痛風を防ぐために今日から出来ることは?医師が解説する「痛風」原因と予防法

 痛風を防ぐために今日から出来ることは?医師が解説する「痛風」原因と予防法
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-01-09

知っているようで意外と知らない「痛風」について、医師がわかりやすく解説します。

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痛風とはどのような病気か

痛風は、尿酸成分が関節や腎臓のなかで結晶となってとどまる結果、関節に激しい痛みを起こす、あるいは腎機能障害をもたらす恐ろしい病気です。

痛風は、体内の新陳代謝によってできる尿酸の量が過剰になることに伴って発症することが知られています。

尿酸の体内量はほぼ一定に保たれており、一日に作り出された尿酸量とほぼ同量が毎日排泄されていますが、何らかの原因で体内の尿酸量が増加すると高尿酸血症に繋がります。

尿酸値の正常値は成人男性が血中に4.0~6.5mg/dl、成人女性では3.0~5.0mg/dlと規定されており、7.0mg/dlを超えると高尿酸血症と診断され、血液検査などの数値的には8.5mg/dlを超える状態になると、いつ痛風発作が起きてもおかしくないと想像されます。

痛風
痛風患者数は全国で約60〜70万人いると言われている。
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現在、痛風患者数は全国で約60万~70万人いると言われており、痛風の前段階である高尿酸血症を罹患している痛風予備軍の人は約600万~650万人存在すると推定されています。

痛風患者が近年増加している背景としては、食生活を含めて生活習慣の西洋欧米化によるものと考えられています。

現代社会を反映するように「食べ過ぎ」「ストレスが多く酒を頻繁に飲む」などといった生活習慣の乱れが大いに関係していますし、日々の多忙な生活において習慣的に運動を継続できないといった要素も少なからず影響しています。

尿酸は、そもそもプリン体と呼ばれる代謝物質が分解されることでできる成分であり、ビールに限らずエビやカニなどの甲殻類を始めとして、プリン体を多く含む食べ物やお酒を取り過ぎると、体内のプリン体は徐々に貯留していくことになります。

プリン体が体内で分解されると、最終産物である尿酸が作成されるとともに、血液中の尿酸値が上昇して、必然的に高尿酸血症が出現することになります。

痛風を防ぐために出来ること

痛風を予防するためには、まず生活習慣を改善することが最も重要であり、特に食べ過ぎには十分に注意しましょう。

規則正しく1日3食をとり、腹八分目を守って、カロリーを多く含む食品や料理は控えめにする、あるいは油を多く使用した料理や菓子類、そして好きなものばかりを続けて食べないように注意しましょう。

出来る限り摂取カロリー数を抑えて肥満を解消するだけで簡単に尿酸値は下がることが期待されますし、肉や魚の内臓や干物にはプリン体が多いので、一気に食べ過ぎないように認識しておきましょう。

また、ビールを含めてアルコール自体に尿酸値を上げる作用がありますので、日常生活において飲酒量は適度に抑えるようにすると同時に、水分を普段から2リットル以上飲むように心がけましょう。

水やお茶を1日2リットル以上飲めば、たくさんの尿が自然と作られて尿酸物質を腎臓から排泄してくれることを補助することができます。

水
水やお茶を1日2リットル以上飲めば、たくさんの尿が自然と作られて尿酸物質を腎臓から排泄してくれることを補助することができる。
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また、一般的に短距離走や筋肉トレーニングなど無酸素運動においては尿酸値を上昇させる原因になり得ますので、継続的に無理なく実践できる有酸素運動を行うことで肥満を解消すれば痛風にも罹患しにくいと考えられます。

万が一、痛風に罹患した場合における治療では、まずは高尿酸血症の改善が重要ですし、痛風発作の痛みに対しては、鎮痛薬を使って速やかに痛みを緩和させて、痛風発作が治まった段階で血中の尿酸値を低下させるために尿酸降下薬の服用を開始することも検討されます。

まとめ

これまで、痛風とはどのような病気か、痛風を防ぐ為に出来ることなどを中心に解説してきました。

昨今の経済成長に伴って食生活が豊かになり、エネルギ-の過剰摂取や運動不足などによって痛風の発症が多く認められるようになってきました。

尿酸値が高い状態が続くと多種多様な症状が現れますし、痛風が原因となって発症すると言われている尿路結石症や腎障害といった怖い合併症を引き起こすことも懸念されます。

食生活の面からみると、毎日2回以上の間食をしている人、毎日3合以上のアルコ-ルを飲んでいる人、肥満体形を呈している人などに特に痛風の発症率が高いと指摘されています。

痛風を事前に予防するために、まずは肥満にならないように注意して、日常的に食べ過ぎやお酒の飲み過ぎには気をつけて適度に運動習慣を継続するように心掛けましょう。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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