【寝室の光で心筋梗塞リスク42％増】女性や若年層は特に影響があることを研究結果が示唆

テレビや廊下の照明など光源は様々あるが、寝室に光が入ることは睡眠を妨げるだけでなく心臓にも影響を及ぼす可能性がある。

寝室の明るさと心筋梗塞リスクの関係

この研究では、イギリスの88,905人の参加者が手首に光を測定するデバイスを1週間装着し、個々が実際に浴びた光の量を合計で約1,300万時間分記録した。その後、9.5年間にわたって健康記録の追跡が行われ、参加者は寝室に入る光の量に応じていくつかのグループに分けられた。参加者の平均年齢は62歳で、約57％が女性だった。結果、最も暗い環境で眠っていたグループと比べ、中程度の明るさで眠っていた人は心筋梗塞のリスクが20％高く、さらに明るい環境では27％高かった。最も明るい寝室では47％の増加が見られた。年齢、性別、民族、季節、社会経済的状況、運動習慣、喫煙、飲酒、食生活の質を考慮した後も、最も明るい環境でのリスクは42％高いままだった。

「ベッドでスマートフォンを操作したり、テレビや寝室の照明をつけたまま寝たりする日常的な習慣でも、有害なレベルの光に曝される可能性がある。」「極端なケースの話ではなく、室内の微弱な光でも体内リズムに影響を与える可能性がある」とフリンダーズ健康医療研究所睡眠健康部門のアンドリュー・フィリップス准教授は指摘した。

夜間の光が乱す概日リズムと心筋梗塞リスク

人体は概日リズム（血圧や心拍数、ストレスホルモンの分泌などを調整する体内時計）に従って働く。光はこのリズムを24時間周期に合わせる主要な信号となる。夜間に光が目に入ると、これらのリズムが乱れる。通常、睡眠中は血圧が低下するが、光に曝されることで高い状態が続いたり、朝に分泌がピークとなるホルモンが誤ったタイミングで分泌されることもある。交感神経と副交感神経のバランスも崩れる。概日リズムの乱れの短期的な影響としては、心拍数が上がり、炎症が進み、血液が凝固しやすくなる。長期的には、これらの変化が動脈硬化の進行に関わり、心筋梗塞のリスクを高める。動脈内のプラークが破裂したり、狭くなった血管で血栓ができると、心筋への酸素供給が不足し、心筋梗塞が発生する。

夜間に強い光に曝される夜間勤務者に関する研究では、長年にわたって心臓病の発症率が高いことが明らかになっている。今回の研究は、このリスクが夜間勤務者以外の人々にも及ぶことを示し、寝室の灯りやデバイスからの微弱な光であっても影響がある可能性を示した。また、本研究では、概日リズムの乱れが不整脈リスクを高める可能性も示された。脳にある体内時計の指令が心臓の細胞時計と矛盾すると不整脈が発生し、脳卒中リスクの増加や心臓のポンプ効率の低下につながる。

夜間光の影響が強いのは女性と若者

夜間の光による心臓への影響は女性の方が男性より強く、特に冠状動脈疾患や心不全でその傾向が顕著だった。過去の研究でも、女性は男性より明るい光に敏感で、同じ光量でも概日リズムの反応が強く現れることが示されている。また、若年層では心不全や心房細動のリスク増加が高齢者よりも大きく見られた。この傾向は、高齢者の概日リズムが一般的に鈍感で、夜間の光曝露に対する体の反応が弱いためと考えられる。

夜間の光を避けて心臓を守る

本研究は観察研究であり、関連性は示せても因果関係を証明することはできない。しかし心血管疾患は依然として世界の主要な死因であり、本研究は夜間の光を避けることが新たな予防手段になり得ることを示唆している。遺伝的リスクとは異なり、光曝露は遮光カーテンの使用、デバイスの電源オフ、寝室を暗く保つなどによって調整可能である。夜間勤務者や避けられない光曝露にさらされる人にとっては、食事、運動、定期的な健康診断などによって他の心血管リスク因子を管理することが特に重要になる。本研究は睡眠時間だけでなく、睡眠環境の暗さも重要であることを示している。

研究チームは夜間の光を食生活の乱れや運動不足、喫煙などと同じように健康リスクとして扱うべきだと述べ、夜間の光曝露を減らす取り組みを推奨している。また、家庭や医療機関、都市空間での望ましい照明環境に関するさらなる研究を呼びかけている。

出典

https://news.flinders.edu.au/blog/2025/10/28/shining-a-light-on-heart-disease-risk/

https://studyfinds.org/sleeping-with-lights-raises-heart-attack-risk/