「ずっと一緒にいたい」性的な関係を持たない人たちが選んだ、4人のパートナーシップのかたち

むらかみさんよりご提供
むらかみさんよりご提供

性的マイノリティとして認知度が高いのはLGBTですが、それ以外にもさまざまなセクシュアリティがあります。たとえば他者に性的欲求が向かない「アセクシャル」です。アセクシャル当事者のむらかみさんは、クィア・プラトニック・リレーションシップというアセクシャル4人のパートナー関係のようなものを組んでいるとのことです。仲良しグループとは何が違うの?どうやって4人は集まったの?組むときに大切にした価値観は?……疑問にお答えいただきました!

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クィア・プラトニック・リレーションシップとは

——むらかみさんが4人で組まれているクィア・プラトニック・リレーションシップ(QPR)とはどういったものなのでしょうか。

性的マイノリティによる性的関係のない繋がりという意味です。

QPR=複数人というわけではなく、私はたまたま4人で組んでいて、今3年半くらいになります。ネット上の発信を見る限りでは、2人で組んでいる方もいらっしゃると思います。

——仲良しグループとは違うのでしょうか。

中長期的に仲良くしていきたいという意思疎通が取れていることが、友達との一番の違いだと思います。

一般的にも「約束」を大切にしている方は多いですよね。たとえばデート的なことをしていて、性的な関係もあったとしても「付き合う」という言葉がないことで、私たちの関係ってなんなの?という話になることもあるように。

仲良しな友達同士で「ずっと友達だよね」と言い合ったりするものの、環境が変わると会う回数が減ってしまい、気づいたら距離のある関係に……なんてこともあります。

でも私たちは自然消滅はやめようと話しているんです。そこが友達とは違って、マジョリティの人たちの交際における約束と変わらないのでは、と思っています。

——むらかみさんはQPRを知っていて、自分にも合いそうと思ったのでしょうか?

最初はQPRという言葉を知らなかったんです。海外ドラマの『POSE』という作品で、トランスジェンダーの人たちが、大人同士で家族のようなものを形成する様子が描かれているのを見て、「家族って作れるんだ」と思ったことが始まりです。

家族を作るなら、私は一対一ではなく複数人がよかったので3人に声をかけました。声をかけた後で、QPRという言葉を知り「私たちの状態と相違がないよね」という話になって、「私たちはQPRを組んでいる」という言い方をすることにしました。

むらかみさんが描かれた漫画(ご本人よりご提供)
むらかみさんが描かれた漫画(ご本人よりご提供)

——4人は最初から知り合いだったのですか?

いえ、私は3人とは面識がありましたが、ほかの3人はそうでもなかったです。

1人(Aさん)は私がアセクシャル向けのコミュニティスペースを始めるより前から知り合いで、2人(BさんとCさん)はコミュニティスペースの最初の頃に来たお客さんでした。お客さんとして来てくれた人の中で、仲良くなりたいと思った7人くらいとバーベキューをしたり遊びに行ったりしていて、2人はそこで顔を合わせていました。

なので声をかけ終えた状態では、「初めまして」な人同士もいましたし、BさんとCさんも2回会った程度でした。

——自分以外の3人がもし合わなかったら、といった不安はなかったのですか。

コミュニケーションのバランスのようなものを踏まえて、4人でうまくいきそうかをイメージして声をかけました。私ともう1人はおしゃべり好きで、あと2人は聞き上手なんです。

もちろん3年半の中では思ってもみなかったこともありました。でも誰かが強く言い過ぎたときに、別の誰かが諭してくれたり、各々の得意なことを担っていく関係性ができて、いい4人で集まれたと日々噛みしめています。

——4人だからこその良さはありますか?

私は一対一の関係性で、自分ばかり話して相手が開示してくれないと、どうして話してくれないんだろう?と寂しさを感じたことがありました。

4人だとあまり自分のことを話さない子がいることも、自分がたくさん話すことも、俯瞰して見られるようになって、悩まなくなりましたね。

誰か1人から「早く返した方がいいかも」と思う連絡が来たけど仕事で手が離せない…みたいなとき、他の子が返してるのを見たら、とりあえずほっとするということもあります。自分が他者に対して100%背負う必要がない部分については、4人で良かったと感じます。

QPRを組むなら意識したいこと

——QPRを組むにあたって、確認しておいてよかったことはありますか?

自分の中でなぜQPRを組みたいのかが明確だったことですかね。世間では少数派である「プラトニックな関係を複数人で結ぶ」にあたって、どういうことを望んでいるからQPRを組みたいのかをきちんとわかっておくことで、声をかける相手ともズレが少なくなると思いましたし、人に説明するときもスムーズだと感じました。

——4人の中でアセクシャル(他者に性的欲求が向かない)であることは共通しているものの、ロマンティック(恋愛感情)の部分は違いがあるということですよね。そこで将来的にライフプランに相違が出てくる可能性は話し合ったのでしょうか?

私たちの中には、他者に恋愛感情が向く人もいて、本人から「好きな人ができたらどうすればいい?」と聞かれました。私たちの中では現状「別にいいんじゃない?」という話になっています。

私たち4人は、生まれたときに割り当てられた性別は女性で、その子は男性に恋愛感情を抱いて、ほかの3人に恋愛感情が向くことはないということだったので、4人の関係性としては変わりませんし。

仮に好きな男性ができたとして、その人が「QPR抜けてよ」と言ってきたら、そのとき話し合えばいいんじゃないかって。……そういうこと言う人はどうなんだ?とも思うんですけどね(笑)。ほかにも何かしら抜けたい理由が出てきたときには「話し合おうね」ということは確認し合っています。

例えば家族の中で子どもが「結婚して新しい家庭をつくります」となっても、その人と親・きょうだいが家族であることには変わりないのと同じ感覚です。なので、QPRの中で誰かが一対一のパートナーシップを結んだとしても、私たちと距離を置かなきゃいけない理由はなくて。「居場所」のひとつとして関係を続けていけるのではと思っています。

——4人でどのくらいの頻度でコミュニケーションをとっているのですか。

月に1回は会っています。元々仲良しだった4人で組み始めたわけではないので、最初はお互いのことを知って仲良くなるためにも、月1回は会って遊んだり、ご飯に行ったりしようと話していました。今も月1回会うくらいがちょうどいいので、頻度は変わっていないです。

日頃の連絡はグループLINEを作って、週1ぐらいで連絡を取り合っていますが、毎日はやり取りしないですね。たとえば、私がキャンプに行ったときに「キャンプ楽しい!」って写真を送ったり、今推し活楽しんでる!みたいな報告が送られてきたり。

みんな自分が送ったときに、「返信不要」ってつけがちなのも私たちの特徴かもしれません。誰かに共有したいだけで、丁寧なレスポンスがほしいわけじゃないんです。なので、リアクション機能(長押しで小さなスタンプを押す)だけで反応して、おしまいなことも多いです。

この点、QPRを組むにあたって、連絡したい頻度や会いたい頻度を確認したのはよかったです。そこがズレると「もっと会いたい」「もっと連絡したい」とトラブルにつながってしまうこともあると思うので。

一緒に過ごす中でわかることもある

——一緒に過ごす時間が増える中で、衛生観念の違いが気になることはないのでしょうか。

4人の中で違いを感じることはあるのですが、QPRを組んだ時点で、一緒に住むことをゴールにしていなかったので、衛生観念は最初に確認しなかったです。

旅行やバーベキューなど一緒に食事をする場では、ズボラ側が綺麗好きに合わせようという気持ちにはなります。ただ、これは単発的なことだから無理なく成立しているのかもとは思います。

——金銭感覚はいかがでしょうか。

金銭感覚も大きくは離れてはいないですね。たとえば1食3万円のフレンチに頻繁に行きたい人は、4人の中にはいないです。

ただ、私が「ちょっとした贅沢」くらいのカフェには行きたい人で、「カフェに行くお金がもったいない」という価値観の人だと一緒に楽しめなくなってしまうので、そこは声をかけるときに気にしました。

——緊急連絡先をお願いし合えるくらいの距離感ではあるのでしょうか。

そういう話もしています。もし事故や病気で急に連絡がつかなくなって、どうしているかもわからなくなるのは嫌だから、免許証に連絡先を貼っておくとか、スマホのメモのわかりやすいところに入れておくとか対策を話し合ったりしました。

ただ最初からそういう約束をしていたわけでも、QPRを組むなら全てをオープンにしようという話でもなく、一緒に過ごす中で、信頼できるなと思うことが増えて、フルネーム・電話番号・住所……と少しずつ明かしていきました。

——むらかみさんは、親しい人であっても性的なことでなくとも、他者との接触が苦手なのですよね。それは3人とも一緒なのでしょうか。

私は美容室や整体みたいに、必要性がわかる接触は平気なのですが、手をつなぐことなど、スキンシップ的な接触をする意味がわからないんです。意味がわからないので、したくないという感覚です。

今回、3人に聞いてみたのですが、「性的な接触は無理だけれど、すごく親しい人なら信頼の意味でのハグやハイタッチは歓迎」「相手がシスジェンダーでヘテロセクシャルの(※)男性だと、色々な意味で遠慮して避けているが、信頼できる関係性が築けているなら平気かも」といった内容が返ってきました。

3人との違いがあったことに、私は少しびっくりしています(笑)。私は接触する意味がわからないから嫌なので、今度会ったら3人に意味を教えてもらおうと思いました。

根幹となるような価値観は最初に確認しているのですが、それで全てを知れるわけではなく、一緒にいる中で知ることがたくさんあると感じています。

※シスジェンダーとは、生まれた時に割り当てられた性別と自認する性が一致する人のこと、ヘテロセクシャルとは、異性愛者のこと

——むらかみさんにとって、QPRの3人は特別好きな人なのでしょうか?

私にとっては、「好き」のレベルとして、QPRの3人もほかの好きと感じる人と同じくらいです。私は他者への感情の分類が嫌い・他人・知り合い・好きの4段階くらいしかなくて、好きの中に分類される人に対する温度感はほとんど同じなんです。

私は「この話題はこの人」といった感じで、テーマによって共有する人を分散していて、特定の人に「全部私のことを知ってほしい」みたいな感覚があまりなくて。なので、「好き」の領域の人はみんな好きなんです。

※後編では、むらかみさんが運営する「ARU-アセクシャルスペース-」や、ご家族へのカミングアウトについて伺っています。

【プロフィール】
むらかみ

クワロマンティック・アセクシャル。Aジェンダー。2022年3月から「ARU-アセクシャルスペース-」の運営を開始。アセクシャル4人でQPR(クィア・プラトニック・リレーションシップ)を組んでいる。

漫画家・中村あいさつとして、『ソリチュード-ひとりを愛する人が集まるバー』、『死逢わせサポートセンター』等を制作。

■X:@aroace_mu
 

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むらかみさんが描かれた漫画(ご本人よりご提供)