どう伝えたら受け入れてもらえる?部下や子供のモチベーションをあげる【SCARFモデル】とは
あなたは部下や子供のモチベーションをあげたい時にどのような働きかけをしていますか?叱責は良くないと分かっていても、代わりのどのような声かけをすればいいかと悩んでいませんか?部下や子供に大切なことを伝えたい際に、相手にどうやったら受け入れてもらえるのか、今回はそのヒントとなるように、どのようなことをポイントに相手と接すればいいのか、どんなことが行動を起こす原動力となるのかご紹介します。
David Rockは、脳が反応することを5つのカテゴリーに整理し、SCARFモデルとして2008年に発表しました。脳の反応は、脅威と報酬に分けられると言います。私たちは脅威を感じていると安心して過ごせないため、本来の力を発揮できず、前向きに物事に取り組んだり、新しいことにチャレンジしたりすることができません。部下や子供と接する時に、SCARFモデルを意識して、脅威を最小限に抑え、報酬を最大化していくことで、彼らのモチベーションを上げ、実際の行動につながっていくと考えられます。それでは、5つのカテゴリーを紹介していきます。
status:地位
地位や年収、社会的な評価だけではなく、他人と比べて自分は劣っているか、優れているかといったステータスに関することです。地位は報酬になるだけではなく、脅威にもなります。例えば、部下を他の職員と比較ばかりしていると、部下は何かを言われて傷つかないように警戒してしまいます。部下や子供と接するときは、脅威を感じさせないように他者との比較は避けて、報酬となるように相手を認めるような関わりを心がけましょう。
certainty:確実性
結果を予測できるかどうか、先が見通せるか、安定しているかということです。私たちは、分からないこと、未知なことに対して不安を感じます。例えば、自分はいつ解雇されるのだろうと心配している状況では前向きに業務に取り組むことはできません。部下や子供に対して、「このままだとクビにするよ」など、脅すような声かけは脅威となります。また、自分が取り組んでいることの結果や見通しが見えないことも脅威となる可能性があります。どうなるか分からないことなら仕方がないですが、見通しを伝える、全体像を伝えるなど、ゴールが明確になることでモチベーションへとつながるでしょう。
Autonomy:自律性
自分で選択する余地があるか、自分の意見が反映されるかなど、コントロールに関することです。同じストレス状況でも、自分が少しでもコントロール感を持っていれば、ストレスが軽減します。しかし、自分は何も決められない、変えることができないと感じると、無力感を抱き、やる気がなくなってしまいます。もちろん、トップダウンで指示を出さなければいけない時、相手に注意をしないといけない時があるでしょう。そんな時でも、相手の意見を尋ねる、複数の選択肢を提示して相手に選んでもうなど、少しのコントロール感を与えるだけでもモチベーションは変化をします。
Relatedness:関係性
他者を敵や味方など、どう捉えているか、集団に属していると感じているかなど、他者との関係性です。私たちは相手が自分に友好的ではないと捉えると警戒します。また、集団に所属していないと感じると孤独を感じます。例えば、他の家族は仲が良いのに自分だけ孤立していると感じている場合などです。また、職種や雇用形態が違う人も疎外感を感じやすいでしょう。友好的な態度でどんな立場の人でも受け入れる姿勢を見せることで、関係性についての報酬が高まり、モチベーションにもつながるでしょう。
Fairness:公平性
公平に扱われているかどうかです。私たちは公平に扱われないと不満を溜めやすく、時に自分の利益を犠牲にしてまで公平性を求めようとします。部下同士、兄弟同士の関係性にまで影響が及ぶ可能性もあります。公平に扱うように心がけましょう。
5つのカテゴリーについて気をつけることで、相手のモチベーションが向上し、あなたとの対人関係も良好になることでしょう。他者の報酬を上げることで、あなたにも良いことが返ってくる可能性もあります。相手に成長して欲しいという純粋な想いを叶えるために、今回の記事を参考にしてください。
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
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