糖尿病や高血圧、心疾患、脳卒中…生活習慣病を予防するための【運動】正しい目安は?医師が解説

 糖尿病や高血圧、心疾患、脳卒中…生活習慣病を予防するための【運動】正しい目安は?医師が解説
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生活習慣病を予防するために運動を、とはよく言われていることですが、一体どのぐらいの運動が適しているのでしょうか?医師が解説します。

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生活習慣病とは、不適切な食生活や運動不足、喫煙などの生活習慣によってもたらされる病気の総称で、糖尿病や高血圧、心疾患、脳卒中などが挙げられます。生活習慣病の予防は、健康増進や疾病予防を図る一次予防が大切であり、規則正しい食生活や運動などが重要となってきます。本記事ではその中でも運動による予防について解説していきます。

運動することのメリット

一般的に生活習慣病の発症リスクは、身体活動量が多いほど低くなると言われています。身体活動量を増やしたり、ウォーキングやラジオ体操などの有酸素運動を行うことで、エネルギーが大量に消費され、内臓脂肪が燃焼されやすくなります。各疾患における予防効果として、下記のようなものが挙げられます。

血圧を下げる

ウォーキングなどによる有酸素運動には、血管を拡張し血圧を下げる効果がある、一酸化窒素(NO)の産生を促す作用があります。習慣的に運動することで高血圧の発症予防に繋がります。

脂質異常症の予防

脂質異常症には中性脂肪と、コレステロールの異常に分けられます。コレステロールはさらにLDLコレステロール(悪玉)、HDLコレステロール(善玉)に分類され、LDLコレステロールは動脈硬化の原因になります。有酸素運動には、中性脂肪を減らし、LDLコレステロールを低下させる働きを持つHDLコレステロールを増加させる効果があります。

血糖値の改善

有酸素運動により内臓の脂肪細胞が小さくなることで、肥満の予防や、筋肉や肝臓の糖代謝能力の向上に繋がります。血糖値が安定しやすくなるため糖尿病の予防に効果的です。

有酸素運動により内臓の働きも活発となり、糖や脂質の代謝、血糖値や脂質、血圧の状態の改善が期待できます。また、運動により体力が向上し、身体活動量を確保しやすくなること、筋肉量が増えて基礎代謝が良くなることも生活習慣病予防に有効とされています。

生活習慣病予防のための運動量の目安は年齢によって異なる

身体活動とは、日常生活を過ごすための「生活活動」と、体力向上を目指す「運動」の2種類に分けられます。生活習慣病を予防するための運動量の目安は年齢によって異なっており、それぞれについてみていきましょう。

18~64歳

18~64歳では、「強度が3メッツ以上の身体活動を毎日60分」、「強度が3メッツ以上の運動を毎週60分」行なうことが理想とされています。

メッツとは運動強度の指数であり、安静時を1として何倍のエネルギーを消費するかを示しています。具体的には、歩行(3.0メッツ)やそうじ(3.3メッツ)などの身体活動を毎日60分以上行い、さらにウォーキング(4.3メッツ)やラジオ体操(4.0メッツ)などの運動を週60分以上行うことが、生活習慣病の発症予防に効果的な身体活動と運動とされています。1日の歩数としては8,000~10,000歩が目標となります。

65歳以上の人

高齢者では運動によってけがをしてしまうリスクもあるため、独自の目標値が定められています。65歳以上の基準では、「強度を問わず、身体活動を毎日40分」、「運動習慣を持つようにする(30分以上、週2日)」とされています。ご自身の体力に合わせて、無理しない程度で運動を行っていくとよいでしょう。

まとめ

生活習慣病の予防には運動が非常に効果的です。ただし、継続し続けることが重要ですので、強度にこだわらず自分のペースで習慣化していくようにしましょう。

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AUTHOR

Dr.しろくま

Dr.しろくま

循環器内科医。医学部卒業後、関東の総合病院で初期研修を行い、医師3年目から高度医療機関で循環器内科医として勤務。臨床業務だけでなく、国内外での学会発表や多数の英語論文執筆など、幅広く医療活動を行っている。



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