30分で2時間分の仕事が終わる!?通知だらけの時代に成果を出す“過集中”という脳の使い方
スマホの通知やメールなど、注意力が絶えず奪われる現代社会。集中したくてもできないと悩む人は少なくありません。そんな時代に注目したいのが、「過集中」という没入型の集中法です。『「過集中」メソッド やる気ゼロからでもゾーンに入れる脳の使い方』(主婦と生活社)の著者・新井琴香さんに、一般的な集中との違いや、短時間で高い成果を生み出すための実践的なメソッドについてお話を伺いました。
集中するのが難しい現代
——集中できないというお悩みは多いのでしょうか。
そうですね、今の時代は集中する方が難しくて、意思だけでどうにかできる時代ではなくなっています。昔は今ほど情報源が多くなく、テレビやラジオ、新聞などが中心でした。連絡も電話だけで済みましたし、メールもありませんでした。そういう環境では、気合や根性で集中できてしまう側面もありました。ですが、今はスマホからはひっきりなしに通知が飛んできますし、仕事でパソコンを開いていても通知がくる。注意が散漫しやすい環境なので、普通の集中力では難しいのです。だからこそ「過集中」という没入した集中が大切になってきます。
——「過集中」という言葉は発達障がいの文脈で、どちらかというとネガティブに語られることが多いかと思います。ポジティブなメソッドとして打ち出したのには、どういった意図があるのでしょうか?
過集中の「夢中になれる」という集中力自体は、本来悪いものではないんです。より深く集中ができるということですから。私自身も過集中という力があったからこそ、ピアノを始めとしてさまざまなことに、短時間で質のいい集中力を発揮しながら取り組めてきたと思っています。ただ、義務教育の中で、集中力の授業はないですよね。集中力の扱い方や止め方、切り替え方については誰も教えてくれないんです。だから、暴走させない・再現可能にする・必要なときに使って、不要なときに切るといったことが自分でコントロールできるようになれば、過集中は自分の武器になるものなんです。
——高い集中力を発揮できると、役立つ場面もありますよね。
集中が散漫しやすい時代だからこそ、過集中を自分で扱えるようになることを、過集中メソッド®のゴールだと考えています。私は今いる福祉の現場でも、「この子、集中しすぎちゃって周りが見えなくなっちゃうんです」という声を多く聞いてきました。「それは悪いことじゃないんだよ」と伝えたいという意味も込めて、あえて「過集中」という言葉を使わせていただきました。実際、過集中気味で悩んでいた人がこの本を手に取り、「集中の“切り方”は知らなかったので、それを知れてすごくよかったです」と言ってくださることがありました。過集中の切り替えが難しいことが、過集中が「問題」と言われてしまうこともある背景なのだと思います。
一般的な集中と過集中の違いとは?
——過集中と一般的な集中の違いについて教えていただけますか。
一般的な集中というのは、意識ややる気を使って“集中状態を保つ”ものです。根性や頑張りで維持していくイメージをしていただくと分かりやすいと思います。一方で、過集中とは無意識に近い状態です。人は好きなことやワクワクすることに関して、時間を忘れて没頭してしまいますよね。その状態が過集中の状態であり、最終的には「ゾーン」と呼ばれる、時間感覚すら変わる状態に入っていきます。「何かやらなきゃ」という意思よりも先に、無意識に脳が走り出している状態とも言えます。それが過集中の強みであり、一般的な集中との違いです。
——自分で一般的な集中と過集中の違いを感じられるポイントはありますか?
一般的な集中は、どれだけ長く集中できるかという話になりがちです。過集中は、どれだけ密度高く、その時間を作れたかがポイントになります。集中していたのに意外と成果が出ていないときは、一般的な集中力を使っているときです。他のことが気になりながら、時間だけは過ぎてしまっていて、結局、本来やりたいことに集中できていない。時間の感覚がなくなったり、周囲の雑音も全然気にならなくなったりするのが過集中の特徴です。
——5分や10分でも、深い集中をしていたら過集中になるということでしょうか?
そうですね。日本社会では、「いかに早く終わらせるか」よりも「いかに長くやるか」に焦点が向かいがちです。長く集中することが偉い・長時間集中できない人は集中できていないといった基準があるように感じますが、大事なのはどれだけ密度の濃い時間を過ごせたかということです。
——学校の授業で決められた時間、集中しなければならないことを学んできているので、長時間の集中が大事だと思ってしまうのでしょうか?
それはあると思います。学校において決められた時間座って過ごすことは、ルールを守ることを学ぶなど、環境設計の面では大切なことであるかと思います。ですが「集中」に焦点を当てたとき、それが100%正解かというと、疑問に思う部分が私はあります。同じ成果が出るなら、短時間で集中できた方がいいと思います。
短時間で高い成果を出す
——たとえばある作業の見積り時間を1時間としたとき「1時間集中しなければ」と思いますが、過集中を取り入れることで、もっと短い時間で終わらせられる可能性もあるということでしょうか?
本書の帯に「30分で2時間分の成果が出せる」と書いてあります。これは実際に過集中メソッド®を取り入れた方が、2時間かかっていたことが30分で済むようになったと言ってくださったので掲載させていただきました。私は本も4倍速で読むようにしているので、単純に計算すると、みなさんが1冊読んでいる間に4冊読んでいることになります。
——「聞く読書」というと、ながら作業で取り入れている人が多いイメージです。
私は記憶の定着を最速にしたいので、聞きながら目でも追っています。そうすると、インプットとアウトプットを同時にしている状態になるんです。耳から入ってきたことを、目で追って、記憶に残していくイメージです。本を読んでも、どこにどんなことが書いてあったか、良い内容だけれどどこで読んだか忘れてしまった、といったことはよくあると思うのですが、最近はそういったことも減ってきました。読書だけでなく勉強もですが、耳と目をどちらも使えるものであるなら、同時におこなった方が記憶の定着力は変わってくると思います。
——最初から4倍速はなかなか聞き取るのが難しいようにも感じます。
実際に4倍速で聞いてみると、5分後には2倍速で聞くことは容易になったという声をいただきます。倍速にすると、より集中して聞こうとするので、結果として、脳の処理能力が引き出されやすくなります。倍速再生ができるものでしたら、一度その設定で選べる最大速度で聞いてみてください。最大速度で聞くことで、等倍速に比べて短時間で終わらせることができます。
特に勉強の講義動画であれば、何度か繰り返し聞くことが多いと思いますが、1倍速で何度も聞くよりも、まずはその設定で選べる最大速度で一度聞き、その後はご自身が理解しやすい速度で繰り返し聞く方が効率的です。一度速いスピードに触れておくことで、脳がその処理に慣れていき、それより低い速度がゆっくりに感じられるようになります。
※中編に続きます。
【プロフィール】
新井琴香(あらい・ことか)
1990年生まれ。音楽の街・静岡県浜松市出身。
東京藝大卒のピアニスト、過集中メソッド®創始者、精神保健福祉士として就労系障害福祉事業所の管理運営にも携わる。2児の母。
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