「TikTok脳」に要注意!【忍耐力の低下と瞬間的な刺激を求める傾向】子どもの脳への影響とは?
短い動画が次々と表示されるショート動画やリールは、若者の間で爆発的な人気を誇っている。しかし、こうした短いコンテンツがもたらす影響を不安視する声も。特に懸念されているのは、子どもやティーンエイジャーの注意力や脳機能への影響だ。アメリカでは「TikTok脳」という言葉が登場し、こうしたアプリがどのように脳を変えてしまうか注目が集まっている。
ドーパミンの影響—なぜやめられないのか?
TikTokを見ていると、短時間で次々と変わる面白い動画に引き込まれる。この現象の背景には、脳内の報酬系が強く働いていることがわかっている。ショート動画を次々と見ることで、脳内で「ドーパミン」と呼ばれる神経伝達物質が分泌される。ドーパミンは「快感」を感じさせる物質で、報酬が期待されるときに放出される。米シンシナティ・チルドレンズ・ホスピタル・メディカル・センターのジョン・ハットン医師は、TikTokを「ドーパミンマシーン」と表現し、動画を見て笑ったり、楽しんだりするたびに脳がドーパミンの「報酬」を受け取り、それが次のスクロールを促すと述べている。
子どもの注意力が特に危険にさらされる理由
若い世代が特に影響を受けやすい理由として、脳の発達過程が挙げられる。注意力を持続させるためには「指向性注意」と呼ばれる機能が必要であり、これは脳の「前頭前野」が担当している。「前頭前野」は、意思決定や衝動抑制を司る部分だが、完全に発達するのは25歳頃と言われている。つまり、子どもやティーンエイジャーの脳は、まだ注意力を持続させるのが難しい状態である。
TikTokのような短いコンテンツは、この「指向性注意」を必要としない。内容が次々と変わるため、子どもたちの脳は長時間の集中を必要とするタスクに適応しづらくなる。クリーブランド・クリニック・チルドレンズのマイケル・マノス医師によれば、「脳が絶え間ない変化に慣れてしまうと、デジタルではない環境、例えば読書などに集中することが難しくなる」と述べている。さらに、「ATTENTION SPAN(アテンション・スパン) デジタル時代の「集中力」の科学」の著者であるグロリア・マーク氏は、若者たちが「速い場面転換に慣れ、むしろそれを好む文化的な洗脳を受けている」と指摘している。即時の報酬を提供するコンテンツに慣れすぎてしまうことで、忍耐力が低下し、瞬間的な刺激を求める傾向が強まっているのだ。
気をつけるべき6つのサイン
ソーシャルメディアの過度な利用によって、子どもにどのようなサインが現れるのかを見極めることは重要だ。以下のサインに注意しよう。以下のようなサインが見られる場合、ソーシャルメディアの利用を見直し、バランスの取れた生活を心がけることが必要だ。
- 集中力の低下…学校の授業や読書、宿題などに集中する時間が短くなり、すぐに気が散ってしまう。
- イライラしやすい…スクリーンタイムが制限されると、過剰に怒ったり、ストレスを感じたりするようになる。
- 睡眠の質の低下…寝る前にスマートフォンを手放せず、睡眠が浅くなり、翌朝に疲れを感じることが増える。
- リアルな対話の減少…家族や友達との会話が少なくなり、常にスマートフォンをチェックするようになる。
- 即時の報酬を求める行動…忍耐力が低下し、結果をすぐに得ようとする傾向が強くなる。例えば、長期的な目標よりも、短期的な報酬に飛びつくことが多くなる。
- スクリーンタイムの自己管理ができない…制限された時間以上にデバイスを使用し、気づいたら数時間が経っていることが頻繁に起こる。
ソーシャルメディア企業の対策は?
若年層の利用を制限しようとする企業の動きも一部で見られる。TikTokは、13歳から15歳のユーザーに対して、午後9時以降にプッシュ通知を送らないようにしている。また、定期的なスクロールの中断を促す動画を配信している。一方、YouTubeは60秒以内の短い動画を投稿できる「YouTubeショート」という機能を提供しているが、Googleは18歳未満のユーザーに対し、オートプレイ機能をオフにするなどの対策を講じている。
出典:
HEALTH SCREENING The 6 signs your child has ‘TikTok brain’ – and how many hours is safe to scroll
AUTHOR
山口華恵
翻訳者・ライター。大学卒業後、製薬会社やPR代理店勤務を経て10年間海外(ベルギー・ドイツ・アメリカ)で暮らす。現在は翻訳(仏英日)、ライフスタイルや海外セレブリティに関する記事を執筆するなど、フリーランスとして活動。趣味はヨガとインテリア。
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