病気ではないのにしんどい人が急増中。見逃されやすいテクノストレス症候群とは?医師が解説

病気ではないのにしんどい人が急増中。見逃されやすいテクノストレス症候群とは?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2025-12-22

健康診断ではいつも問題ないのに、謎な疲労感を覚え、やる気も起きない・・・。それは『テクノストレス症候群』かもしれません。医師が解説します。

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はじめに:健康診断は“オールA”。なのに体が重い

「血液検査も正常。内科でも異常なしと言われた。でも、とにかく疲れる」

こういう相談、ここ数年で本当に増えました。

  • 寝ても疲れが取れない。
  • 朝、布団から起き上がれない。
  • 頭がぼんやりして集中できない。

病気というより、体の“エネルギー残量”が常にゼロに近い——そんな状態。

実はこれ、医学の検査ではなかなか姿を見せてくれない 『テクノストレス症候群』 が原因の一つとして注目されています。

 1. テクノストレス症候群とは?

デジタル機器に心と身体がついていかない時に起きる不調

テクノストレス症候群は、もともとアメリカの心理学者が提唱した概念で、簡単に言えば 「ITやデジタルに振り回されて疲れ果てる状態」 のことです。

現代版にアレンジすると、こんな症状が当てはまります。

・常にスマホの画面を見ている

メール・SNS・チャットの返信を追い続けている

マルチタスクの量が増えて処理しきれない

オンライン会議や画面越しのコミュニケーションが苦手

気づくと深夜までスマホ・PCに触っている

休んでいるはずなのに“休めていない”

外から見れば「ただスマホ触ってるだけじゃない?」なのですが、脳はフルマラソン並みに酷使されていることが珍しくありません。

2. なぜ“検査では異常なし”なのか

原因は、臓器の病気ではなく“脳の疲弊”

テクノストレス症候群の厄介なところは、体は疲れているのに、検査データは健康そのものというギャップです。

不調の正体は、筋肉や内臓よりも先に脳の自律神経のバランスが崩れていることにあります。

脳
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・通知が鳴るたび交感神経が刺激される

・画面の光で睡眠リズムが乱れる

・情報処理が追いつかず、脳が“過負荷状態”になる

つまり、車でいうと“エンジンは熱々なのに、外装はきれい”みたいなもの。医療検査は「外装」を見るので、異常が見つからないのです。

 3. よくある症状

「なんとなくずっと疲れてる」がキーワード

テクノストレス症候群の人に多いのは、こんな症状です。

  • 休んでも疲れが残る
  • 頭がぼーっとする
  • やる気が出ない
  • 眠りが浅い、朝の目覚めが悪い
  • 肩こり・首こり
  • 胃が張る、食欲が落ちる
  • “漠然とした不安”が続く
  • すぐイライラしてしまう
  • オフの日でも気持ちが休まらない

ひとつひとつは大したことなさそうですが、これが全部重なると、日常生活をじわじわ圧迫します。

4. 実際によくあるケース

会社員のBさん(30代)の場合

Bさんは、年に一度の健康診断ではいつも問題なし。

それなのに、ここ半年ほど「とにかく疲れる」「帰宅後に何もする気が起きない」と感じていました。話を聞くと、原因らしきポイントがいくつも。

・1日200件以上のチャット通知
・オンライン会議が1日4〜5回
・昼休みもスマホを触り続ける
・夜はSNSを“なんとなく”1〜2時間見てしまう

テクノストレス
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試しに、以下の3つを実行してもらったところ、1か月後には「疲れがかなり軽くなった」と話していました。

  1. 仕事とプライベートの通知を分ける
  2. 22時以降はスマホをリビングに置く
  3. 昼休みに10分だけ外を歩く

脳を“休ませる時間”を作ることが、こんなにも効果があるのかと本人が一番驚いていたほどです。

5. 今日からできる予防&改善法

難しいことより、シンプルな習慣が効きます

① 通知の“断捨離”
全部オンはやめる。「本当に必要な相手だけオン」に絞ると、脳の負担が大幅に減ります。

② スマホ・PCの“触らない時間”を作る
たとえば
・食事中は触らない
・寝る1時間前はオフライン
など、メリハリをつけるのがポイント。

③ オンライン会議の後は“目と脳のクールダウン”
1分だけ目を閉じる、深呼吸する、外の空気を吸う。これだけで脳のオーバーヒートが和らぎます。

④ 情報を「見る」より「捨てる」
SNSやニュースは“流し見”が多いほど疲れるもの。「あえて見ない日」をつくると、思った以上に心が軽くなります。

⑤ それでも不調が続く場合は医療機関にも相談を
慢性的な疲労・不眠・不安が強く生活に支障が出る場合は、心療内科の診察が役立つこともあります。治療というより、“生活リズムの立て直し”をサポートしてくれます。

まとめ

・検査では異常なしなのに、疲れが抜けない人は増えている

・背景には“情報過多”と“デジタル疲労”がある

・テクノストレス症候群は脳の自律神経が消耗した状態

・通知の整理・デジタル断食・生活リズムの調整が効果的

生活に支障が出る場合は医療機関への相談も選択肢に入れましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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