痩せて見えるのに脂肪が多い?その『隠れ肥満』、実は心筋梗塞や脳卒中のリスクに!最新研究が警鐘

痩せて見えるのに脂肪が多い?その『隠れ肥満』、実は心筋梗塞や脳卒中のリスクに!最新研究が警鐘
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山口華恵
山口華恵
2025-12-16

見た目はスリムなのに、内臓脂肪や肝臓脂肪が意外と多い…。最近の研究で、こうした“隠れ肥満”が心筋梗塞や脳卒中といった重大な心血管リスクを静かに高めていることが明らかになりった。外見だけでは分からない健康リスクに、改めて注意が必要だ。

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「痩せて見えるのに脂肪が多い」理由

今回の研究を主導したカナダのマクマスター大学のチームによると、「痩せて見えるのに脂肪が多い人」、いわゆる“スキニーファット”とは、体重やBMI(体格指数)が正常範囲内でも、内臓脂肪や肝臓脂肪が過剰に蓄積している状態を指す。皮下脂肪のように目に見えるわけではなく、肝臓や膵臓、腸の周りに隠れているため、本人も周囲も気づきにくいのが特徴だ。内臓脂肪は代謝的に活発で、炎症性物質を分泌して血管にダメージを与え、インスリン抵抗性を高めたり血圧を上昇させたりする。この慢性的な炎症が動脈硬化を引き起こし、最終的には心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めることが知られている。

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内臓脂肪の量が多い人は、動脈硬化の原因となるプラークが蓄積

この研究では、カナダとイギリスの33000人以上の成人を対象に、MRIによる脂肪分布の測定と超音波による動脈健康状態の評価を行った。結果、内臓脂肪の量が多い人は、首の血管である頸動脈の壁が厚くなり、プラーク(動脈硬化のもと)が蓄積していることが確認された。肝臓脂肪も血管の厚みと関係していたが、内臓脂肪ほど強くはなかった。特筆すべきは、こうした傾向はコレステロールや血圧、糖尿病などの従来のリスク要因を考慮しても変わらなかった点だ。見た目がスリムでも、内臓脂肪や肝臓脂肪が多いと、BMIが正常な人でも心血管リスクが高まる可能性があるのだ。

動脈硬化
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医師もBMIだけでは判断できない

長年、医師は肥満や心血管リスクの指標としてBMIを重視してきた。しかし、今回の研究はBMIだけではリスクを見逃す可能性があることを示している。マクマスター大学の研究者であるソニア・アナンド博士は、「見た目だけでは内臓脂肪や肝臓脂肪の量は判断できません。これらの脂肪は危険であり、見た目が細くても動脈にダメージを与える可能性があります」と指摘する。

内臓脂肪と肝臓脂肪を減らすためにできること

幸い、生活習慣の改善によって内臓脂肪や肝臓脂肪は減らせる。専門家が推奨するポイントは以下の通りだ。

  • 食事:地中海食事のように、果物、全粒穀物、オリーブオイル、ナッツ、魚を中心に摂る
  • 運動:有酸素運動と筋トレを組み合わせ、定期的に体を動かす
  • 避けるべきもの:砂糖入り飲料、精製炭水化物、加工肉の摂取を控える
  • 生活習慣:十分な睡眠をとり、ストレスを管理することで脂肪代謝を整える

このように、体重や見た目だけに安心せず、内臓脂肪や肝臓脂肪を減らす生活を心がけることが、長期的な心血管リスクの低減につながる。

食生活
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「隠れ肥満」は静かに心臓や脳を蝕む

研究を率いたラッセル・デ・ソウザ博士は、「今回の結果は、臨床医だけでなく一般の人々にとっても警鐘です。BMIだけで肥満や健康リスクを判断する時代は終わりました。内臓脂肪や肝臓脂肪は見た目に現れず、心臓や脳に影響を与え続けます」と述べている。つまり、一見スリムに見えても安心できない時代。健康診断では体重やBMIだけでなく、必要に応じて血管や脂肪分布を確認することが重要だ。内側から健康を守ることが、長く元気に生きるための鍵と言えるだろう。

出典:
Are you ‘skinny fat’? Hidden fat around organs may be raising your heart risk
‘Skinny fat’ linked to silent artery damage, McMaster study reveals
Being slim is not enough: Hidden ‘skinny fat’ could still quietly raise your risk of heart attack and stroke, study warns

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