分の不安定さ」などのリスクが高まる傾向が見られた。

女性の脳は「更年期の影響」を受けやすい

この研究では、更年期症状が1つ増えるごとに、将来の認知機能や精神面での健康指標が悪化する可能性が示唆された。一方、ホルモン補充療法（HRT）を受けた女性は、感情面での変化（たとえば無気力や不安定さなど）が少なかったと報告している。ただし、ホルモン補充療法が記憶力や思考力にまで明確な効果を及ぼしたかについては、統計的な有意差は確認されなかった。つまり、「気分」には効果があっても、「記憶」までははっきりとは改善されなかった。研究を主導した精神科医で神経科学者のザヒヌール・イスマイル博士は、「更年期の症状の“数”だけでなく、“重症度”が将来的な脳の健康に影響している可能性もある」と指摘し、さらなる研究の必要性を強調している。

認知症のリスクを減らすために今できること

この研究がすぐに「更年期＝認知症のリスク」と結論づけるものではない。しかし、女性の3人に1人がアルツハイマー型認知症を発症する可能性があると言われている現代、私たちが日々の生活でどのように自分の体と心に向き合うかが、大きな意味を持つ。医学的には、「エストロゲン（女性ホルモン）」が脳を守る働きをすることが知られており、閉経によってこのホルモンが大きく減少することで、脳の老化が進みやすくなる可能性もあると考えられている。では、具体的に何を心がければいいのだろうか？米フロリダ州のヘルスマーカス神経科学研究所の神経内科医のピーター・グリーバス博士は、「心臓に良い生活が脳にも良い」と語る。ウォーキングなどの有酸素運動、睡眠の質を上げる工夫、そしてストレス管理は、すべて脳の健康にも直結する。また、地中海式やMINDダイエットなど、抗酸化作用のある食品や健康的な脂質を取り入れる食事スタイルも注目されている。

必要に応じて医療の力を借りることは、健康的な老年期への第一歩

今回の研究の大きなメッセージは、「更年期のつらさを見過ごさないで」ということ。長年の女性ホルモンの働きが少しずつ変わり、体も心も揺れる時期だが、だからこそ自分自身に寄り添い、ケアすることが大切になる。ホルモン療法を選ぶかどうかは人それぞれだが、「つらいのは私だけじゃない」と思えたり、「ケアしていいんだ」と思えたりすることで、未来の自分の健康に一歩近づけるかもしれない。カルガリー大学のイスマイル博士はこう語る。「更年期症状は人生の自然な一部ですが、その影響は長く続く可能性があります。自分自身の心身の変化に気づき、必要に応じて医療の力を借りることは、健康的な老年期への第一歩です」。つらさのサインを見逃さず、体と心に優しくあることで、将来の自分への“投資”になる。これは「今のあなた」だけでなく、「未来のあなた」のための選択でもあるのだ。