健康診断で「脂質異常症」との結果が…自覚はないけど病気なの?治療は必要?医師がわかりやすく解説

 健康診断で「脂質異常症」との結果が…自覚はないけど病気なの?治療は必要?医師がわかりやすく解説
Adobe Stock

健康診断の結果に『脂質異常症』と記載されていたけど…一体どんな病気?治療は必要?医師がわかりやすく解説します!

広告

脂質は3大栄養素の一つであり、体にとって必要な成分です。しかし摂取しすぎると動脈硬化の原因となり、様々な病気を引き起こす原因となります。本記事では脂質異常症という病気とその予防法・治療法について解説していきます。

脂質異常症とは

脂質異常症とは血中の脂質の値が基準値から外れた状態をいいます。脂質異常症は「血液がどろどろの状態」と表現されることもあり、動脈硬化を引き起こします。動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中といった、生命に危険が及ぶ可能性のある病気のリスクになることがあり、適切な治療が必要です。

脂質異常症の診断基準

脂質には様々なものがありますが、その中でも中性脂肪と、善玉コレステロール(HDLコレステロール)、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の3つが特に重要です。一般的に脂質の数値が高い方が悪いと思われがちですが、HDLコレステロールは血管壁に溜まった脂質を回収する優れた働きをするため「善玉」と呼ばれます。

・中性脂肪150mg/dL以上
・LDLコレステロール140mg/dL以上
・HDLコレステロール40mg/dL未満

上述のいずれかに該当した場合、脂質異常症の診断となります。脂質異常症は自覚症状がないため定期健診などでの自己管理が重要といえます。

コレステロール
「中性脂肪150mg/dL以上」「LDLコレステロール140mg/dL以上」「HDLコレステロール40mg/dL未満」いずれかに該当した場合、脂質異常症の診断に。photo by Adobe Stock

脂質異常症の原因と改善法

脂質異常症の原因の多くが生活習慣の乱れにあります。現代人は食生活の欧米化や運動不足になっていることが多く、脂質異常症の患者さんの総数は年々増加傾向となっています。

原因

中性脂肪高値の要因としては高エネルギー食が挙げられます。米、パン、麺類などの炭水化物や、お菓子やジュース、お酒などが主な原因です。中性脂肪が高くなるとHDLコレステロール値を下げることがあり、食事療法では中性脂肪を下げることが優先されます。また青魚に含まれる不飽和脂肪酸には中性脂肪を下げる効果があるのでおすすめです。

LDLコレステロール高値の要因としては飽和脂肪酸の多い食品(肉類、生クリーム、バターなど)、コレステロールを多く含む食品(卵、レバーなど)が挙げられます。特に飽和脂肪酸はLDLコレステロール値を上昇しやすくなるため注意が必要です。逆に植物性タンパク質(大豆製品など)や食物繊維(キノコ、根菜、海藻など)にはコレステロール値を下げる作用があるので、積極的に取り入れるようにしましょう。

この他にも運動不足、喫煙、肥満なども高脂血症の原因となるので、規則正しい生活を送るように心がけましょう。

家族性高コレステロール血症

生活習慣の乱れが原因となることの多い高脂血症ですが、少数ながら遺伝的要因よって発症することがあります。近親者に高脂血症で、心筋梗塞などを発症された方がいらっしゃる場合は、動脈硬化の進行が速い場合があるので、早めの病院受診をおすすめします。

治療法

一般的な治療は食生活、運動習慣といった生活習慣を整えることから始まります。3~6ヶ月の間、生活習慣の改善を行っても脂質の値が目標値に至らなかった場合は、薬物療法が検討されることになります。また数値がそれほど高くない場合でも、心筋梗塞などのリスクが高いと判断された場合は薬物療法が開始されることもあります。

薬物療法が始まったとしても、生活習慣を整えることが一番の治療になるので、規則正しい生活を送るようにしましょう。

まとめ

脂質異常症は自覚症状がないため放置されがちですが、動脈硬化を促進させ、心筋梗塞や脳卒中など生命にかかわる病気の原因となります。脂質異常症の多くは、生活習慣を整えることで改善が見込めますので、規則正しい生活を心掛けるようにしましょう。

広告

AUTHOR

Dr.しろくま

Dr.しろくま

循環器内科医。医学部卒業後、関東の総合病院で初期研修を行い、医師3年目から高度医療機関で循環器内科医として勤務。臨床業務だけでなく、国内外での学会発表や多数の英語論文執筆など、幅広く医療活動を行っている。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

コレステロール