叱られた、拒否されたetc.人間関係で躓きやすい人の特徴とは?心理カウンセラーが伝えたい対処法
自己肯定感が低い人は、職場の人間関係、夫婦または恋人との関係に悩みを持っているケースも少なくありません。人間関係で陥りやすいNGパターンと対処法について、『「自己肯定感低めの人」のための本』の著者であり心理カウンセラーの山根洋士さんにお話を伺いました。
叱られたときは、注意されている「理由」を吟味する
――自己肯定感の低い人は、上司や先輩に叱られると極度に落ち込んでしまうタイプが多いように感じます。本来、そこまで気にする必要がないことでも落ち込んでしまう人は、どうしたらいいのでしょうか。
山根先生:職場での人間関係については、新型コロナウイルス感染症が流行したことによるテレワーク、時間差出勤導入などとは関係なく、かなり前から多くの方が持っているお悩みのひとつです。職場で起こりやすい例としては、「叱られたことにより、激しく落ち込む」「プレゼンなど、自分が発言する場で極度に緊張してしまう」この二つがあげられます。
まず、叱られると落ち込んでしまい「自分はダメだ……」と、矛先を自分の存在に向けてしまうというのが、自己肯定感低めの人に多い特徴です。これは自己肯定感が低ければ低いほど陥りやすいパターンであり、自分が叱られている内容と、自分の人間性を切り離して考えることができていないことが原因です。
万が一、上司や先輩があなたの人間性を否定するような叱りつけをしてきた場合、それはもうパワハラやモラハラの問題になってきますので、メンタルケアとは別に会社としてその上司に対処しなくてはいけないケースもあります。
本人ができる対処は、スルースキルを身につけること。叱られたときは、「相手がなにを注意しているのか?」といったん冷静になって、きちんと叱られている理由を吟味してみてください。そうすることで、自分が本当に改善するべき点もみつかるはずです。
――読者の中には、部下や後輩を叱らなくてはいけない立場の方もいるかと思います。そのようなケースでは、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか。
叱る側になったときは、伝え方の工夫が必要です。もちろん、人間性を否定するような言葉はかけてはいけません。叱る相手に伝える内容は、起こしてしまった行動や成果物に対する意見など、事実を冷静に伝えたうえで声をかけるようにしてみてください。
これは、子育てをしている親にも同じことがいえます。私自身、子どもを叱るときは「あなたが悪いんじゃなくて、あなたがした〇〇という行為がいけないことなんだよ」という風に、起こしてしまった事柄などに焦点を当てるように心がけています。
被害妄想をしてしまう=相手への愛がない
――自己肯定感が低いことで、極端な被害妄想をしてしまうタイプの方もいますよね。こういった思考になってしまうのは、なにが問題なのでしょうか。
山根先生:これも職場でよくある問題ですね。プレゼンでの発言など、自分がなにかを発信したり意見したりする立場に置かれた人が陥りやすいのが、勝手に相手の反応や気持ちを想像して被害妄想ループに入ってしまうパターンです。
このタイプの人は、他人からどう思われるかを過剰に気にしていることが特徴です。「緊張しなくて良いんだよ」「リラックスして!」とフォローをされることで、余計に緊張が増していつも失敗してしまう……そんな人もいますね。
緊張してしまう理由はシンプルで、「知らないうちに、相手を悪者にしているから」。プレゼンでミスをしたら叱られるかも……あの人にこんなことを言ったら反論されるかも……。これらは全て、相手の気持ちを勝手に想像して決めつけていますよね。まだ何も起こっていないのに、勝手に相手を悪者にしている。この思考が、被害妄想の原因となります。
仕事の大切な場面でやれることは、ベストを尽くすこと。これだけです。緊張しているとかいないとかではなく、やるべきことを、ただやる。もしミスをしても、「〇〇さんならフォローしてくれるはずだから、思いっきりやってみよう!」というように、こちらから愛をもって「相手はいい人」として捉えてみる。そうすることで、周りの人から感じるプレッシャーからも解放され、失敗も怖くなくなってきます。
気遣いの本質を理解すれば楽になる
――職場や家庭、恋愛でもそうですが、日本はとくに「気遣いができる=いい人である」といった風潮が強いように感じます。気遣いをしすぎて疲れてしまう方が陥りやすい思考のパターンなどがあれば教えてください。
山根先生:自己肯定感の低い人が陥る典型的なパターンが、「自分を犠牲にしやすい」というものです。とくに恋愛で相手に尽くすタイプの人は、同時に自分の自己肯定感の低さを感じていることも多く、その劣等感を補うようにして相手に尽くしてしまいます。
ポイントとなるのは、本当に相手が求めていることなのか?という点。
「帰るまでに〇〇しておいて」「〇〇が必要だから買ってきて」これは正真正銘、相手が言葉にして求めていることであり、尽くしているという行為には該当しにくいでしょう。
しかし、この行為の延長で、相手が求めてもいないのに(言葉に出していないのに)、先回りして相手が喜ぶはずだと思う行動をとったり、相手のために自分が我慢したりしてしまう。こうなってくると、相手からの「ありがとう」がないことでストレスが溜まり、トラブルまで発展していく。実際に、そういった経験がある方もいるのではないでしょうか。
――お返しはいらないけど、ありがとうの言葉くらい言ってくれてもいいのに……
山根先生:これは、よくありそうなパターンですね。
これもやはり、国の教育が関係しているように思います。「人とぶつかることはよくない」「全員と仲良くしましょう」というように、日本では輪を尊重しすぎるところが悪い形で露呈していることがあります。同時に、自己主張すること、嫌いな人がいることを悪とするような風潮も感じますね。
もちろん、日本人の気づきや気遣いは世界に誇れる素晴らしいものですし、美学と捉えられている面もあります。しかし、気遣いをするときになにより重要なのは、「見返りを求めない」こと。当たり前のようですが、意外と気遣いをした側の人というのは、見返りを期待してしまっているパターンが多いのです。これは人間関係が近ければ近いほど、求めてしまう傾向にあります。
気遣いとは、根本は自発的にしている行為をさします。相手を想って自分から好きでやっている訳ですから、それ自体はいいことです。ですが、周りにも同じことを求めはじめてしまうと、「見返り」の概念が発生して、話は一変してしまいます。
やりたければ、勝手に自分でやる。気遣いをしたくない人は、本来は無理にやる必要はないという考え方です。気遣いの本質を理解すると、する側もされる側も両者の理解が深まりトラブルが起こることも少なくなるでしょう。
●お話を伺ったのは…山根洋士さん
これまで、8,000人以上の悩みを解決してきた心理カウンセラー。自身も両親の離婚、就職の失敗など人生の挫折を経験し、激務で身体を壊して入院生活を送るなか「なんのために生きるのか」を模索した結果、心の風邪薬のようなカウンセリングを提供したいという想いから、カウンセラーとなる。著書に『「自己肯定感低めの人」のための本』(アスコム)があるほか、YouTubeやtwitterでも発信。
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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