「うちの子、集中できなくて」は誤解。4つの認知特性で見つける我が子の集中スイッチ

「うちの子、集中できなくて」は誤解。4つの認知特性で見つける我が子の集中スイッチ
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「集中するにはやる気が必要」——そう思い込んでいる方は多いのではないでしょうか。しかし、過集中メソッド®が重視するのは、気合や根性ではなく「環境設計」です。『「過集中」メソッド やる気ゼロからでもゾーンに入れる脳の使い方』(主婦と生活社)著者の新井琴香さんに、日常に潜む「夢中になる仕組み」を仕事や学習に活かすコツや、子どもの集中力を引き出すための認知特性の活かし方について伺いました。

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大事なのは環境設計

——新井さんは「ながら作業」をすることもあるのでしょうか。

もちろんします。本書では、集中にはいくつかの種類があると書かせていただきました。本を聞きながら目で追うことは、一つのことにのめり込む「一点集中」に該当します。受験や資格試験の合格を目指すときにも向いている集中の仕方です。

人間は一点にずっと集中していると周りが見えなくなります。たくさんインプットしても、俯瞰できる時間がないと、思考がそこで固まってしまうのです。ながら作業はアイデアを出したり、思考を整理したりするときにします。「覚えなきゃ」「やらなきゃ」というモードでない、ある程度リラックスした状態で、ながら作業をすると、俯瞰的に物事が見えるようになって、点と点が線で繋がっていく感覚があります。

——「集中=やる気を出す」というイメージを持ってしまいがちですが、過集中メソッド®はやる気がなくても機能するのでしょうか。

前提として「集中=やる気」のイメージは強く、それはよくないことだと思います。過集中メソッド®では環境を設計します。その環境さえ整えてしまえば、集中する気がなくても集中できるようになっていく。回路を作ってあげることが大切なんです。たとえば、「このカフェに行くとすごく集中できる」とおっしゃる方がいます。これは環境設計をしているんです。そのカフェに行って集中して作業することを繰り返しているうちに、頭が「ここは集中するところなんだ」と錯覚してくる。

「今日は集中できない」と思ったとしても、「その場に行ったら集中するもの」という仕組みに脳がなっているので、がんばろうとしなくても集中できるんです。心理学でいう「条件付け(パブロフの犬のような仕組み)」の話です。そういった環境設計を日常のいろいろなところに散りばめておくと、どんなところでも集中できるようになる。集中スイッチを環境で作ってあげることが大切なんです。

——会社員が出勤したら気が乗らなくても仕事のスイッチが入るのと近いと思ったのですが、出勤直後にあまり集中できない人は何かが足りないのでしょうか?

たとえば最初の1、2時間が全然集中できないという人がいたとしたら、「集中しなくていい」という環境設計をしてしまっていると思うんです。出勤したらコーヒーを飲んでゆっくりしているなどが習慣化していると、脳がそういうルーティーンだと学習して、「今はまだ集中しなくていい」と思ってしまう。「集中しなくてもいい」といった環境を取り除き、環境を整えてあげれば、朝から集中できるようになって、無駄な時間も減っていくと思います。

誰でも夢中になるほど集中した経験がある

——過集中の先の「ゾーンに入っている」というのは、自分ではわからないものなのでしょうか?

ゾーンに入っている状態は、何も工程を考えなくても、自分が勝手に作業に没頭していて、気づいたら時間も経っている。それ以外のことは何も考えていないという状態です。私の場合、ピアノの本番はそういう感覚で演奏しています。体と思考が切り離されているような感覚です。高いパフォーマンスを発揮しながら、余計な雑念が全て消えた状態で出せるのが「ゾーン」なんです。「夢中になって時間を忘れちゃった」ことはゾーンなので、誰でも経験があると思います。

——ある意味、ゲームに没頭しているのもゾーンではあるのでしょうか?

そうなんです!ゲームをやっているときは、まさに夢中になって自然に操作していますよね。私はテトリスが好きなのですが、「このピースはここに入れて…」と細々と考えるのではなく、無意識に体が動いているような感覚です。「ショート動画を見ていたら気づいたら2時間経過していた」といったこともゾーンです。何も考えなくても、縦スクロールをし、無意識にずっと流しているだけで一点に集中できる。人を夢中にさせる環境設計が整っていますよね。こうやって誰でも「ゾーンに入る」という、何かに夢中になって没頭した経験は持っているはずなので、それを仕事に応用していければいいのです。

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「子どもが集中できない」という悩み

——「子どもが集中できなくて困っている」という親御さんは少なくないと思います。集中を奪うものが多い現代ならではの悩みだとは思うのですが、どんなアドバイスをされていますか?

第一に、子どもが集中できないのは、能力が低いわけではないことをお伝えしたいです。お話を伺うと、自分に合った集中の仕方をしていないことがほとんどです。本書では、4つの認知特性について書いています。

●視覚優位:見て理解するのが得意
●聴覚優位:聞いて覚えるのが得意
●言語優位:言葉や文章で整理するのが得意
●体感覚優位:体を動かしたり、感覚でつかむのが得意

視覚優位の子に耳からの情報で伝えようとしても難しい。子どもと向き合うときには、どういうときにこの子は集中できているかな?夢中になっているかな?ということを観察してほしいんです。そこからどういうときなら集中しやすいかが見えてくると思います。「集中させよう」とするよりは、どんなときに勝手に集中しているかをまず観察してあげることが大切です。そのスイッチを大人が作ってあげる手助けができたら、その子にとっては集中できるようになっていきます。

——タイプによって、向いている方法が異なってくるのですね。

たとえば視覚優位の子は、絵がカラフルなドリルの方が楽しく取り組めるといったことはあると思います。うちの長男は目で楽しめるようなドリルを買ってあげたところ、やりなさいと言っていないのに、2時間で10冊を自分で解いていました。でも次男は聴覚優位と言語優位の傾向があって、聞いたり話したりすることで理解力が深まり、集中して取り組めています。

同じ家庭内でもタイプが違うので、子どもに合った方法をするようにしています。大人が工夫をしてあげることで、子どもの伸び幅が変わってくると思います。1分でも集中できたらそれは「集中できた」ということ。成功体験を重ねることで、集中することへのハードルも下がり、集中へのモチベーションも高まり、自分が集中したいときに、集中できるようになっていくと思います。

※後編に続きます。

『「過集中」メソッド やる気ゼロからでもゾーンに入れる脳の使い方』(主婦と生活社)
『「過集中」メソッド やる気ゼロからでもゾーンに入れる脳の使い方』(主婦と生活社)

【プロフィール】
新井琴香(あらい・ことか)

1990年生まれ。音楽の街・静岡県浜松市出身。
東京藝大卒のピアニスト、過集中メソッド®創始者、精神保健福祉士として就労系障害福祉事業所の管理運営にも携わる。2児の母。

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