【日本人の4人に1人】冬場は特に気をつけたい高血圧、家庭でできる血圧管理の仕方って?薬剤師が解説
日本では4人に1人が高血圧といわれています。高血圧は自覚症状がないまま進行し、心筋梗塞や脳卒中など命にかかわる疾患の引き金になります。とくに寒さによって血管が収縮しやすい冬場には注意が必要です。この記事では、高血圧の予防法、家庭でできる血圧管理のしかたなどを解説します。
血圧とは全身に血液を送る圧力のこと
血圧とは心臓が血液を循環させるための力のことで、血圧を計ったときの数値は、流れる血液が動脈の壁に与える圧力を表しています。血圧の数値は、上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)に分けられます。
上の血圧とは、心臓が収縮して血液が全身に押し出された瞬間の値。下の血圧とは心臓が膨らんで全身から戻る血液を受け入れた瞬間の値です。
血圧は1日の中で体の状態や体調によって変化します。例えば、活動的な行動をしているときは血圧が高くなり、リラックスしている状態のときは血圧が低くなります。
高血圧の基準値とは?
高血圧とは、血圧が高い数値のまま下がらない状態のこと。日本高血圧学会の高血圧診断基準では、収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上の場合を高血圧と診断しています。
また、上の血圧が130以上、下の血圧が80以上の場合を「高値血圧」といい、高血圧の一歩手前で注意が必要な段階です。
分類|収縮期血圧(上の血圧)|拡張期血圧(下の血圧)/単位:mmHg
正常血圧:120未満かつ80未満
正常高値血圧:120-129かつ 80未満
高値血圧:130-139かつ/または80-89
I度高血圧:140-159かつ/または 90-99
II度高血圧:160-179かつ/または 100-109
III度高血圧:180以上 かつ/または 110以上
高血圧は、自覚症状がないだけに、とても危険!
高血圧は“サイレントキラー(静かな殺し屋)”とも言われ、これといった自覚症状がなく進行するため、気づかずに放置されたり、「少しくらい血圧が高くても大丈夫」などと放っておいたりする人もいます。
しかし、高血圧によって傷ついた血管にコレステロールなどが付着し動脈硬化が進むと、血管の内腔が狭くなり血流が悪くなったり、血栓(血の塊)ができたりして、突然生命をおびやかす合併症を発症することもあります。
例えば、血栓が脳の血管に詰まると脳梗塞や脳出血、心臓の血管に詰まると心筋梗塞や狭心症、腎臓に影響が及ぶと腎機能の低下や腎不全などに至る場合もあります。また、大動脈がこぶのように膨らみ、破裂の危険を伴う大動脈瘤などといった病気につながる恐れもあります。
高血圧による合併症は、命に関わることも多く、たとえ一命を取りとめたとしても、麻痺や脳の機能障害、認知症などにつながり、日常生活に支障をきたすケースが少なくありません。
高血圧になりやすいタイプ
高血圧は歳をとるにつれて起こりやすくなりますが、その程度や進行具合は生活習慣に大きく左右されます。塩分や脂肪の摂り過ぎ、偏った食生活、アルコールの飲み過ぎ、ストレスが多い、睡眠不足、運動不足、喫煙などは、高血圧を悪化させる代表的な要因です。
また、高血圧の体質は遺伝することもあり、両親が高血圧の場合はとくに注意が必要です。
【高血圧の環境因子】
・ 塩分や脂肪の摂り過ぎ
・ 偏った食生活
・ アルコールの飲み過ぎ
・ ストレスが多い
・ 睡眠不足
・ 運動不足
・ 喫煙 など
【高血圧の遺伝因子】
・ 親や親戚に高血圧の人が多い
・ 脳や神経、心臓、腎臓、ホルモンの異常など
血圧を下げるための生活の工夫
血圧を毎日家庭で測ることが大切
血圧は1日の中でも、朝、夕方以降、就寝中など、生活シーンで変動しています。高血圧を改善する際には、微妙な血圧の変化をチェックする必要があるため、家庭での血圧測定が欠かせません。そのため、毎日血圧を測り、数値を記録しておくことをおすすめします。血圧から、さまざまな体のサインを読み取れるので、医師の診察を受ける際にも役立ちます。
仮面高血圧と白衣高血圧
血圧は心理状態によっても上下します。かかりつけ医などへの安心感からか、診察時の血圧計測値が家庭で計るより、低くなるケースがあります。これを「仮面高血圧」といいます。逆に、診察時の計測値のほうが高くなる場合を「白衣高血圧」といいます。
こうしたケースでは、本当の自分の血圧状態に即した診断が難しくなることもあるため、家庭で血圧を測定し、記録しておくことが大事といえるのです。
なお、血圧を測る際は、なるべく毎日同じ時間に同じ状況で計るようにしましょう。できれば朝起きて1時間以内のトイレを済ませた後、また就寝前にも計るとより正確な血圧管理ができます。降圧剤を服用している場合は、薬を飲む前に計測してください。
どんな血圧計がおすすめ?
血圧計には、上腕で計るタイプ、手首で計るタイプ、指で計るタイプ、最近ではスマートウォッチに計測機能がついたものなどさまざまな種類があります。この中で最も安定して計測できるのは“上腕で計るタイプ”です。
血圧は心臓より低い位置で計ると、数値が低くなる場合があるため、日本高血圧学会でも正確な測定のために上腕で計るタイプを推奨しています。手首や指で計るタイプの場合は、心臓の高さに手首や指の高さをキープして計ると良いでしょう。
減塩を中心に食生活を気をつける
高血圧を予防・改善するには、塩分を控えることが重要です。人間が1日に必要な塩分は3グラムで十分といわれています。しかし、日本人の平均食塩摂取量は、1日約12グラム。それを3グラムにまで減らすことはまず不可能なことなので、6~7グラムを目標にしましょう。
塩分の少ない減塩食塩や減塩しょうゆなどの調味料も活用するのも良い方法です。また、血圧を下げる「特定保健用食品(トクホ)」の活用もおすすめです。
無理なく長く続けられる運動を取り入れる
高血圧を改善するには、肥満の解消も大事です。肥満は高血圧だけでなく、ほかの生活習慣病の原因にもなります。運動は、ウォーキングや軽いストレッチなどがおすすめです。無理をせず、体に負担がかからない程度で定期的に続けましょう。
なお、肥満の人が1kg減量すると、血圧は約2mmHg下がるといわれています。5kg減量すれば、血圧は10mmHg下がることになり、正常値に近づくはずです。
まとめ
高血圧は自覚症状がほとんどなく、気づかずに進行し、生命をおびやかす病気の引き金になることもあります。高血圧の予防・改善には、減塩、運動、ストレスの解消、アルコールを控えるなど生活習慣を改善することが大事です。また、自宅で毎日血圧を計り、記録して管理することをおすすめします。
AUTHOR
小笠原まさひろ
東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。
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